はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

不本意な仕分け

2010-01-07 16:37:32 | 岩国エッセイサロンより
2009年12月28日 (月)
「不本意な仕分け」
   岩国市  会 員   沖 義照

 友人が、買ったばかりのデジタル一眼レフで撮った写真を見せてくれた。小型デジカメで撮ったものとは比較できないほど鮮明に撮れている。

 私も以前から買いたいと思い、何度となく電器店に通った。カタログを眺めての研究も、し尽くした。店で実物を前にして、本当に必要か? 費用に見合った使い道はあるのか? と懐を気にしながら自問自答する。

 デフレで物価は下がってきたというが、それに負けず入ってくるものも減っている。「やっぱりおれには必要ない」。本心とは裏腹なことを言い聞かせて、今日も店を出た。
   (2009.12.28 毎日新聞「はがき随筆」掲載) 岩国エッセイサロンより

年女

2010-01-07 16:35:20 | 岩国エッセイサロンより
2010年1月 6日 (水)
「年 女」

岩国市  会 員   樽本 久美

新しい年。5年間日記を買った「年女」の私。いつも以上に頑張らなくてはと思う。

 今年の目標は、大きな声では言えないが「はがき随筆月間賞入賞」である。私なりに、この人の随筆はいいなと思ったら、丸を付けている。3人の先生の評価と比べるのも、ささやかな楽しみである。「はがき随筆」を書いていると、いつかは実を結ぶのではないかと思う。

 毎朝、新聞を読むのが生活の一部になっている。私の名前が出た日は、晩ご飯が豪華になる。夫いわく「毎日掲載されればいいのになあ」。小さいことでも楽しんで書いていきたい。
  (2010.01.06 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより

花子さん

2010-01-06 23:29:32 | はがき随筆
 私の塾に、小2でキューピーちゃんのような色白の可愛い女生徒がいる。「可愛いね」と言うと「みんながそんなに言うよ」と、あどけない。
 少しいたずらっぽいので、注意しながら指導する。
 帰るころは心細いのか「ちょっと待ってよ。手伝ってよ」と落ち着かない。「トイレにも行きたい。漏れそう」と部屋をうろうろ走る。「トイレは、怖い花子さんが出る」。階下のトイレに急ぎ駆け出す。
 数分後、笑顔で「花子さんはいなかった。今度から一入で行けます」と自信たっぷり。花子さん出ないでね。お願い。
  肝付町 鳥取部京子(70) 2010/1/6 毎日新聞鹿児島版掲載

悲劇のヒロイン

2010-01-05 13:13:06 | 女の気持ち/男の気持ち
 嵩校1年生のある日、始業ベルが鳴ったのにも気づかず、私は必死で文庫本を読んでいた。気づいた時すでに遅く、教室に入って来られた先生に本を取り上げられてしまった。
 先生はそのまま私に本を渡すと教壇に立ち、私の方を見て「何の本だ? 何を読んでいる?」と皆の前で大きな声で聞かれた。
 読んでいたのはモーパッサンの「女の一生」だったので正直に答えた。先生は皆の方を向いてこう言われた。
 「いいか。よく覚えておけ。本を読むのはいいが、女はすぐ自分を本の主人公と重ね合わせて悲劇のヒロインになりたがる。決して悲劇のヒロインにだけはなるなよ」
 そして私の方を見て意味ありげににっこり笑われ、何事もなかったかのように教科書を開かれた。
 それからの私の人生は平凡そのもので、悲劇のヒロインになるような暇も出来事も起こらなかった。ところが人生の後半に事件は起こった。主人と老後をゆっくり楽しもうと退職を決意したのに、3月末の退職を目前にし、彼は1人でさっさと逝ってしまったのだ。
 それからどれくらい「悲劇のヒロインになっていないか?」と自問自答したことか。
 私がI人でしっかり生きているのは、先生のおかけです。先生! 彼岸で彼に会ったら「どうだ。私の教えが役に立ってるだろう」と自慢してくださいね。
  福岡県芦屋町 丹生 愛子・62歳  毎日新聞の気持ち掲載

