私が中2の時、学校で父に国語と書道を習った。黒板の字を書く姿が目に浮かぶ。面はゆい我が子に困惑したのか「うっかりお父さんと呼ぶな」と小声。当然家でも厳しかった。ある夜、寝ている私に「書道の出品は」と質問。「書いたけどまだ」。すると「今から投函するよ」と寝間着姿で私を暗闇に連れ出し、勇み足で歩く。橋の上を「ゴトゴト」とげたの音が響き、やっと郵便局前に着いた。ポストの中へ「ポトン」。
沈黙する親子に寒風が吹く。
明治生まれの父は87歳で他界した。今こそ精いっぱいの恩を返したいが、時すでに遅し。
肝付町 鳥取部京子 2015/8/12 毎日新聞鹿児島版掲載
沈黙する親子に寒風が吹く。
明治生まれの父は87歳で他界した。今こそ精いっぱいの恩を返したいが、時すでに遅し。
肝付町 鳥取部京子 2015/8/12 毎日新聞鹿児島版掲載
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