はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

おもかげ

2009-12-07 18:48:26 | はがき随筆
 小刀で鉛筆をまとめて削るが、どれも気に入らない。幼いころ母が削ってくれた鉛筆はスマートで木の香りさえしたのに。
 あれは12歳の夏、N宅が落雷で燃えてた時だ。母は急に寒がり高熱を出した。者を呼びに雨の中を走った。重い虫垂炎だった。やっと退院したら今度はリウマチで寝込んでしまった。
 母の言いつけ通りの買い物と料理の日々が始まった。弟2人も張り切って水を運びふろを沸かしたが、痛みで母が話せない日、3人は途方に暮れていた。
 今でも料理をすると母の味になる。が、削った鉛筆はいまだにブサイクのままなのだ。
  出水市 中島征士(64) 2009/12/7 毎日新聞鹿児島版掲載

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