風呂たき

2010-01-05 13:02:13 | はがき随筆
 今どき風呂をまきで沸かす家は少ないが、冬場になると今も続けて楽しんでいる。
 子どものころはどの家でもまきで沸かしていた。それは子どもの重要な仕事だった。井戸水をつるべやバケツで何杯入れるといいか分かっていた。水を入れた後は、生木を割ったまきが燃えやすいように紙や杉の葉などを工夫して積んで燃やし、火の番をしていた。「よか風呂じゃった」と喜ばれた。
 今は一ひねりで沸くが、今で一も私は、古新聞を見ながらまきで沸かしている。今夜もこの風呂に入り、お湯割りの焼酎を楽しみたい。
  出水市 畠中大喜(73) 2010/1/5 毎日新聞鹿児島版掲載


どっちもどっち

2010-01-05 12:59:10 | はがき随筆
 朝食後「私は薬を飲んだかしら?」「知らんよ。そのぐらい覚えていなくてどうする」
 昼寝後「今日は何曜日?」。とっさに答えられず「カレンダーが目の前にあるだろうが」。
 夕食がすんだころ「おれは目薬を差したかな?」「忙しい私に聞くなんて、少しおかしくなったんじゃない」と。が、お互いに相手よりまだ、ましだと思っている。だから双方とも、お薬カレンダーのお世話になるのは、まだ早いと思っている。
 布団に入り、隣の布団のご仁が誰だかは認識できるから、良しとするかと自分を褒め、慰めている間に寝入ってしまう。
  肝付町 吉井三男(68) 2010/1/3 毎日新聞鹿児島版掲載


天寿全う

2010-01-05 12:45:49 | はがき随筆
 ピンポコ……9年前の鉄砲祭りの出店で買ってきた金魚である。その金魚が天国へと旅立った。買ったときは3匹だったが2匹は間もなく死んでしまい、尾ひれがちぎれて一番弱々しそうだった1匹が生き残った。
 来た当初は1㌢くらいだったのが20㌢近くにもなり、大きな目玉をギョロつかせ、老夫婦を楽しませてくれた。卵を産んで驚かせてもくれた。私が電子ピアノで練習を始めると、活発に動き始めたりもした。寿命は8~10年といわれるから、天寿を全うしたといえるだろう。庭の片隅に埋葬した。9年間も付き合ってくれてありがとう。
  西之表市 武田静瞭(73) 2010/1/4 毎日新聞鹿児島版掲載 
写真も武田さん提供

感謝の念

2010-01-05 12:45:17 | はがき随筆
 「はがき随筆」に掲載されて1年余。活字化された自分の文章を紙上で拝読出来るのは感無量だ。下手ながらも公認された訳で喜びもひとしお。スタッフの方々には感謝の念でいっぱいです。日々の暮らしのよしなしごとをつづる。新しい発見での文筆活動は、ミニ随筆とは言え夢とロマン。小6の時、修学旅行の思い出の作文、図画を書かされた。作文、図画も掲示された。それを機会に文章をつづるようになった。「はがき随筆」を生きがいに、切磋琢磨して前向きに筆を執ります。毎月の課題としてまい進します。今後は2年生の道を歩みましょう。
  加治木町 堀美代子(65) 2010/1/1 毎日新聞鹿児島版掲載

結婚行進曲

2010-01-05 12:20:44 | はがき随筆
 私は天才作曲家メンデルスゾーンの大ファン。特に「結婚行進曲」と「ベニスの舟歌」が好き。没後160年以上たった今年、テレビやラジオで繰り返しメンデルスゾーンの美しい音の世界に浸った。今年もどれほど多くの人々が「結婚行進曲」のBGMの中で人生の門出を祝ったことだろう。19世紀に作曲されたこの曲が延々と演奏され続けていることに深い感動を覚える。人々を幸せに導く何かがある! 私はメンデルスゾーンの魅力に取りつかれ、元気だった数年前まで我が結婚式も思い出しながら、つたないながらもこの2曲をピアノでよく弾いた。
  鹿屋市 田中京子(59) 2009/12/31 毎日新聞鹿児島版掲載

故郷の家

2010-01-05 12:19:40 | はがき随筆
 私が子供の時代には故郷の空は澄んでいた。夜が明けると軒の鳥小屋から高らかに鶏は歌い、羽を打って餌を求めて庭に次々降り立つ。そこら辺りのモミ粒は食べ掃き清められていく。どこの鶏小屋も軒につられたイワシ箱が一般的であった。
 どの家もかやぶきであった。屋根のあちこちに松の苗が見られた。朝露のしずくが白玉を光らしていた。クモの糸などは露の玉が壮観であった。学校の行きがけには、みそ汁の香りが往来までにおったものだった。故郷の空は平和そのままであった。今は絶滅した感のオミナエシが野にいっぱいであった。
  鹿屋市 山口弘(77) 2009/12/30 毎日新聞鹿児島版掲載

