“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「菌類の隠れた王国」(キース・サイファート著/白揚社)

2024-07-09 09:43:25 |    生物・医学



<新刊情報>



書名:菌類の隠れた王国~森・家・人体に広がるミクロのネットワーク~

著者:キース・サイファート

訳者:熊谷玲美

発行:白揚社

 カビ・キノコ・酵母・地衣類…ちっぽけで地味なのに、地球や文明を動かすほど強力な生き物。面白雑学満載で楽しく読めてためになる、ありそうでなかった菌類の一般向け入門書。菌類の分類や生態から、植物や昆虫との共生、農業や発酵など人類との関わり、病原体としての脅威、新素材や新食品開発などの菌類テクノロジーまで、キノコ・カビ・酵母のあらゆるトピック総まくり。・キノコを栽培して食料にするアリがいる・2万3000通りの性別をもつキノコがいる・世界一大きな生物は菌類(重量にしてシロナガスクジラ200頭分以上)・森の木々はキノコの菌糸を通して情報伝達している・脳に侵入し甲虫を操るゾンビ菌がいる・たった1種類のカビが原因で北米の栗は絶滅した・ビール酵母とパン酵母は「家畜」菌【著者】キース・サイファート カールトン大学教授。40年以上にわたり、五大陸を股にかけ菌類を研究してきた。カナダ農業・農産食料省研究所では長年、農場や森林、食品の中の菌類について、また、屋内のマイコトキシンの抑制、菌類が原因の動植物の病気を研究してきた。International Mycological Associationの会長、Mycologia誌の編集長なども務めた。カナダ、オタワ在住。
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「オープンイノベーション時代の技術法務」(鮫島正洋(編集代表)著/日本加除出版)

2024-07-09 09:43:02 |    企業経営



<新刊情報>



書名:オープンイノベーション時代の技術法務~スタートアップの知財戦略とベストプラクティス~

著者:鮫島正洋(編集代表)

発行:日本加除出版

 知財戦略と契約実務をボーダレスにこなすには?実践的なケーススタディを登載。実務の流れで理解する18のスタートアップ成功事例を通して技術法務の思考プロセス・考え方がわかる。<事例> スタートアップからの具体的な相談に基づき、様々なビジネスステージを想定した事例を収録→<会話> 会話の流れで、各ビジネスステージに応じた知財戦略の立て方と契約実務の留意点が分かる→<ここでの考え方> 場面ごとに「ここでの考え方」を示し、知っておくべき知財・法務の知識とポイントを解説→技術法務のポイント「技術法務のポイント」では、事例ごとの要諦、技術法務のエッセンスがすぐ分かる。
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●科学技術ニュース●熊本大学、トランスファーRNAを修飾する酵素が脳機能を支えるしくみを解明しRNA修飾の欠失による脳の病気の理解へ道

2024-07-09 09:42:16 |    生物・医学
 熊本大学大学院生命科学研究部の富澤一仁教授、中條岳志講師、ローランド・トレスキー大学院生(当時)の研究チームは、トランスファーRNA(tRNA)を修飾する酵素の一種であるTRMT10Aの変異により知的障害が発症するしくみを解明した。様々なtRNA修飾酵素の欠失が知的障害を引き起こすが、これまで発症の詳細なしくみは大部分が未解明であったため、今後の知的障害の治療の進展につながる可能性がある。

 tRNAは、ヒトの遺伝情報(核酸配列)を物質(タンパク質)に変換するアダプター分子。ヒトのtRNAにはメチル化など40種類以上の修飾がある。これらの大量の修飾は、細胞内で100種類ほどのタンパク質により入れられる。tRNAの修飾を担うタンパク質のうち30種類以上について、変異すると知的障害やてんかんをはじめとする脳・神経疾患が引き起こされることが知られている。

 しかし、これらの脳・神経疾患が発症する具体的なしくみは大部分がわかっていなかった。

 ヒト細胞内に存在する数百種類のtRNAのうち約4割において、その9つ目の塩基には、TRMT10Aという酵素により1-メチルグアノシン(m1G)というメチル化修飾が入れられる。TRMT10Aも、変異により修飾機能を失うと小頭症と知的障害が発症することが知られてたが、具体的な発症のしくみは未解明であった。

 同研究グループは、TRMT10Aを欠損したマウスを作製し、脳内の全tRNAの量を個別に測定した結果、TRMT10A欠損マウスでは2種類のtRNAの量が減少していることがわかった。

 具体的には、タンパク質合成の開始に必要な「開始メチオニンtRNA」の量と、グルタミンというアミノ酸を運ぶ「グルタミンtRNA」の一種の量が顕著に減少していることを見出した。

