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土佐いく子の教育つれづれ~「ずっと孤独」な自分をののしられた

2023年06月12日 | 土佐いく子の教育つれづれ

 長野県中野市でまたショックな事件が発生した。男女4人が殺害され、「自分がいつも一人でいることをののしられた」と動機を語っているという。

 「自分は、事件は起こしたりはしないけど、その青年の心境はわかる」と学生たちは言う。「自分も一人、孤独感、何のために生きているのか、これから何のために生きていけばいいのかわかりません。ふとした時に死にたいと思ってしまいます」

 3年間コロナ禍で高校生活を送った学生が大学に入学してきて、キャンパスが賑わっている。しかし、その賑わいの中で、多くの学生がSOSを発していて、それに耳を傾ける日々を送っている。

■自分をわかってほしい
 学生の間で『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』という本が読まれているとか、「目立ちたくない」「浮くのが怖い」から「大学通信に実名を載せないで」という人がとても増えたなあとは思う。

 しかし、実は、学生たちは自分のことを知ってほしい、わかってほしいと一層強く願っている。授業の感想カードに「ちょっと聴いて」コーナーを設けたらなんとそこにびっしり自分の悩みや不安、願いが書いてあるではないか。先生にだけ知ってほしいというものもあれば、仮名なら大学通信に掲載してくれてもいい、実名で掲載可能も少ないがある。

 「私には、強いアレルギーがあり、大学で症状が出ると呼吸困難になったり、最悪意識障害になったりします。大学では、クラスがなくて伝えることもできず不安な大学生活です」と書いてきた学生に、講義の時、みんなに知ってもらったらどうかと話したら「この授業が一番素の自分が出せるし、通信とか読んでくれているので、わかってくれそうに思うので話してみます」と。翌週、彼は大きな講義室で、マイクでしんどくなって倒れたりしたら助けてほしいと訴えてくれたのだ。

 その日の感想カードに「話し終わったら拍手が出て、みんなあたたかいなあとほっとしました。大学生活の安心材料ができました。あれから、『あっ佐藤君やんな!覚えたよ』と何人も声をかけてくれ、『ありがとう』だけでは片づけられないくらい感謝です」と。

 このカミングアウトに励まされたとADHDの学生も、自分の状況を訴えた。すると、また「夕べは、言おうかどうしようかとさすがに迷ったけど、私もASDとADHDで極度のうつ状態にもなるので、みんなに知ってもらいたいと実名を公表してよいと文章を書いてきたのだ。

 来週は「多汗症」という病気があって、そんな病気で困っている人がいることを知ってほしいと公表すると言う。

 「大学は、クラスがなくて、遠くからこの大学に来てさびしかったけど、自分のことを次々とカミングアウトしてくれ、この講義の教室は過ごしやすくて暖かいなあ」「初めて信じられる大人に出会った」「この授業では、いくらでも素直に自分のことが書けて読んでくれる。わかってくれる。先生に返事の手紙をもらって、涙が出ました。今の自分でいいんだと思えて、楽になりました」と学生たちは書いてくれている。

 今年も大学に来て良かったと思う。大した仕事ができているわけではないが、安心して自己表現ができて、それを受け止め共感してほしい、してくれると思えることがこんなにも学生の心に明かりを灯すことができるんだと改めて実感している今だ。

 冒頭に書いた事件の青年は、大学時代にいじめに遭い、大学を中退したとも書いてある。元法政大学学長の田中優子さんは「この報道を聞いて、大学のありようを考えなくちゃ」と語っていた。きっと大学に来るまでにいじめに遭い、孤独感を抱いてやってきた大学で、一人ぼっちでいることに冷たい目線を向けられたのだろうと思うが、その胸の内を語れる場や空気が大学にあったらと願う。

 昨年の授業でも「こんないじめを受けてきたが、相談相手がいない、逃げ場がない、先生も親も信用できない、毎日死ぬことを考えていた」と訴え、これを公表したことで、今、顔を上げ生きようとしている。

(とさ・いくこ和歌山大学講師)

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1 コメント

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Unknown (永井)
2023-09-20 20:29:47
いくこ先生こんばんは。
神戸市の認定こどもに勤めている保育士です。講演会依頼をしたいのですが、ブログからの連絡で失礼いたします。
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