河村顕治研究室

健康寿命を延伸するリハビリテーション先端科学研究に取り組む研究室

後骨間神経麻痺

2010-11-09 | 医学・医療
私が初めて後骨間神経麻痺の患者さんを診たのは医学部を卒業してすぐ整形外科の研修医として「手の外科」の研修中であった。
当時、岡大整形外科では新入医局員は2ヶ月ずつ外傷、脊椎外科、小児整形、リハ、などと各専門グループを回って研修する仕組みだった。
「手の外科」は現在ではマスカット整形という変わった名前のクリニックを開業されている四宮先生が担当で、外来で様々な患者さんを診察し、筋電図検査も行い、手術を行うという一連の診療の様子を研修医としてついて回って見学していた。

その中で一番印象に残ったのが後骨間神経麻痺の患者さんだった。
手関節の背屈はできるが手指の伸展ができない。
感覚障害はない。

いろいろと診察した四宮先生は見学している私に向かってさあこれは何でしょうと問いかけた。
情けないことに当時の私には全く診断がつかなかった。
四宮先生は後骨間神経のFrohseのアーケードでの絞扼が最も疑わしいとして、針筋電図検査を行い確定診断を下した。
後骨間神経?、Frohseのアーケード? そんな名前聞いたこともない。

http://www.joa.or.jp/jp/public/sick/condition/radial_nerve_palsy.html

当時、不勉強で何も分からなかったが、解剖を熟知して論理的に診断を下す先輩の様子にとても感銘を受けた。


それから何年も経ったが、先日私の外来にやはり手関節背屈はできるが手指伸展ができないという患者さんが訪れた。
知覚障害はない。
仕事はタクシーの運転手だが、麻痺したのは左手なので何とか運転はできるとのことだった。
手指の伸展は全くできないわけでなく最終伸展が障害されているレベルなので、とりあえずは保存的に経過を観察することにして様子を見させて頂いている。


病気の診断は知識が全てである。
一度経験したものは二度目には診断は容易である。
滅多に診ることのない麻痺であるが、その患者さんを診て瞬時に研修医時代の頃を思い出した。
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