私は字が汚い。だから長い間手紙を書くことが苦手だった。
癖のある字はどれほど丁寧に書いてもきれいには見えない。1枚のはがきを書きあぐね、2枚を反故にし、便箋に至ってはいつも3~4枚を無駄にしていた。悩みは表書き。なぜかいつも斜めになってしまうのだ。それでもこの頃は少しずつ手紙を書くことが好きになっている。字が汚くてもよいと思えるようになったのは年のせい。住所名前の横に定規を添えればまっすぐかけることも覚えた。
苦手の原因は案外、気取り屋であった自分の心。「手紙が来たぞお」。夫の声がした。
宮崎県延岡市 佐藤桂子(74) 2021.11.29 毎日新聞鹿児島版掲載
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます