はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

毎日ペンクラブ賞

2012-11-20 21:48:47 | アカショウビンのつぶやき


 「毎日ペンクラブ鹿児島」が選ぶ
毎日ペンクラブ賞
の表彰式がありました。

受賞作品「あら、そうなの」をご紹介します。

 母の入院中は、7時半、11時半、4時半には家を出て、1時間ほど相手をしていたので、一日はすぐに過ぎました。
 2ヵ月後、ようやく退院した今、ツツジ、マンサク、コデマリなど満開です。雑草を抜いていると「いたの?」と声をかけられました。
 「女性見回り隊」゛できたそうで、老々介護をしているから、その対象になったかな、と思っていたら、黄色いジャンパーと帽子を手渡されました。
 「ご協力をお願いしますね」
 大好きなヤグルマソウが笑っているように揺れていました。
  阿久根市 別枝由井 2012/4/24 毎日新聞鹿児島版掲載


社会性のある話題をユーモラスにつづった点が評価されました。

毎日ペンクラブ鹿児島 秋の研修会

2012-11-20 20:41:42 | アカショウビンのつぶやき


 鹿児島市で、秋の研修会がありました。



受付ではいつものメンバーが笑顔でお迎えです。


研修会では「毎日ペンクラブ賞」の表彰式と講演会と言う形で開催していましたが、
今年は表彰式と各地区の代表による発表会となりました。

「毎日ペンクラブ賞」は毎日ペンクラブが選ぶもので、
選者が選ぶ月間賞以外の作品から、2点が選ばれます。
今年は、B.由井ちゃんとI.昭ちゃんの作品が選ばれました。

昭ちゃんは欠席でしたが、由井ちゃんは、エッセイのテーマである、
ご自身の介護生活の一端を明るく話してくださいました。






各地区の発表は鹿児島・離島地区からMさん、北薩地区はKさん、
大隅地区は不肖私が発表することになりました。





私には課題が出され、毎日ペンクラブ結成当時の話を!
との依頼があり、結成までのエピソードや、
事務局長として関わった六年間の思い出に残るあれこれをお話ししました。

久しぶりに当時の資料を開いてみると、
12年前胸躍らせて集まった準備委員の方々や、
当時の支局長の暖かいご支援を思い出し
感慨ひとしおでした。



会終了後、各地区のミーティングです。



北薩はメンバーも多く、活発に活動しています。



鹿児島市・離島地区の皆さんです。



大隅地区は四人…ちょっと寂しいなあ。



北薩のMさんは旅するチョウ、アサギマダラを見せてくださいました。

もう一人の私

2012-11-20 17:46:09 | はがき随筆
 時は巡り、きょうは日曜日。あれから1週間。毎日新聞の「日曜クラブ」が楽しみだ。
 なかでもスリザーリンク。きょうは難易度1。私の出番の日。手順通りやっても、てこずることがある。こうかな、いや違うと鉛筆と消しゴムで格闘。数分か数十分で線がつながると、うれしくて赤くなぞって「できた!」と独り言。幸せの一瞬。この達成感がたまらない。安上がりの幸せ感に浸れる私を、満足そうに見ているもう一人の私がいる。
 めったにない難易度1を、見逃さぬようにしなくてはと、肝に銘じている。
  霧島市 口町丸子 2012/11/20 毎日新聞鹿児島版掲載

シクラメン

2012-11-20 17:38:22 | はがき随筆
 1月に深紅のミニシクラメンを頂いた。ふと、シクラメンの種が見たくなり、一本だけ花柄を摘まずに様子を見ていた。5月になると勢いも失い、一本の花茎の頭頂は丸い実になった。乾いた実の表皮をはぐと、ころころした小さな不ぞろいの黒い種、ちょっと拍子抜けした。
 この種、芽が出て花が咲くか試したくなった。種はなかなか発芽せず、9月に芽らしきものが見え、5日経て4㍉程のハート形の葉になった時はうれしかしった。球根から花が咲くまで3年かかると聞く。花が咲くまでともに元気でいたい。今、葉は2㌢ほどに成長している。
  出水市 年神貞子 2012/11/19 毎日新聞鹿児島版掲載

