椎葉村は尾手納にて。「追手納」とも称され、源氏から追われた平家がこの地に落ち延びたという伝説が残る。「追手が納まる」と言葉繋げば意味もとおるか。渓流釣りでこの地へ足を運び、奥へ、奥へと訪ねていく。人家一つない秘境は、轟く水の音が静寂に染み込む。かつて刀を携え武士が歩んだこの地を、今は竿を携え釣り師がゆく。魚を平家とすれば、それ追う自分は源氏かとこぼした。
みなもを彩る落葉、間もなく渓流釣りシーズンの終わり。「これまでか……」川に立つ源氏もまた、秋風に追われるように竿をしまいこの地を後にした。
宮崎県日向市 梅田浩之(27) 2019/11/24 毎日新聞鹿児島版掲載
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます