「ママ、ママ」。足元で声がした。「あれっ、ママどっかへ行っちゃったの?」。2.3歳の男の子。柔らかい手が私の手を探る。サッカー少年のように髪の毛が立っている。「大丈夫!」。レジの支払いを妻に頼んでスーパーの店内を歩いた。「マズいなあ、誘拐犯に間違えられちゃう」。店員の女性に預けようとした。彼は私の人さし指をギュッとにぎったまま。「じゃ、抱っこしようか?」。184㌢の私の目線からの方がきっとよく見える。「あっ、ママだ!」。不安で押しつぶされそうだった男の子の顔が、私の腕の中でゆっくりと緩んでいった。
霧島市 久野茂樹 2011/3/22 毎日新聞鹿児島版掲載
霧島市 久野茂樹 2011/3/22 毎日新聞鹿児島版掲載
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