恩師に感謝

2012-11-20 17:31:54 | はがき随筆
 私が7歳の時、父の貴重品である書道用大筆を遊び道具にしたので父が激怒した。
 「誰だ」。私に向かって叱責。「怖い」。夢中で土間に飛び降り、夕暮れ時の庭に逃げた。
 「どこへ?」。床の間の近くの雨戸が開いていたから、部屋に上がりほっと一息。私の早業に怒り心頭の父が笑顔になった。
 その後、中学・高校で父から書を習い、さらに日展審査員のK先生に師事。大筆は私の必要品となり、現在まで数多い生徒たちとの出会いがあり、恩師はすでに他界。
 思い出は脳裏に深く刻まれ、感謝の気持ちでいっぱいだ。
  肝付町 鳥取部京子 2012/11/18 毎日新聞鹿児島版掲載

新燃岳

2012-11-20 17:23:51 | はがき随筆
 あの度肝を抜いた新燃岳の噴火から1年半、どうしてもこの目で確かめたくて登山解禁を待って韓国岳に向かった。先を行く夫から「煙が見えるよ」の一声に、へばりそうな心体に気合いが入り頂上へ立った。見えた!
 黒いフライパンを伏せたように盛り上がり青空にのろしを上げている。エメラルドの池はうそのように跡形もない。ミツバツツジや中岳への道も灰に覆われている。過去に新燃岳を一周した興奮がよみがえり、貴重な経験だったことを改めて知る。山は元気になれるから穏やかでいてほしいと願いつつ下山した。
  薩摩川内市 田中由利子 2012/11/17 毎日新聞鹿児島版掲載

駅跡の風景

2012-11-20 17:17:49 | はがき随筆
 テレビで、トピックスニュースを何気なく見ていると、見覚えのある田舎の景色が映っている。
 説明によると、駅跡を整備して地域活性を進める一事業とのこと。
 48年ほど前、伊集院の高校に通学するため、毎日通ったプラットホームである。
 晴れの日、雨の日も、学生服にカバンを持って、待っていた駅のプラットホームである。
 南薩鉄道の古い型のディーゼルカーに乗るために通った、懐かしい思い出のいっぱい詰まった駅跡である。
 その駅名は吉利駅。
  鹿児島市 下内幸一 2012/11/16 毎日新聞鹿児島版掲載

旅するチョウ

2012-11-20 17:11:45 | はがき随筆


 数年来、庭に来たアサギマダラに印を付けて放している。チョウの大好物のフジバカマを植えていると勝手にやって来るので、それを捕らえるのである。
 毎年平均50頭ほど来るが、印の付いたのは来なかった。しかし、10月22日、くっきりと印の付いた1頭が花にとまった。はやる気持ちを抑えて網で捕り、写真に写し印を付けて放した。ついでに知人に紹介してもらった徳島のOさんに電話した。印から8月22日に久住でFさんが放したものと分かった。長旅の末に、また印を付けられたチョウ。今年来た他の50頭共々、無事に南に渡れただろうか。
  薩摩川内市 森孝子 2012/11/15 毎日新聞鹿児島版掲載

シレイトク

2012-11-20 17:04:38 | はがき随筆
 「家庭にクーラーがないんでみんな困ってんですよ」と知床遊覧船々長。8月21日午前、道東の気温は既に30度を超えていた。船べりの風が心地よい。
 連続した断崖絶壁に鳥たちのコロニーが次々に現れる。「あっ、オジロワシ!」。岩場に羽を休めた雌雄の姿があった。
 温泉の滝、カムイワッカの滝つぼは深い緑色だ。ウミネコの集団が入浴しているように見える。シレイトク<知床>はアイヌ語で地の果ての意味だという。シレイトクは鳥たちの楽園だった。見上げると、シレイトクの空はやさしく、もう秋の気配に満ちていた。
  出水市 中島征士 2012/11/14 毎日新聞鹿児島版掲載

約束

2012-11-20 16:56:30 | はがき随筆
 携帯の着信音。「抗がん剤が効かなくなってさ。女房と水入らずで信州の温泉だよ」。がんは他の臓器へ転移していると聞いた。今のうちにあちこち旅するとも。「だってさ、たまには落ち込むだろう?」「ないね」。こともなげに言う。「若い時さ、土地を買いたいって、オマエに借金申し込んだことあったよな。頭金の50万」。忘れたと友は言う。実際は借りずに済んだ。「本当にありがとな。今でもずっと感謝しているよ」。遠く離れて住むが、やつのことは忘れない。「この次また会おうや」。果たせるか分からない約束をしてケータイを切った。
  霧島市 久野茂樹 2012/11/12 毎日新聞鹿児島版掲載