父の許しを得ると五右衛門風呂から跳びはねるように上がり、風に吹かれてはしゃいでいる。さっぱりし、晴れ晴れした声でお礼を言った。父は杉の葉でカンテラに火を付け、雨上がりの小道を黙って歩いて行く。ぽっかりと揺れる灯をみつめ、とぼとぼと追う。
雲もとかくれんぼする三日月。水たまりを避けるように時々止まって足元を照らしてくれる父。姉も手を引き合図するが、擦り切れたげたは、ぬかるみにはまる。たんぼからはケロケロとカエルの合掌。闇にはほっこりなった心のようなふわふわ蛍。
戦後間もない頃の事である。
薩摩川内市 田中由利子 2012/7/12 毎日新聞鹿児島版掲載
雲もとかくれんぼする三日月。水たまりを避けるように時々止まって足元を照らしてくれる父。姉も手を引き合図するが、擦り切れたげたは、ぬかるみにはまる。たんぼからはケロケロとカエルの合掌。闇にはほっこりなった心のようなふわふわ蛍。
戦後間もない頃の事である。
薩摩川内市 田中由利子 2012/7/12 毎日新聞鹿児島版掲載
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