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はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

いちすけ号に父思う

2012-11-16 21:12:06 | 岩国エッセイサロンより

岩小HPより

    岩国市  会 員  片山 清勝

 「日本のエジソン」と呼ばれた岩国市出身の工学博士、藤岡市助は、その故郷に中国地方で最初の路面電車を走らせた。

 それは1909(明治42)年から現在のJR岩徳線開通までの20年間だった。この電車をモデルにしたレトロなバスが、岩国駅ー錦帯橋間で運行されている。

 市助の名前をとって「いちすけ号」と命名された。木製のシートや電車に似せた外観は、乗客をタイムスリップさせる。

 また錦帯橋近くの城下町通りでは、軒下すれすれに走るため、車窓からは趣のある古い町並みが楽しめる。

 そんな城下町を走るいちすけ号を撮っていた。すると運転手が右手を上げて軽く頭を下げあいさつしてくれた。

 観光を大きな旗印にする市にとっていちすけ号は大きな存在。その乗務員のちょっとした心遣いが観光客の心象をよくする。

 電車運行開始の年は父の生まれ年。運転手があいさつをくれた日は父の命日だった。偶然ではあったが、きもちよい一日を過ごせた。

   (2012.11.15 中国新聞「広場」掲載)岩国エッセイサロンより転載