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土佐いく子の教育つれづれ~初めての対面授業、人けのない大学のキャンパス

2020年07月29日 | 土佐いく子の教育つれづれ

■涙が出るほど嬉しい
 対面授業を希望していた大学の講義が、7月1日やっと始まった。久々の大学のキャンパスは学生の姿がちらほらで寂しい限りだ。教職論の授業は例年だと200人の学生が階段状の教室にぎっしりなのに、なんと抽選で30人にしたという。

 聞くと今日初めて大学の授業を受けるという学生が大半だ。「一回生ですか。やっと大学に合格したのに、今まで大学に来れなくて大変だったね。そうか、今日大学で初めての対面授業だね」と声をかけると涙ぐんでいた。私まで泣けてきた。

 学生たちがこの間のことを書いてくれた。

「いつになったら元の生活に戻れるのか。いつになったら大学に行けるのか。そればかり考えていました。早く大学に行ったり遊んだりしたいです。どこか出かけるとなっても頭の片隅には、コロナにかかってしまうかもしれないと思うと、心の底から楽しむことができません。心の底から楽しめる日、早く来てと思います。


 コロナの影響で、アルバイトもできず、大学をやめなければならない友人の問題はとても深刻です。国や大学が支援金を送ったりと対策していますが、それでもまだやめなければならない人たちがたくさんいる。この現状なんとかしてと言いたい」


「コロナ禍の中で大学が始まって三ヵ月たったけど、知り合いはガイダンスで話した数人しかおらず、その人も一回しか顔を会わせてない。早速人間関係で不安がある。オンライン新歓もたまには入っているが、やはり顔を会わせることが少なく相手のことをよく知らないし、大学の施設の使い方すら全然知らない。大学生になったという実感があまりしない。だんだん学校に行くのは、めんどうくさいと思い始めていたが、やっぱりオンライン授業ではない、実際に講義室で授業を受けると違うし、大事やなあと思った。大学に来る理由を作るために、先生この授業だけでも対面で続けてください」


 大学に入っても友達も作れない、大学の施設の使い方さえ知らない。そりゃあ大学に入学した実感が沸かないだろう。やっぱり大変な事態だったんだ。学生たちはどんな思いでこの3ヵ月を過ごしていたのだろうかと思うと心が痛い。やっと大学に来て、対面授業を仲間と受けられ、涙が出るほど嬉しかったと言う。大学生ですらこういう状態だ。小学生や中学生たちの一年生はどんな思いだったろうか。


 一斉休校って本当に意味があったのか。いや、休校したことの傷は深いと思っている。その休校の決断を首相一人がしたとなると、ますます不信と不安と憤りすら感じる。


 この間、オンライン授業が始まり出会った学生は、一番に「レポート提出とかいっぱい言われてもう疲れました。オンラインではテンション下がってやる気が出ません」と言う。学生の声を聞いてほしい。

■オンライン授業では…
「約三ヵ月のオンライン授業を通して思ったことは、やはり対面でないと本来の授業は始まらないということです。大学側が資料や動画をアップロードし、学生が閲覧するという形式が続いたため、遅刻という概念も忘れてしまい日常生活で怠けるようになってしまいました。『後で見ればいいやろ』と他の事を優先したり、気づけば課題に追われ、睡眠時間がみるみる減っていく。そんな状況でした。


 決まった時間に決まった場所に身体を運び、直接人と会うことの大切さが身にしみた三ヵ月間でした。
 こちらに引っ越してきて二週間もたたないうちに実家に帰省してしまったため、下宿先の家賃がただただ引き落とされていることが悩みです。また、自動車学校に通い始めたので、週一で大学に来るための移動費も重なるのも辛いです」


「親は仕事、妹も学校。私一人が社会との関わりを断たれたようで、孤独や不安を感じてきました。今日、対面で授業を受けることができて、すごく嬉しいです」


「オンライン授業でやる気が出なくて、悶々としていた時、先生が対面でしてくださって、とてもやる気が満ちてきて、本当に嬉しかった」


 これが今の大学の姿だ。「相手がウイルスとはいえ、このような措置で良かったのだろうか。問い直しも求められる。


(とさ・いくこ和歌山大学講師)

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次の新刊は『「分隊長殿、チンドウィン河が見えます」 下級兵士たちのインパール戦』です。

2020年07月09日 | 新刊案内

次の新刊は戦後75周年企画としてあの有名なインパール作戦をテーマにしたフィクション本となりました。フィクションといっても体験者の話や現地調査などをベースに描かれたもので、ほぼ真実に近い内容となっています。

著者の柳田文男(やなぎたふみお)さんはもちろん戦後生まれですが、インパール作戦に投入された京都十五師団のあった福知山市(大江山)生まれです。子ども時代に出会った教師がインパール作戦体験者であったり、インパール作戦の犠牲者の方のお墓掃除をした経験などがこの本の執筆原点となりました。

また1995年にはその現地調査のためビルマを訪れます。軍事政権下、様々な制約を受けながらも、敗残兵となった日本軍の死屍累々たる有様=「白骨街道」や英印軍との激戦地を遠望する高地などに足を踏み入れた経験もこの本の執筆に生かされました。

インパール戦をテーマにした小説や体験記は過去に何点も出版されましたが、時代が移る中、新しい本は出ていません。「責任なき戦場」と言われた日本軍指導部の極めて不確かで無責任な作戦に巻き込まれ翻弄されていく農民出身の最下級兵士たちの姿が胸を打ちます。

・・・・・・・・・・・

あの敗戦から75年。時代は昭和、平成、令和と移り、戦争を知る世代は総人口の2割以下になった。戦禍の記憶と教訓をどう受け継ぎ、向き合っていけばいいのか。「史上最悪の作戦」と呼ばれるインパール作戦の犠牲者たちの遺骨が今なお眠る彼の地に立ち、遠く故郷を愛おしみ亡くなっていった下級兵士たちの慟哭を描く……。

石川康宏氏推薦!(神戸女学院大学教授)
縁のあったお墓と少年時代の恩師には不思議な繋がりがあった。インパール作戦。著者は47歳で軍政下のビルマからインドへ向かう。長年の研究にもとづき書き上げられた物語から、不戦への著者の熱い思いが伝わってくる。

【著者】 柳田 文男(やなぎた ふみお)

【体裁】 四六判 ソフトカバー 214頁

【定価】 本体1500円+税

【出来日】2020年7月31日

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