はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆10月度

2021-11-30 18:30:09 | はがき随筆
はがき随筆10月度の受賞者は次の皆さんでした。(敬称略)

【月間賞】26日「幸せ者」道田道範=鹿児島県出水市
【佳作】▽19日「フェルメールの絵」渡邊布威=熊本市中央区
    ▽23日「父をしのんで」小金丸潤子=宮崎市

 近頃よく目にするカラフルなバッジがある。テレビに出る政治家やニュース番組の司会者たちのジャケットの襟もとについている。丸いドーナツのような円形で社章とは違う。SDGsバッジと呼ばれ、2015年に国連サミットで採択された「持続可能な開発目標」で17の達成ゴールを目指そうと、17の色がバッジを彩っている。その中の一つに食品ロスを減少させるというターゲットがある。賞味期限はおいしく食べることができる期限で、その期限が近づくと半額になったりとスーパーやコンビニで目にすることが多い。
 宮田さんの「半額品」。朝一番に見切りの半額品を買います⏤⏤。なんという気持ちの良い宣言でしょう! 
 「娘たちや孫たちも楽しみにしているいちごやスイカやカットパイン。当然半額でなくてもよく買っている」からこその目利きがあるのでしょうね。胸に輝くバッジがなくても隆雄さんの買い物の楽しみのゴールは「一生懸命生きています」。お見事です。
 ハロウィンはコスプレやら仮装の場として定着してきているようだが欧米では宗教的な意味合いがあります。供養のない悪霊や幽霊は神様のいないこのハロウィーンの日にさまようとされていて、取りつかれないために自分とは違うものに仮装するのです。
 人は二度死ぬといわれています。肉体の死と忘れ去られることの死。道田道範さんの「幸せ者」。2年と4カ月、亡き母の月命日にお供えをしてくださる奇特なお方を仏様と呼んで手を合わせている⏤⏤。道範さん、はがき随筆に投稿して墓前に線香を手向けて下さるお人へ感謝を述べられたのですね。
 亡夫の自慢の蔵書のフェルメールの作品集をひもときながら画中画のキューピッドが現れたという最新情報を伝えるように語りかける渡邊布威さん。
 初秋が毎年苦手な小金丸潤子さんは昨年亡くなった父を思い、今年はとても物悲しく人恋しい……。思い出を共有できる従姉妹との文通が筆まめだった父をしのぶことだと投稿。
 大切な人がこの世にいない哀しさを、残された人たちはしのび、思いを言葉にし、つづります。
 忘れないということが死んでも生きるということだとしみじみ思いました。
 日本ペンクラブ会員 興梠マリア

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