はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆の2月度

2021-03-19 10:17:19 | はがき随筆
はがき随筆 2月度の受賞は次の皆|熊本皆さんでした。 (敬称略) 
月間賞に廣野さん(熊本)
佳作は川畑さん(宮崎)、山下さん(鹿児島)、西さん(熊本)
一 神さん」西洋史―熊本市北区



 【月間賞】19日 「時間」廣野香代子県八代市
【佳作】27日「明るい出会い」川畑昭子=宮崎市
△2日 「シャンプー」山下秀雄=鹿児島県出水市
△28日「天神さん」西洋史=熊本市北区
 
 私たちの生涯は、一つの歴史といえます。歴史は時間といってもかまいません。廣野さんの「時間」は、そのような観点から、自分のために使う時間と、他人のために使う時間との関係の難しさをとり上げた優れた文章です。
 母は、夫や祖母や親類という他者にばかり時間を使って、自分のためには使わず、年老いた。娘は意を決して、祖母と父とを施設に預けた。娘にも母にも当然うしろめたさは残る。しかし、母はようやく自分の時間を自分で使う、安穏の生活を得た。高齢化社会の中の私たちを待ち構えている問題が、簡潔な文章のなかに暗示されています。
  「明るい出会い」は、散歩の途中で支援学校の子供たちに出会った時の感想です。その中の一人が、自作らしい浪曲のような物語をつぶやいていたので、褒めてやると明るい返事が返ってきて屈託がない。 昨今のニュースなどでは、何らかの意味で心身が不自由な弱者を排斥するなどの、社会の余裕のなさが感じられます。確かに、私たちの社会が弱者にも寛容さを保つように努めたいものです。
 「シャンプー」は、本を読み通せないという悩みに、理容院のご主人は少しずつ読めばそのうちに読みおおせていると言い、シャンプーも少しずつ使うが、いつの間にかなくなっていると教えてくれた。そういえば、私の髪の毛もいつの間にやわせかくなりかかっている。飛躍と比喩とがうまく活かされ、最後のユーモアがみごとな文章です。
 「天神さん」は、孫に、梅干しの種を割って天神さんというらしい核を食べることを教えたら、自分の家でも祖父母の家のその他の食習慣を取り入れ出した。そのことを手放しで喜んでいる祖父の様子が彷彿とする、ほほ笑ましい文章です。 昨今の私たちの家庭で、 孫と交流があること体が恵まれたことかもしれません。
 この他に、永井ミツ 子さんの「小さな幸福」、秋峯いくよさんの「練炭火鉢」、相場和子さんの「隠れ蓑」が印象に残りました。
鹿児島大学名誉教授 石田 忠彦

◆係から
廣野さんの月間賞を 巡るインタビューが28 日 (日) 午前7時10分からのMRT宮崎放送ラジオ番組「潤子の素敵に朝!」で放送予定です。番組再編でインタビューは今回が最後です。「宮崎ほっとタイム」(水曜午前9時15分から5分間)の中でも掲載作が朗読されることがあります。
 また、MBC南日本放送ラジオでも、掲載作が27日 (土) 午前9時半ごろから朗読され ます。「二見いすずの土曜ラジオ!」のコーナー「朝のとっておき」です。

2021-03-19 10:08:55 | はがき随筆
 今でも忘れられない友達がいます。若い時から何でも話し合える友達でした。その友達が、大恋愛をして親から大反対されました。それはそうです。 相手は旅回り劇団の雑用が仕事とのこと。友達のAさんは親が許さないなら阿蘇山に飛び込むというので仕方なし。2人は結婚しました。相手の人は苦労人で良く人の世話をされていました。 Aさんはあの人が死んだら私もすぐに死ぬと言っていました。 2人は子供、孫ができました。 風の便りに主人が亡くなられたと聞き、1カ月後にAさんの死を知りました。人生の不思議な縁を感じずにはいられません。
 熊本県八代市 相場和子(94) 2021/3/19 毎日新聞鹿児島版掲載