国立トレチャコフ美術館展

2009-10-05 18:03:14 | 塾あれこれ
昨日、行ってきました。

有名な『忘れえぬ女』が目玉です。

なんて印象深い絵なんでしょう。
若い女性の美しさ、強さ、そして少しイジワルなところまで
生き生きと描かれ、しかも後に訪れる20世紀をどう生きたか
まで思いをいたさせる・・有名になるはずです。

圧倒的な女性像の向こうにうっすらと描かれた建物の奥行き
これが絵をいっそう豊かにしていました。


それ以外にも、名前を初めて見るような画家ばかりでしたが
どの人も上手い。

19世紀の初め頃の作品は写実的かつ物語的。

こういう文化であり、たいへんに喜ばれたのでしょう。
映画のワンシーンのような絵ばかりです。

あるいはロシアの深い森や、一面の冬景色。

ソ連などで映画を撮ったアンドレイ・タルコフスキーや
ニキータ・ミハルコフのような人たちのルーツです。
古きよきロシア。

19世紀後半には印象派風の作品もありますが
多くは写真と見まごうほど写実的です。


『忘れえぬ女』が1883年。

帰宅して明治時代の日本を調べてみたら
黒田清輝が帰国し日本の洋画に新しい風を吹き込む
のが1893年でした。
『忘れえぬ女』はその10年前、当時のロシア美術の
レベルは高かったのですね。

日本が洋画を始めたばかりだったから・・
19世紀前半は浮世絵の国でした。


今回の絵は多くが豊かな自然と一種の調和をしているので
我々にもなじみやすい世界になっています。

とある小さな絵は溝のような狭い川に渡した
素朴な木の橋を描いています。
いいなー。
美術展を見て欲しくなったのは久しぶりのことです。
買えるわけはないのですけれども。
(熊谷守一も欲しかった)


有名な作家の肖像画も多くありました。
写実の力があるので、人物像が伝わってくる感じが
より強いものになっています。

もちろん写真のような技術だけでは肖像画は不十分で
画家の目が大切なのですが、技術も大切、
という当然なことに気づかされます。


今回で一番新しい絵は19世紀の最後に描かれています。
あと20年しないうちにロシア革命。
そしてアバンギャルド。

ピカソやマチスは20世に初頭からすごい世界を切り開いて
いますから、いかにも時代遅れな写実主義ですが
逆にロシア革命や20世紀美術のインパクトは大変なものが
あったろう、と改めて思いました。

(例:ピカソ『アヴィニョンの娘たち』1907
   マチスの輪になって踊る絵も同じくらいでしたね。
   ↑あと調べます)