はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

年間賞に森園さん

2015-04-11 10:51:19 | 受賞作品

2014年度 はがき随筆 年間賞に森園さん
妻への限りない愛記す

 2014年度の「はがき随筆」年間賞に、鹿屋市寿、森園愛吉さんの「愛妻」(8月9日掲載)がえらばれた。作品に込められた夫婦愛などを聞いた。北九州市で5月30日に開催される第14回毎日はがき随筆大賞の選考作品として鹿児島版から「愛妻」が水仙される。また、今月12日午後1時から鹿児島市中央町の市勤労者交流センターで、年間賞の表彰式と毎日ペンクラブ鹿児島の総会を開く。【新開良一】

 61歳の時に病に倒れた妻ナミさん(88)への愛情といたわりがあふれる作品。「一命をとりとめて帰ってきてから、手にまひが残る家内に変わって、私が料理、洗濯、入浴介助など家事全般を16年間やりました」。淡々とした口調に自然体の夫婦愛がにじむ。
 はがき随筆への投稿は月1,2回。テーマは多岐にわたるが、妻への思いをつづったものが多い。「感謝、感謝です。だって、2人で苦労して今の家庭を築き上げてきたんです。うちの立役者はやっぱり家内です」
 夫婦二人三脚の生活が長く続いたが、ナミさんは今、高齢者施設で暮らす。施設に任せなければならないことへの申し訳なさ、不憫に思う気持ちを「その果てを知らない」と表現した。読む人に深い余韻を残す一言だ。
 年間賞受賞を「一生の宝」と喜ぶ。「少し耳が遠くなりました」と嘆くが、語り口はかくしゃくとして、歯切れもよい。顔色、表情も現在94歳とは思えない艶と張りがある。
 短歌集や歴史研究など著書も多い。周囲は「好奇心、向学心は人一倍」と評す。「まだいろいろな事を書きたいんです」。はがき随筆への情熱も、衰えることを知らない。

漢語多用し文体に効果

年間賞には、森園愛吉さんの「愛妻」を選びました。
 61歳で倒れた奥さまの、26年間にわたる看病の経過への感慨が内容になっています。16年間自宅での看病、それから10年施設での介護、一口に26年間といいますが、その間の日々の営みに、想像を絶するものがあったことは容易に理解できます。
 しかし、これほどの悲惨な内容を綴った文章ですが、その印象は、誤解を恐れずに言えば、男っぽいもので、さっぱりしています。それは、「心通う潤いもない砂漠に呻吟起居する妻の病状」というように、漢語を多用した文体の効果にあります。これは奥さまへの哀惜の感情が、「限りない不憫の情」と表現されているところにも表れています。そしてなによりも「その果てを知らない」と言い切って、文章を終わらせたところの効果は抜群です。
 それも人生と言ってしまえばそれまでですが、人生について多くのことを考えさせるものをもった内容です。
 ほかに、高橋宏明さんの「母の耳」、年神貞子さんの「ヤモリ」、内山陽子さんの「何を思うや」が、その内容の珍しさと優れた文章で目を引きました。
  (鹿児島大学名誉教授 石田忠彦)

別れの朝

2015-04-11 10:45:00 | はがき随筆
 45歳の春だった。別れの日の前夜、遠い道のりを送り届けたのは午前零時ごろ。小一時間をかけて帰宅し、お風呂を沸かして入り、床に就いたのは2時を過ぎていたろう。仮眠を取り、作らなくてもいいのにお弁当を作って、迎えに出たのは6時。
 彼を乗せ、橋の手前の信号で止まったら「寝不足だろう。運転しよう」と交代してくれた。うれしかったが、最後の最後に私に残した優しさなのかと思うと、胸が熱くなった。
 鹿児島の男性だから、言わなくても分かるだろう、というのは理解できる。でも、ささいな一言に女心は射貫かれるのだ。
  鹿児島市 本山るみ子 2015/4/11 毎日新聞鹿児島版掲載

頑張ってみる

2015-04-11 10:35:21 | はがき随筆
 まだ肌寒い3月初旬、急に留守をすることになった。仕事一直線の夫と、目も耳も不自由な老犬を残しては何とも不安だった。外食の嫌いな夫は卵焼きとみそ汁、煮魚の作り方を書くようにと。手際の悪さに思わず手を出したくなったが、頑張るという。定時の連絡には、忙しくてスーパーの総菜で遅い食事中とか。次の日も、次の日も総菜。洗濯はできたらしい。3月21日、帰りの電車で鹿児島の早い桜の開花宣言を知った。ヤマザクラも満開で春を一気に感じた。迎えの夫の顔も解放された感の満顔。できたはずの洗濯物は、ま~るく丸めてあった。
  阿久根市 的場豊子 2015/4/10 毎日新聞鹿児島版掲載
 

開会式を見て

2015-04-11 10:22:07 | はがき随筆
 選抜高校野球大会の開会式をテレビで見た。選手たちが入場行進を始めたら、私の心も躍り始めた。宣告までデレーッとしていたのがうそのようにシャキッとなり、心のモヤモヤも吹き飛んでいった。
 毎日コンクール1位の女子高生が透き通るように美しい声で「君が代」を歌い上げた。選手宣誓の力強い声が天高く、グラウンドいっぱいに響き渡る。
 最近、ささいな事でふさぎ込み、投げやりになりがちだった。希望に満ちた選手たちの顔を見ていたら、元気が出て前向きに生きていきたいと思った。
  鹿児島市 馬渡浩子 5015/4/9 毎日新聞鹿児島版掲載

私の新聞遍歴

2015-04-11 10:12:27 | はがき随筆
 子供の頃から、ある新聞社一筋だったが、十数年前、政府寄りの色が濃くなった。その頃、鹿児島市の石橋撤去問題や県の食料費不正支出が浮上し、別の社のT記者が気骨のある記事を書いていたので、T記者のいる新聞を購読する事態に。しかし、T記者が転勤すると、やはりその新聞は肌に合わない。
 たどり着いたのが、毎日新聞だ。当時の防衛庁取材で受賞したり、科学環境部の記者ら頼もしい女性たちが大活躍している。人間味ある福岡賢正記者も私のお気に入り。右っぽい印象の記者が反原発を唱えるのも面白い。ずっと付き合えたらいい。
  鹿児島市 種子田真理 2015/4/8 毎日新聞鹿児島版掲載