はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

島の運動会

2008-11-28 20:33:02 | 女の気持ち/男の気持ち
 一度は行きたいと思っていた離島の運動会に参加する機会に恵まれた。
 大漁旗を翻した漁船に迎えられ、出水市蕨島港から7分も乗ると米ノ津中の桂島分校に着く。分校の在校生は中2の女子1人だけ。その女生徒が元気よく宣誓して運動会は始まった。
 たった1人の生徒を主人公に、全島民が気持ちを一つにして盛り上げていく。「我は海の子」という競技では、最後に筏を漕いでゴールする。おそらくどこの学校にもないここだけの種目だろう。100人近い参加者全員が大いにわきあがっていた。
 妻は「出水音頭」という踊りに、私は「バケツリレー」に参加し、桂島の方々と楽しい時間を過ごさせていただいた。
 昼食はおにぎりに、釣ったばかりのタイやブリの刺し身など。さすがは島の運動会と、感動しながらたらふくごちそうになった。
 生徒は1人しかいないけれど、その1人をみんなが我が子のように大事にしている。島の方々の熱と温かさを随所に感じた。当の女生徒は何種目にも出場し、疲れていたはずなのに、私たち島外の一般参加者のために港まで見送りに来てくれた。
 ジーンと来た。小島には今、日本が失いつつあるものが残されている。桂島は、人々の心が詰まった宝の島だった。
   鹿児島県出水市 小村 忍(65)2008/11/15
   の気持ち 掲載

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