マダムようの映画日記

毎日せっせと映画を見ているので、日記形式で記録していきたいと思います。ネタバレありです。コメントは事前承認が必要です。

オレンジと太陽

2013-04-17 09:07:12 | 映画ーDVD

ーオレンジと太陽ーORANGES AND SUNSHINE

2010年 イギリス

ジム・ローチ監督 エミリー・ワトソン(マーガレット・ハンフリーズ)デヴィッド・ウェナム(レン)ヒューゴ・ウィーヴィング(ジャック)

 

【解説】

マーガレット・ハンフリーズ原作の「からのゆりかご大英帝国の迷い子たち」を基に映画化した、児童移民の実態に迫る感動作。イギリスがひそかに19世紀から1970年まで行っていた、強制児童移民という恐るべき真実を明らかにする。今回初のメガホンを取るのは、イギリスを代表する巨匠ケン・ローチの息子ジム・ローチ。物語の鍵を握る社会福祉士を、『奇跡の海』のエミリー・ワトソンが演じている。社会的大問題を独自の視点で描く展開に心打たれる。

 

【あらすじ】

1986年、マーガレット(エミリー・ワトソン)は、イギリスのノッティンガムでソーシャルワーカーとして働いていた。結婚して子どもにも恵まれた彼女は、ある女性から衝撃的な告白を聞く。当時児童養護施設にいた4歳の彼女は、何と船でノッティンガムからオーストラリアまで送られたというのだ。彼女はそのことをきっかけに、本件に関して調査を進めていくと、ばく大な数の子どもがいることを知り……(シネマトゥデイ)

 

【感想】

「子供たちだけで移民するなんて、そんなことあるわけがないでしょう」

ソーシャルワーカーのマーガレット(エミリー・ワトソン)は、直談判に来た、自分がイギリス人の孤児でオーストラリアに強制的に移民させられて親を捜しているという女性に対して、驚いてとっさに返した言葉です。

 

でも、それから間もなしに開かれた養子の会で、ある女性が「自分の生き別れた弟がオーストラリアで生きているらしい」という話を聞き、調べてみる気になった。

そうしたら本当に、孤児のオーストラリア移民政策は、国家間の事業として、長い間秘密裡に行われていたのだった。

しかも期間は1617年から1970年まで続き、その数は15万人にも達していた。

 

この作品は、マーガレット・ハンフリーズ原作の「からのゆりかご大英帝国の迷い子たち」から作られた実話だそうです。

 

孤児という声を上げられない弱いものに対して、なんという仕打ちでしょう。

事業は、教会などの慈善団体が行っていたようですが、誰も、孤児の立場から考える人はなかったようです。

その事業の中身は、慈善という名の児童虐待。

 

イギリスは「ゆりかごから墓場まで」というスローガンの元に、シングルマザーにも手厚い福祉があるのかと思っていたら、母親から子供を取り上げ、オーストラリアへ安い労働力として送り込んでいたなんて!

 

親から引き離され、重労働や虐待に耐えて大人になった孤児たちの究極の願いは、「お母さん」探し。

それは、自分がどこから来た何者なのかというアイデンティティ探しでもありました。

マーガレットの元には、母親の所在を探して欲しいという依頼が殺到しました。

まさに「瞼の母」なんですね。

 

マーガレットは「児童移民トラスト」を立ち上げ、その活動は今も続いているそうです。

 

たんたんと描かれるこの作品。

事実の重みを感じました。

マーガレットは、事実を追求しながらも、責任を国家や慈善団体に押し付けるのではなく、イギリス人の責任として捉えようとしていて、人間の器の大きさを感じました。

孤児たちの心に寄り添い、まさしく母性を体現しているような人でした。

マーガレットの仕事の意義をよく理解し、家庭を守り支えてくれた夫の存在も大きいと思いました。

 

悲しいテーマだけど、悲しすぎず、激しすぎず、でも孤児たちの悲しみとマーガレットの苦悩を的確に描き切っていました。

オススメです。

 


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