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『「慰安婦」問題を子どもにどう教えるか』(平井美津子、高文研)の紹介

2017年12月06日 | 丸ちゃんの私的時間
今春、小社から『教育勅語と道徳教育』というブックレットを出してもらった平井美津子さんの新刊『「慰安婦」問題を子どもにどう教えるか』(高文研)を読んだ。



平井さんと知り合って7年ぐらい経つが、彼女の名前はそれ以前から、大阪の女性教師にすごい人がいるというような感じで知っていて、ちょうどその頃が「慰安婦」問題をテーマに生徒たちと格闘していた時期だったと、この本を読んでわかった。

本のタイトルは「どう教えるか」だが、特別ノウハウ的なことは書かれていない。「慰安婦」問題との出会いから始まり、ちょっと力が入った最初の授業、子どもたちを引率しての沖縄旅行、ナヌムの家で元被害者たちとの交流後の新たな決意、そして地元地方議員や右翼、在特会からの攻撃に直面することなどを通して、保護者にも支えられながら、「慰安婦」問題が、今を生きる子どもたちと私たち自身に突きつけられた問題だとして学び合っていく。

平井さんの授業に結末までのシナリオは無い。子どもたち自身がそれぞれに結末を考える。特に中学生は性のことを考える一番大切な時期だけに、子どもたちの思いを大切にしたい、それが授業の出発点だという。

2015年末の日韓合意や翌16年の沖縄元海兵隊員による沖縄女性暴行殺人事件などを教材に、子どもたちの関心を広げる授業も実施、その子どもたちの感想を読むと真の「和解」について考え始めた中学生たちの姿が見えてくる。

しかし今、学校現場には「忖度」の嵐が吹き荒れている。自民党は「学校教育における政治的中立性についての実態調査」を呼びかけ、教師たちに戦前さながらの密告を奨励している。教育委員会や学校管理職は、授業や学校運営に攻撃がかけられないように、教師が作成するプリントをチェック、本人の了承無しに私物を持ち出すというような人権侵害も起きている。上からの指示は末端に行けば行くほど「忖度」という形で強制力が強まっている。

また歴史修正主義の立場で作られた教科書が検定を合格、いくつもの自治体で採用され、政権が望む人間作りを目指す教育が行われている。

そんな今だからこそ歴史研究者と歴史教育者が手を携えて現実と切り結んだ授業をどうすすめていくのかが問われており、その鍵となるのが「慰安婦」問題であり、怯まずに堂々と教え、歴史の傍観者にならないことだと言う。

そして最後に、卒業する子どもたちに贈る言葉は「抗う」。実に平井さんらしい言葉だと思った。


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