はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

不信任

2009-04-20 20:39:22 | はがき随筆
 何かと話題の竹原信一・阿久根市長が再度の不信任決議で失職した。

 ご本人も会見で「予想通り」と話したように、市長が失職して出直し選挙になることは「想定の範囲内」ではあった。だが昨夏の市長選以来、こうも選挙が続くと、もう結構と言いたい市民は少なくないのではないか。

 竹原派に言わせれば「改革者」、一方の反竹原派は「単なるお騒がせ市長」となじる。17日の市議会で双方の主張に耳を傾けたが、いずれの見方も竹原氏の一面を言い当てている気がする。

 市長自らが議員定数にまで手を突っ込み、職員の人件費削減に乗り出す。未曽有の不況の中、自主財源の乏しい地方自治体の未来は決して明るくない。財政構造を好転させるには小手先の改革では収まるまい。人事の問題も、ぬるま湯的な年功序列の慣習にのっとらず、人事権者として大なたをふるうのはある意味で正当だろう。

 それでも彼の行動はいかにも性急かつ強引に映る。剛直一本やりで、しなやかさを欠いているのだ。議員定数問題が好例だが、成果として大幅な定数削減を期待するなら、もう少し違ったアプロ-チがあっていい。

 16の定数を6に減らす発案は将来構想としてはあり得ても、いっぺんに実現するのは常識的に無理だ。それを強行するのは、却下されるのを承知の上で、あえて火種をまくためにやったとしか思えない。つまるところアジテーターとしては素晴らしいが、改革を成就させる手腕には少々、疑問符を付けたくなる。

 竹原氏は会見で、自身の政治手法は変えないと言い切った。それがよそ行きの決意表明なのか本心なのかは分からないが、私の考える、あるべき政治家像とはやや違う。志は頑固一徹で結構だが、身のこなし方は柔軟であってほしい。経験に学び、自分自身を絶えず変革・向上させるのも一流の条件なのだと思う。

 鹿児島支局長 平山千里 2009/4/20 毎日新聞掲載








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