Side Steps' Today

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前回ライブMCにおける「八甲田山雪中行軍」の話について

2004年12月14日 | 文芸批評
前回のライブ(10/2)のMC中、突然『八甲田山死の彷徨』(新田次郎)について、田村さんから話をふられたのですが、これに関して本番中には正確な書名が出てこなかったので、ここで改めてその内容を紹介します。その時に「八甲田山死の彷徨で遭難した隊とは逆回りのコースを取って生還した隊の話」と紹介しましたが、そのことを記した本は『八甲田山から還ってきた男ー雪中行軍隊長・福島大尉の生涯』(高木勉・著/文藝春秋)であります。そもそも『八甲田山死の彷徨』(新田次郎)自体が史実にかなり近いもののフィクションな内容であるのに比較して、こちらはノンフィクション、この際のポイントとなるのは福島大尉率いる弘前第31聯隊と、遭難した青森第5聯隊が逆回りですれ違った際、青森第5聯隊はすでに遭難状態にあったわけですが、ここで弘前第31聯隊がこれを1)見なかった、2)見たものの、救出は困難であり、結果として見捨てる結果となった、のどちらが真実なのかという点であります。そもそも八甲田山で雪中行軍するのは、対ロシア戦を想定してのこと(事件は1902年)ですが、冬山への対策・準備に余念のなかった福島大尉率いる弘前第31聯隊と、これをライバル視して慌てて計画を策定した青森第5聯隊という違いはあったようですが、このような経緯もあり、結果として遭難せずに成功した弘前第31聯隊もこの快挙を祝うこともできず、資料も埋もれてしまう格好になったようであります。修学旅行で夏の八甲田山に行ったことがあり、この際、行軍遭難記念館のようなところで衝撃的な写真(それは凍傷で切断された足がズラリと並んでいるもの)を見た記憶があるのですが、数年前に再訪した時は見当たりませんでした。また機会があれば行ってみたいものであります。