はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

くだらぬ夫婦

2012-02-05 16:54:36 | はがき随筆
 惰性で夫と同居し続けている。二人で余生を楽しみたい……。夫は物静か。私は超ガチャガチャ。毎日、何か面白いことはないかとキョロキョロ、うろちょろしている。面白いことが見つからないと夫に突っかかっていく癖がある。
 ぶしつけに「あんたは5段階の3」と言った。何の評価か、ちんぷんかんぷん。
 夫は「はて」と思ったようだが、それでも「3で十分。ありがとう」。「私は?」。ニヤニヤあやふや。へたに答えると後でややこしくなるぞと顔に書いてある。いつものパターン。あんたはエライ。わたしゃバカ。
  鹿児島市 馬渡浩子 2012/2/5 毎日新聞鹿児島版掲載

幻の滝

2012-02-05 16:49:09 | はがき随筆
 褐色の岩肌から流れ落ちる滝は、マイナスイオンをたっぷりと含んだ空気となり、周辺の樹木ととけ合い、別天地の景観である。
 霧島市には犬飼の滝、丸尾の滝、千里の滝など有名な滝が多いが、ここは隠れた幻の滝である。
 なぜならば、そこにたどり着くには橋のない川を渡らなければ行けないのだ。スリル満点な飛び石を越えてから約300メートルも歩かねばならないのだ。
 その滝の名は「轟木の滝」なのだ。皆さん探検気分で、どうぞ挑戦あれ!
  鹿児島市 下内幸一 2012/2/4 毎日新聞鹿児島版掲載

キンカン豊作

2012-02-05 16:13:10 | はがき随筆






 「今年のキンカンはおいしいわよ。ほら、食べてみて」
 カミさんが両手にもぎたてのキンカンを持ち、口をもぐもぐさせてやってきた。私も一つ口に入れた。粒もかなり大きく、そしてジューシーだ。小粒で数も少なかった昨年とは大違い。裏の従姉妹の木も鈴なりである。従姉妹の家の木は大きいため、上のほうはカラスの狙いどころだ。10羽近くで実を取っては屋根の上で突っついていた。
 新年早々は種子島とも思えない寒さが続いているが、この寒風の中でパフィオもサザンカも元気に咲いている。寒いといってもここは南の島なのだ。
  西之表市 武田静瞭 2012/2/3 毎日新聞鹿児島版掲載

氏神初参拝

2012-02-05 16:06:35 | はがき随筆
 昔、人気のない山地に、夫の祖先が住んでいた。清い水がわき出る岩の斜面に氏神が祭ってある。その後、住居を人々の多い集落へ移すことに。氏神は宮司に「ここから動かない」と。現在の自宅から遠くなり、時折参拝。大晦日にしめ縄、米、みかん、塩、餅、酒を供えた。新年に初参りしたら餅を見事にキツネかタヌキが平らげていた。
 喜んで食べたか皿だけ。「祝い餅を食べて良かったね」。今年も元気で跳びはねかけ回り暮らせるだろう。帰路、七草用のクレソンを摘む。夕暮れが迫り、寒風吹きすさぶ山奥から犬の遠吠えが聞こえていた。
  肝付町 鳥取部京子 2012/2/2 毎日新聞鹿児島版掲載