冬に光るもの

2010-01-05 12:18:50 | はがき随筆
 寒さが本格的に来て防寒着がふえた。近年、衣服の表皮が光るものがふえると、どうも寒く思えるのは私だけだろうか。
 きゅっきゅっと豊かなキルティングはその人の丈を縮め、横に広げ、ジーンズにブーツスタイルは、この服地のキラキラと調じ、まるでカウボーイさながら。あと一つはカウボーイハットがない。ハットは昔のパナマ型でちょっと街風か。
 私は、アンゴラ混の半コートと帽子、600円を切る冬短靴を買ってブッカブッカと歩くババさま。あつければ良い75歳。光るものなどなし。この冬はこれで対処できるかしら。
  鹿児島市 東郷久子(75) 2009/12/29 毎日新聞鹿児島版掲載

ぼくは雄山

2010-01-05 00:33:43 | アカショウビンのつぶやき

大好きなキャリーに乗れるんなら、痛い予防注射だって平気だよ。






なぜかこのぬいぐるみを見ると、興奮して噛みつくのでママがどこかに片付けちゃったみたいだにゃあ。

ぼくは弦一家の、いたずら息子雄山。
猫が取り持つ縁で結ばれたパパとママは、結婚したら、捨て猫の里親になろうと決めていたらしい。
ある日ネットでぼくを見た二人は「この子にしよう」と早速貰いに来た。器量よしで元気があり人懐こいと言われるぼくは、こうして新しいパパとママに愛されすくすくと一歳の誕生日を迎えた。
お正月に初めてぼくに会ったパパの母さんは「この子まるで犬みたいね」と、部屋中を走り回るぼくに驚いていた。
ぼくには、すごい特技があるんだ。ママがキャリーバッグを持ってくると、ねらいを定めてジャンプし上手に飛び乗っちゃう。気持ちいいんだぁ。母さんは、おったまげていたよ。
でも調子に乗りすぎ、母さんの背中に飛び乗ったら、悲鳴をあげたのでぼくの方が驚いちゃった。
母さんは昨日、鹿児島に帰っちゃったけどまた会いたいにゃぁ。

ジョーのつぶやき

2010-01-03 23:24:47 | アカショウビンのつぶやき

ぼくはお花が大好き、葉っぱを食べちゃうので叱られるけど


弱虫のぼくは一番上は…どうも、この辺がちょうどいいなあ


ぼくは、弥生家の長男ジョーである。
ある日、ぼくは冷たい雨の中、お腹がすいて声も出ず道端にうずくまっていた。一度は通りすぎたママだったが、しばらくして戻って来ると「可哀想だけど、うちでは飼えないの、一晩だけね…」と抱き上げてくれた。しかし、冷たいぼくの体を暖め、少しずつミルクを飲ませながら優しくひとこと…。
「やっぱり、あの道端に置き去りにはできないよ」と。嬉しかった。

 「ジョー」と名付けられ、ママと夢のような毎日を過ごしている。
しかしぼくは、ひどい人見知りで、ママのお友達が来るのが怖い。今度ママは結婚することになり、引っ越し屋さんが来て新しいマンションに、ぼくは無理やり連れて行かれた。そこにはパパがいた。知らない家はそれだけでも怖いのに…。ぼくは飲まず食わずで一日中お風呂場に籠城した。でも引っ越し作業で疲れたママは「お腹がすけば出てくるでしょ」だって。
 ひと月たち、やっと落ち着いたこの頃だが、今度は鹿児島からママの母さんがやってきた。この母さんは大の猫好きでしつこいこと…。ぼくは母さんの気配にサッとベッドに逃げ込んだが母さんは猫なで声で迫ってくる。恐怖のあまり「ウー」と唸ってみたが母さんは「ジョーちゃんジョーちゃん」とひるまない。やっとママが「しばらくそっとしてやって」と言ってくれた。ホッとした。

 けれど元旦から3日までパパとママはお出かけ。その間は母さんと2人きり…。
「あぁ、どうしよう」。

これは、娘宅に拾われた猫・ジョー君のつぶやきでした。


 年末から上京し娘宅で新年を迎えました。携帯から毎日アップするつもりでしたが、パスワードを忘れ公開できませんでした。

遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。