はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

恋の季節

2015-04-08 21:44:13 | はがき随筆


 「鳥が来た?」と必ず来客が聞く。妻の依頼でモクセイの木に巣箱を掛けて5年になる。「ないも来ん。しじゅうカラじゃあ」と言うとも皆大声で笑う。
 最近、巣箱の入り口の径を22㍉にすべきだと知り、改築しエゴの木にかけ直した。エゴの実を器用に割って食べるシジュウカラをよく見かけたからだ。
 「お父さん、来てるよ、来てる!」とささやく妻。「敷金も家賃も要らんど! 入居者には手当をくるっど!」と私。鳥たちの恋の季節が来たようだ。もう何組も下見に来る。
 「早いもん勝ちやっど! きっと来なさいねシジュウカラ」
  出水市 中島征士 2015/4/7 毎日新聞鹿児島版掲載

重機の解体技術 感心

2015-04-08 21:35:08 | 岩国エッセイサロンより
2015年4月 7日 (火)

  岩国市   会 員  片山 清勝

 向かいの家が新築のために解体された。重機による解体作業は、一挙に取り崩す荒っぽい作業だろうと思っていた。ところが、間近で眺めてみると、大きな思い違いに気付いた。
 重機が解体する箇所をしっかりつかむと、操縦者はそれをゆっくりと引き寄せる。つかんだ箇所だけが取り除かれ、その周辺まで大きく崩れることはない。
 どの箇所も同じように解体が進む。そこには、計算された手順が操縦者の頭にあるように思えた。土ぼこりが立ちこめる光景を予想していたが、裏切られた。
 解体した残骸は、重機で木材や金属などの種類ごとに分類していく。崩れた土壁の中に埋没している木片まで重機で拾い出す。
 その仕分けのスピードや処理する量は、人の手ではとてもかなわない。 重機は強力な粉砕力だけでなく、人の手に引けをとらない細かな仕分けもやりこなす。重機と操縦者の一
体感を感じ、作業を見飽きることがなかった。
 知っているつもりや、先入観の怖さを反省し、観察することの大切さを強く認識させられた。

    (2015.04.07 中国新聞「広場」掲載)岩国エッセイサロンより転載