はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

切なさの泉

2009-12-28 18:25:29 | 女の気持ち/男の気持ち
 車の運転をするときはいつもラジオをつける。聞いていると、中には何十年も続いている番組があり、番組のテーマ曲を聞くと若かりし日を思い出し、今もなお切ない気持ちにさせられる。
 中学校の教師をしていたころ、部活動の指導を二十数年間続けた。放課後は毎日暗くなるまで練習に付き合い、休日もほとんど休むことはなかった。新婚当初も、子供が2人、3人と生まれても、日曜日に家にいて子供の相手をしてやったことがなかった。
 日曜日、家を出かけるのは朝の8時ごろだった。家内や子供が見送ってはくれるが「時には子供の相手をしてやってよ」と言いたげなのが表情から読み取れた。自分もそう思っているからかもしれないが、出かけるのがつらく、後ろ髪を引かれる思いだった。
 日曜日の朝8時5分、「音楽の泉」のテーマ曲が流れ、解説とともにクラシック音楽が始まる。
 あれからもう50年近くなるのに、時たま日曜日の朝にこのテーマ曲と出合うことがある。その途端、あのころにタイムスリップしてしまい、悲しいような切ないような複雑な思いに胸が満たされる。
  鹿児島県志布志市 一木 法明・74歳 2009/12/11 の気持ち掲載 


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