 加えて、脳で特定の遺伝子のタンパク質合成の開始反応が低下していることと、タンパク質合成時にグルタミンの遺伝暗号が認識されにくくなっていることも明らかにした。

 さらに、脳の中で特に神経関連遺伝子のタンパク質合成効率が遺伝子ごとに乱れ、神経細胞同士が接続するシナプスの構造が小さくなり、シナプスの可塑性(神経伝達の記録機能)が低下し、マウスの記憶学習能力が低下していることを解明した。

 興味深いことに、全身の組織で開始メチオニンtRNAとグルタミンtRNAの一種の量の低下が見られたが、組織としての機能低下は脳のみで見られ、肝臓や腎臓、膵(すい)臓の機能低下は観測されなかった。

 ヒトのTRMT10A欠損細胞でも開始メチオニンtRNAとグルタミンtRNAの一種の量が顕著に減少していることも確認しており、マウスを用いて解明したことの大部分はヒトのTRMT10A欠損患者でも同じように起きている可能性が十分に考えられる。

 tRNAの修飾を担う様々なタンパク質のうち約30種類について、そのうち1つでも失うと脳・神経疾患が引き起こされることが知られているが、発症の詳細なしくみはほとんどわかっていなかった。

 同研究グループは、以前に他のtRNAメチル化酵素(FTSJ1)についてその欠損が知的障害を引き起こすしくみを解明しました(永芳、中條、富澤ら.2021)。

 TRMT10A欠損マウスとFTSJ1欠損マウスを比べると、両者で共通して、(1)特定のtRNA量の減少およびそのtRNAによる遺伝暗号の翻訳低下、(2)シナプスの構造と機能の異常、(3)脳組織の機能低下と他組織の機能維持が見られた。

 一方、TRMT10A欠損マウスとFTSJ1欠損マウスで異なる点として、FTSJ1欠損マウスでは脳だけで特定のtRNAが減少するのに対して、TRMT10A欠損マウスでは全身でtRNAが減少した。

 今回の研究成果から、全身でtRNA量が減った際にも他の組織と比べて特に脳組織の機能が低下しやすいことが明確に示された。

 今後は、修飾を失っても脳のtRNA量の減少を抑えれば脳組織の機能低下を抑えられるのかを検証することで、将来的に、tRNA修飾の欠失で発症する知的障害の治療につながる可能性が期待される。<科学技術振興機構(JST)>

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●科学技術ニュース●KDDIとNICT、共同研究を開始しハルシネーション抑制やマルチモーダルデータを扱う高性能大規模言語モデル「LLM」開発

2024-07-09 09:41:49 |    人工知能(AI)
 KDDIは、情報通信研究機構(NICT)と大規模言語モデル(LLM)に関する共同研究を開始した。

 同研究では、NICTがこれまでに蓄積してきた600億件以上のWebページのデータなどと、KDDI総合研究所が開発してきた、生成AIが事実と異なる内容などを生成するハルシネーションを抑制する技術やマルチモーダルAI技術を活用する。

 これらを基に、LLMを活用する上で課題となるハルシネーションの抑制や、地図画像および付随する建物情報などのマルチモーダルデータの取り扱いを可能にする技術を研究開発する。

 なお、同研究は、総務省・NICTが令和5年度補正予算を活用し推進する「我が国における大規模言語モデル(LLM)の開発力強化に向けたデータの整備・拡充及びリスク対応力強化」における共同研究の第1弾。

 LLMの利用にあたっては、事実と異なる内容や脈絡のない文章などが生成されるハルシネーションや、地図情報の活用が難しいことなどが課題になっている。

 同研究では、NICTが長年蓄積した膨大なWebページのデータや、そこから作成したLLMの事前学習用データなどを活用し、共同研究を進める。

 KDDIは、日本語汎用LLMの傾向に合わせたハルシネーション抑制技術の高度化や、地図画像および付随する建物情報などのマルチモーダルデータをLLMで取り扱う技術を、KDDI総合研究所のハルシネーション抑制技術やマルチモーダルAI技術を基に研究開発する。

 これらの技術により、特定の目的のための対話システムや雑談システムにおける、LLMの信頼性向上につながる。

 また、LLMによる位置関係の把握などが可能になるため、例えば通信事業者のお客さま応対に適用することで、問題が発生している設備やエリアの迅速な把握が可能となり、通信品質の改善につながることが期待される。<KDDI>

<各社の役割>

KDDI:ハルシネーション抑制技術およびマルチモーダルAI技術の高度化・評価

NICT:LLM開発のための学習データの開発・提供、LLMの事前学習の実施およびその評価
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