河村顕治研究室

健康寿命を延伸するリハビリテーション先端科学研究に取り組む研究室

筋骨格モデル解析表示ソフト(無料)

2008-06-08 | 私と歩行分析
リハ学会で労災リハ工学センターの元田先生からついに筋骨格モデル解析表示ソフトをホームページからダウンロードできるようにしたとの情報を得た。

http://www.lwc-eirec.go.jp/seika/msmodel/msmodelsoft.html

このソフトは学生や歩行分析に興味を持つ人が利用するにはうってつけのソフトなので是非多くの人に活用して欲しい。

実は臨床歩行分析研究会ではこれまでに行ったセミナーなどで膨大なデータを蓄積しており、今回の運営委員会でもそれを一般に広く公表できないかという議論があった。
ところがデータ収集時に公開のための同意を得ていないので不可能という結論になってしまった。

私は以前から歩行分析の成果が一般の人でも気軽に活用できるようにならないかと考えていたのだが、労災リハ工学センターの試みがその先駆けとなりそうに思う。


参考のために、歩行分析研究会ニューズレターに寄稿した随想を転載する。

「グーグル時代の歩行分析」
吉備国際大学保健科学部理学療法学科
河村顕治

 私が歩行分析に初めて触れたのは1987年4月に新しくできた吉備高原医療リハビリテーションセンターに赴任した時です。そこにはアニマ社製の床反力計測システムが導入されており、床反力計の上に坂道を設置できるようになっていました。坂道歩行の研究を行うために1989年に第2回歩行分析セミナーに参加させていただきました。その後歩行分析がきっかけで1994年にアメリカ東海岸で留学生活を送ることになりました。この時経験したのはMotion Analysis社製の3次元動作解析システムでした。当時アメリカでは情報スーパーハイウェー構想がクリントン政権の最重要政策の一つとして打ち出され、ゴア副大統領が20世紀中に全米の全ての学校、図書館、病院を新しいネットワークに組み込むと表明していました。私が所属した研究室はバイオメカニクスの研究室でしたが、別名コンピューターラボとも呼ばれているほど最先端の技術を導入していました。そこでモザイク(Mosaic)というWebブラウザーの初期モデルを初めて見たのです。
 それから13年、2007年3月に私は勤務校において、文科省の補助金を得てリアルタイム3次元動作解析システムMAC3Dを導入しました。最新のシステムは高性能になり、リアルタイム解析も可能になり動作解析が新たなステージに入ったことを感じさせられます。一方、インターネットの方は初期の頃こそがらくた情報ばかりと言われていたのが、今では生活に欠かせないツールになりました。その結果、ヤフーやグーグルのような新しいIT企業が製造業のトヨタと並ぶ時代になったのです。つい先日グーグルの追い上げに危機感を抱いたマイクロソフトによる総額446億ドル(約4兆7千億円)でのヤフーの買収提案がありました。グーグルは巨額の利益をあげていますが、利用者にサービスを提供するのに使用料を取っているわけではありません。検索結果の表示画面や提携したウェブサイト上に広告を載せることで、収益の大部分をあげています。その結果、高品質で有用なサービスが無料で提供されているわけです。またグーグルは「衆人の知恵の集合」を目指していることがその特徴とされています。
 このような時代に、3次元動作解析システムはどうでしょうか。高性能になりましたが、価格は依然として高価です。未だにVICONやMAC3Dを購入できるのは大学で新規に学部を設置するとか、新しくリハセンターを作る時くらいです。昔も今も動作解析をできるかどうかは3次元動作解析システムがあるところに所属しているかどうかといういわば運次第という状況です。これが、せめて努力して科研費の基盤研究Bクラスを当てたら購入できる位までは供給側の知恵と工夫で何とかならないものかと思います。
 動作解析のハードは仕方がないとして、グーグルが提供しているサービスのように、解析結果を幅広く無料で提供することはできないものでしょうか。私がイメージしているのはGoogle Earthで、衛星画像や航空写真を撮影するハードがなくても今や無料で簡単に入手できる時代です。動作解析のデータやそれを基にした種々のアニメーション動画などが豊富に無料で入手できて利用できる時代は来ないのでしょうか。動作解析の成果は、研究のみに役立つのではなく、教育やエンターテイメントなど幅広く利用価値があり、もっと広まれば、これまで想像もしていなかったような利用方法が出てくることでしょう。Web 2.0時代にふさわしい動作解析の到来が待ち遠しい今日この頃です。





コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 第45回日本リハ医学会学術集会 | トップ | 第54回岡大整形外科開講記念会 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

私と歩行分析」カテゴリの最新記事