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●科学技術ニュース●新潟⼤学など、東日本大震災で日本海溝底に生じた⾼さ26mの断層崖を世界で初めて発見

2024-01-09 09:34:26 |    宇宙・地球
 新潟⼤学⾃然科学系(理学部)の植⽥勇⼈准教授、東京海洋⼤学の北⾥洋客員教授、⻄オーストラリア⼤学、海洋研究開発機構、デンマーク超深海研究センターの研究者などで構成される国際研究グループは、2011 年東北地⽅太平洋沖地震(東⽇本⼤震災)の震源域にある宮城県沖の⽔深約7,500m の⽇本海溝において有⼈潜⽔艇による海底調査を実施した。

 その結果、同地震で隆起した海底に⾼さ 26m(7~8 階建てのビルに相当)の断層崖を発⾒した。

 現地で計測した地形を詳しく調べた結果、地震が発⽣した際に⽇本海溝底では、断層に沿って海底が⽔平に 80~120m 動いたことにより先端部がおよそ 60m 持ち上げられ、その⼀部が崩壊して断層崖になった過程が⽰唆された。

【今回の研究成果のポイント】

①東⽇本⼤震災によって⽇本海溝の底に⽣じた隆起地形と断層崖を、有⼈潜⽔艇によって世界で初めて現地で観察・記録した。
②観察された断層崖は、地震をおこした断層のズレが⽇本海溝の海底⾯にまで到達したと推定するこれまでの観測結果を⽀持している。
③現地で計測した地形の解析から、地震発⽣時に震源域の少なくとも⼀部では、これまでの⾒積もりより⼤きい 80~120m もの海底の動きがあったと推定される。

 ⽇本は排他的経済⽔域内に 5つの海溝(千島海溝、⽇本海溝、伊⾖―⼩笠原海溝、南海トラフ、琉球海溝)があり、将来にわたってこれらの海溝域で巨⼤地震や⼤規模な津波が発⽣することが予測されている。

 2024年秋には今回の調査と同じ宮城沖⽇本海溝近傍において地球深部探査船「ちきゅう」よる深海掘削(IODP 第 405 次航海:JTRACK)が⾏われ、震災直後から現在までの地下における断層の状態の変化が詳しく調べられる予定。⼀⽅で、これまで実現できなかった海溝を含む超深海における詳細な地形調査や現地における潜航調査を多くの地点で実施することができれば、津波をおこした海底の地形変化の詳細を広域的に把握できるため、より⾼精度の災害予測に役⽴つことが期待される。

 今回の有⼈潜⽔艇での断層崖の発⾒により、フル・デプス有⼈潜⽔艇が海溝での科学調査に⼤変有⽤であることが実証された。現在、⽇本国内に超深海の海溝底に到達できる探査機や潜⽔艇はないが、巨⼤地震を発⽣させる海溝の近くで暮らしていく⽇本⼈にとって、超深海探査の重要性は増していくものと思われる。

 今後もフル・デプス有⼈潜⽔艇を含む外国の研究船による⽇本周辺の海溝の調査が複数計画されており、これらの調査によって超深海の研究が格段に進むことが期待される。<海洋研究開発機構(JAMSTEC)―新潟大学>
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