はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

一切れのカステラ

2012-12-28 14:38:36 | はがき随筆
 老人ホームへ母の面会に行った折り、老夫婦と同席した。車椅子の無表情な妻へ、夫はズボンのポケットから一切れのカステラを取り出して渡した。食べ終わると一言の会話もなく面会は終わった。「家で生活できないが頑張れよ」と渡された甘いカステラ。口にした妻は「ありがとう。あなたも一人で寂しいでしょう」と無口で不器用な夫の精いっぱいの愛情を感じた。目の前の二人の声なき会話を聞き、私は悲しく切なかった。私のことも分からない母に「またね」と言い、ハンドルを握り帰る私は、この世の無常に、目にワイパーがほしくなった。
  出水市 塩田きぬ子 2012/12/27 毎日新聞鹿児島版掲載

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2 コメント

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干し柿 (匿名)
2013-01-01 10:31:21
お歳暮に頂いた「最高級の大きな干し柿6個」・・・・・。

キッチリ等分に包丁で切って、二人で5個までは食べてたのに・・・・・・。

紅白歌合戦の最中、夫がコタツで、うたた寝した隙に・・・・・。

最後の1個を1人で食べてしまった、きぬ子さん・・・・。

最後の1個は、元旦に食べようと約束してたのに・・・・。

目にワイパーが欲しい元旦です。
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母の一面 (広島県 田丸)
2013-01-03 12:45:45
 もうすぐ母の三回忌。                     逆流性胃炎と痴呆症の持病が有った母。特別養護老人ホーム生活六年間の中で、私の知らなかった一面に嗜好のことがありました。私が子供の頃は、頂き物など、特に甘いものなどを、母が口にしたのを見たことが有りませんでした。全て子供にと残してくれていました。母の里から届けられる、たくさんの干し柿もそうでした。                                そんな母の、午後のおやつ時をねらって、見舞いに行くのが常でしたが、夏はゼリーやプリンなど冷たくて喉の通りが良いものを、その他の季節には、口の中で溶けるようにマフィン、パウンドケーキ、クッキー、カステラ、チョコレート、饅頭、羊かん、煮豆など甘いものを喜んで食べていたように思います。             こんなに甘い物が好きな人だったんだと気付かされた事でした。                            何の親孝行も出来なかった私の、せめてもの慰めになる思い出です。
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