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●科学技術ニュース●地中海と大西洋を繋ぐゲートウェイでの海水交換の歴史を研究する国際深海科学掘削計画(IODP)第401次研究航海開始

2024-01-12 09:34:44 |    宇宙・地球
 国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)の第401次研究航海として、米国が提供するジョイデス・レゾリューション号による「地中海と大西洋を繋ぐゲートウェイでの海水交換の歴史」が、2023年12月10日から開始された。

 同航海は、後期中新世から前期鮮新世(およそ500〜800万年前)にいたるまでの地中海と大西洋間における海水の交換の完全記録を復元することを目的とし、ジブラルタル海峡を挟んだ地中海と大西洋の計3地点での掘削を計画している。

 同航海は、海洋掘削と陸上掘削の連携によって科学目的を達成するLand-2-Seaプロジェクトの一環として実施され、国際陸上科学掘削計画(ICDP)によるスペインおよびモロッコでの陸上掘削も計画されている。

 乗船研究者として、インド、英国、オーストラリア、オランダ、スペイン、中国、日本、ノルウェイ、フランス、米国、モロッコから計27名が参加し、うち日本からは3名が乗船。

 海峡は、大洋(ocean)と海(sea)の間の海水、熱、塩分、栄養塩の交換に重要な役割を果たしている。そして、高塩分の海水の移動は、地球規模の熱塩循環を促進する。

 地中海と大西洋を結ぶ広く開けた海路は、現在はジブラルタル海峡として知られているが、中新世においては、モロッコ北部とスペイン南部にそれぞれ狭い海峡が存在していた。

 これら2つの海峡の形は地中海の塩分濃度の上昇をもたらし、その結果、地中海側には高密度の水塊が発達し、狭い海峡を介して大西洋側に流れ込むこととなった。その後もこれらの海峡は徐々に狭まっていき、やがて閉鎖することによって、最終的には地中海における塩分濃度は極度に高まり、メッシニアン塩分危機 (Messinian Salinity Crisis) を引き起こして巨大な蒸発岩層 (salt giant) が成長した。

 IODP Expedition 401では、(1)上述した地中海と大西洋の間に見られる海水交換の開始が海洋循環と全球的な気候に及ぼした影響を定量的に見定めること、(2)地中海周辺の沿海域における極端な環境変化に関するメカニズムを解明すること、および、(3)現在の地球上には存在しないスケールでの高密度海水の流入を海洋物理学的に説明することを目的としている。<海洋研究開発機構(JAMSTEC)>
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