老人ホームへ母の面会に行った折り、老夫婦と同席した。車椅子の無表情な妻へ、夫はズボンのポケットから一切れのカステラを取り出して渡した。食べ終わると一言の会話もなく面会は終わった。「家で生活できないが頑張れよ」と渡された甘いカステラ。口にした妻は「ありがとう。あなたも一人で寂しいでしょう」と無口で不器用な夫の精いっぱいの愛情を感じた。目の前の二人の声なき会話を聞き、私は悲しく切なかった。私のことも分からない母に「またね」と言い、ハンドルを握り帰る私は、この世の無常に、目にワイパーがほしくなった。
出水市 塩田きぬ子 2012/12/27 毎日新聞鹿児島版掲載
出水市 塩田きぬ子 2012/12/27 毎日新聞鹿児島版掲載
キッチリ等分に包丁で切って、二人で5個までは食べてたのに・・・・・・。
紅白歌合戦の最中、夫がコタツで、うたた寝した隙に・・・・・。
最後の1個を1人で食べてしまった、きぬ子さん・・・・。
最後の1個は、元旦に食べようと約束してたのに・・・・。
目にワイパーが欲しい元旦です。