はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

「春遠からじ」

2010-01-30 17:50:44 | 岩国エッセイサロンより
    岩国市  会 員   吉岡 賢一

 冬の朝日がぬくみを増すころ、決まったように2羽のスズメがひなたぼっこにやってくる。

 産毛を立て丸く膨らませた体にたっぷり日差しを浴びている。少し距離をおいた2羽。チュンチュンにぎやかに語るでもない。時折片方が寄り添い、耳元に何かをささやく。そしてチョンチョンと相手の羽繕いをしてまた離れる。仲むつまじい夫婦とみた。やがて訪れる春には、新たな巣作りや子育てに追われるのを見越して、餌も少ない寒い今、ゆったり英気を養っているのだろうか。日だまりに身を寄せるスズメの横で、沈丁花が小さなつぼみを付け始めた。
  (2010.01.29 毎日新聞「はがき随筆」掲載)
岩国エッセイサロンより転載
写真はTarkaさん