ーGONZO~ならず者ジャーナリスト、ハンター・S・トンプソンのすべて~ーGONZO: THE LIFE AND WORK OF DR. HUNTER S. THOMPSON
2008年 アメリカ
監督=アレックス・ギブニー ナレーター=ジョニー・デップ
【解説】
独自の取材スタイル「ゴンゾー・ジャーナリズム」を生み出した伝説のジャーナリスト、ハンター・S・トンプソンの生涯を追ったドキュメンタリー。激動の1960年代から1970年代に活躍し、今も多くの人々から支持される彼の実像を、『エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?』のアレックス・ギブニー監督が解き明かす。『ラスベガスをやっつけろ』でハンターをモデルにしたラウルを演じたジョニー・デップがナレーションを担当。インタビューに登場する人々や、ハンター自身の言葉から浮かび上がる破天荒な生きざまに圧倒される。
【あらすじ】
激動の1960年代から1970年代に活躍し、その過激な言動が今もさまざまな表現で語り継がれるアメリカの伝説的ジャーナリスト、ハンター・S・トンプソン。取材対象の中に入り込みその本質を伝える独自の手法で、従来のジャーナリズムを根底から覆した彼は時代の寵児(ちょうじ)となった。ハンター自身の言葉や遺族、友人らへのインタビュー、貴重な記録映像などから彼の実像に迫る。(シネマトゥデイ)
【感想】
ハンター・S・トンプソンといっても、日本ではあまり知られていません。
テリー・ギリアム監督の1998年制作の映画「ラスベガスをやっつけろ」の原作者で、自分がモデルとなっているラウル・デューク役をジョニー・デップが演じました。
ジョニーは役作りのためにトンプソンとしばらく一緒に行動し、映画が終わってからも親交がありました。
トンプソンは、1937年にケンタッキー州で生まれ、ヘルス・エンジェルスを取材した記事で有名になります。
その後、自分の住む町のシェリフに立候補して破れたり、大統領候補のマクガバン候補を応援して、世論を動かすほどの影響力がありました。
しかし、マクガバンはニクソンに破れてしまいます。
そののち、ジミー・カーターの演説を聴いて感銘を受け、彼についての記事を書くが、そのころから、勢いは失われていき、酒に溺れる生活となりました。
そして、2005年に拳銃で自殺しています。
この作品は、トンプソンを知る人たちの証言と遺された映像によってトンプソンの生き様を探るドキュメンタリーです。
彼は、アメリカニュージャーナリズムの旗手と呼ばれ、1960年代から870年代にかけて、客観性よりも自らその取材対象に身を投じて本質を伝えることを重視する取材スタイルで、GONZO(ならず者)ジャーナリズムと呼ばれました。
私は「ラスベガスをやっつけろ」で、ジョニーが演じたラウルに驚いたのですが、トンプソン自身はいつも時代の本質を伝えたかったということが、このドキュメンタリーでわかったような気がしました。
彼の暴こうとした「アメリカンドリーム」やニクソン批判、私もその時代を生きて来たので、少しはわかる感じがしました。
時代の寵児ともてはやされ、自分を見失っていったのでしょう。
しだいに文章が書けなくなり、酒に溺れ、妻と別れ、2度目の妻を娶ったけれど、悲しい結末となりました。
遺言で企画した巨大なモニュメント。
あんなことは、彼しか考えつかないでしょうね。
この作品を彩る時代を表現する音楽の数々、素敵でした。