「この際、辞めて、好きなことでも自由にしたらどうですか」。皆その方に提案した。余命半年、不治の病と宣告されたのに退職する様子などみじんもない。「私は一日でも長く、みんなと一緒に働きたいの。これまでと何も変わらずに」。そう行って「さあ、不良品を作らないように」とニッコリ作業に戻るのだった。とても丁寧な仕事ぶりだった。痛みもあったはずなのに、ゆがむ顔など見たことがない。私の記憶の中には、揺れる秋桜のような表情しかない。笑顔こそ強者の証しなのだ、と無言で示してくれた彼女を、二児は立派に見送っていた。
出水市 山下秀雄 2016/11/17 毎日新聞鹿児島版掲載
出水市 山下秀雄 2016/11/17 毎日新聞鹿児島版掲載
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