あの本屋今もあるのだろうか

2009-02-09 18:15:44 | 塾あれこれ
辺見庸がTVで昨年の秋葉原事件などを語り
アルベール・カミュの『ペスト』を引用して
おられました。

これこそが正しい引用であり、またアナロジーが
成立している典型であると思いました。

カミュが『ペスト』で描いた人間社会の無力さと
それでも最後は人間だというメッセージから
辺見さんは現代日本の人間がいかに荒んでいるか
人間同士の関係や社会のありかたについて
無関心になってしまっているかを
深い絶望感とともに、けれども最後はやはり人間の意
思を信じるしかないという信念の強さを滲ませながら
少し不自由そうな口でぽつぽつと話されていました。

人間として生まれてきて、そのことを考え何らかの
生き方を選択しないでよいのだろうか、と無責任に
なってしまったかに見える多くの日本人に向けて
けっして声高にではなく、小声だけれどしっかりと
悲観的なことは承知の上で、まるでカミュのシシュ
ホスの神話を思わせる口調で(君らはどうか知らん
けれど、オレはこう思うよ)と限りなく続くリハビリ
にも似た発信をされていました。

因みにペストは今でも治療法がないと思います。
鼠を駆除するしか対処法がない大変に怖い病気です。
ネコを大切にしましょう。


六巻までで買うのを止めてしまったカミュ全集を
引っ張り出すと、第二巻『異邦人・シーシュポスの神
話』の箱の中の本にカバーがしてあるのです。
本屋さんでサービスにつけてくれるあれです。

箱装の中にカバーをつけてくれてましたっけ?
小川書店とゴム判があります。
たいへん不器用な私が自分でカバーをつけることは
ありえないのでやはり当時はそんなサービスをされ
ていたのでしょう。
文庫本しか買えなかったのでハードカバーや箱装は
よく分からない世界です。

ただ、その本屋がどうもウロ覚えなのです。

外神田の小川書店・・どうだったかなあ。

他の本にはカバーがないので第二巻だけをそこで
買ったのでしょうね。
1972年10月5日発行の本ですからその頃
勤め先から地下鉄で一駅ほど離れたそこで買った
のです。

今はもうなくなっているでしょう。


本屋さん、良いものでした。
ネットで買うのはやはりさびしい。

あのころはドコソコの本屋で買ってたなあ、という
懐かしい思い出が本には必要です。
本屋のカバー、ほとんどを捨ててしまったけれど
今思えば勿体ないことかもしれません。

なおこの第二巻、カミュの写真は黒ネコを抱いた姿
です。似合うんだなあ。。