はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

異常だった夏

2018-09-08 07:56:26 | 岩国エッセイサロンより
2018年9月 7日 (金)
   岩国市   会 員   片山清勝

 今年の暑さは「殺人的」という恐ろしい表現があった。そのためか熱中症で救急搬送された人は記録的な人数になった。
 暑さは人だけではない。路上に、あおむけで息絶えているセミを何匹も見かけた。カブト虫が暑さと水不足から、全滅に近い放し飼い施設は閑散としている。
 一方で、うれしい異変もある。暑くなって一度も蚊に刺されなかった。こんなことは初めてだ。連日の猛暑が蚊の活動を止めた、こんな珍説をたて出番のなかった蚊取り線香をしまう。
 エアコンをこれほど使う夏は今年で終わりになってほしい。   

    (2018.09.07 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

見直したよ

2018-09-08 07:55:06 | 岩国エッセイサロンより
2018年9月 7日 (金)
岩国市  会 員   横山 恵子

 「すごい! まだ担いで歩いているよ」とテニス仲間の声。

 「何事かな?」と思ったら「人に踏まれたのかね。砂に半分埋まって動かなくなったアリを仲間が担いでいる」と言う。

 やがて巣らしき中に入った。「人間社会では見て見ぬふりをする人が増えたけど、見習わんといけんね」と、ひとしきり。

 それにしても同じくらいの重さの仲間を担ぐなんて。そのうえ外で餌を探す働きアリの多くは年をとっていると聞き、ビックリ。

 この酷暑の中でも老体にムチ打って働いているアリたちに活を入れられた。

   (2018.09.07 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

酒よさらば

2018-09-08 07:54:25 | 岩国エッセイサロンより
2018年8月26日 (日)
岩国市  会 員   山本 一



 「酒を飲まない人生」を歩む決意をした。仕事も私生活も、酒が仲立ちした生活よさらばだ。酒を飲むと不整脈を感じるようになった。医師の診察の結果は「飲まなければ問題なし」。医師や家族の推奨は「酒は止める」だ。酒のない人生なんてこれまで想像すらしなかった。無理、ムリ、無理。が、酒を飲まない生活だと「これまでと違う生活がある」と思い至った。
 76歳を機に、新たな人生の出発。想像すると少し楽しくなってきた。車を運転して飲み会にも行ける。これまで迷惑をかけた他人や妻を、今度は笑顔でボクが送ろう。実に愉快だ。

(2018.08.26 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

教訓の満艦飾

2018-09-08 07:53:42 | 岩国エッセイサロンより
2018年8月19日 (日)
岩国市  会 員   吉岡 賢一

 西日本を襲った集中豪雨は、多くの人を泣かせる大災害となった。私たちは直接的被害を免れたが、呉市に住む息子家族は断水と食糧難に襲われた。3日後、広島市に通じる県道が唯一復旧したと聞いて遠回りと大渋滞を乗り越え、親子4人と2匹が我が家へ避難してきたのは真夜中。嫁は眠りこける5歳と1歳の姉妹にまずシャワーを。「何よりのごちそう」と笑った。
 翌朝の物干し竿は、人々の不安と心配をよそに、愛らしい花柄の数々が風に揺れる。親子共々初体験の大災害は「普通の暮らしのありがたさ」と計り知れない教訓をもたらした。

(2018.08.19 毎日新聞「はがき随筆」掲載)