はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ホタルの思い出遠く

2014-06-26 12:26:44 | 岩国エッセイサロンより
2014年6月26日 (木)

岩国市  会 員   角 智之

薫風を受けて新緑も色濃くなる頃、初夏の風物詩、ホタルたちの出番となる。
 たそがれ時に川辺の草むらに目をやると、鈍い光を放ちながら飛び立つタイミングをうかがっているようだ。初めは思い思いに光っているが、やがて一つのグループとなって乱舞する。 
 子どもの頃、近所の友達と夢中で追い掛けた記憶がある。走りながら狙いを定め、竹ぼうきを振り上げると、いきなり光を消して高く舞い上がる様子が月明かりに見えた。小さな虫でさえ、身を守るすべを心得ているのに驚いた。今では見ない光景となった。
 コンクリート護岸工事で隠れ場となる雑草が少なくなったのと、上流のダム工事で川底に土砂が堆積し餌のカワニナが減少、幼虫の生息の場が狭められた。
 人間の生活を豊かにする河川工事も、自然環境の保全と両立させながら進めるべきではないかと思う。

(2014.05.08 中国新聞「広場」掲載岩国エッセイサロン)より転載

最新の画像もっと見る

コメントを投稿