JAZZを聴きながら ふたたび

恥も顧みないで再々開、よろしければお付き合いを

毒か薬か

2008年07月18日 | a-c

先日Mさんのお店を手伝っていると、バイトの女の子が
「バブさん、あれなんとかしてください。」
何かと思えば、灯りに誘われて店に飛び込んできたカミキリムシです。
この時期になると虫の発生は仕方のないこと、そっと捕まえて、
「ほら」ってやったら、「キャー」って
「お客さんに聞こえるような声出すんじゃないよ」
若い女の子にそんなことをする私が悪いんですけどね(笑)

ところで、小さい子供って虫関係をあまり苦手としませんよねぇ。
いくつくらいから「虫が苦手」ってヤツが増えてくるんでしょう?
まぁ、女の子の場合、そこに可愛さを演出するというしたたかさも、かいま見られたりもするのですが・・・・
かく言う私も、いつの間にかあまり虫は得意じゃなくなっています。クワガタやカブトムシ、テントウムシやセミ、トンボ、バッタくらいまでは今でもナンチャナイですが、毛虫やガといった類はどうも・・・そうそうゴキちゃんもいけません。
「上京して始めて見た、音をたてて飛ぶ巨大ゴキブリの姿、あれのせいだな」
と勝手に思ってはいますが、それだけが原因じゃないでしょうね。

明日からこのあたりの子供たちも夏休みが始まります。昔、そんなことやりぁしないのに『昆虫採集セット』が欲しい一心で、「今年は昆虫採集をやる!」なんて言ったことありませんでした?
あの注射器、それに赤と緑の薬品、何故か私には心引かれる存在でした。


ネット上で公開されていた画像を拝借しました。

今はもう販売していないんでしょうね。よく考えると注射器はいっぱしの針が付いていて危ないっちゃ危なかったですもん。薬はたしかメタノールとホルマリンだったはずです。
私など昆虫を捕まえる前に、花やら木やらにあの薬品を全部注射しちゃって、本来の目的には使わずじまいってなことありましたし、(笑)
父が釣ってきた鮒にあの薬品を注射して、たしか学研の科学かなにかの付録に付いてきた『解剖セット』で解剖したなんて、今思うとじつに残酷なことをした覚えもあります。
赤と緑の薬品、注射器を手にすると、何だか「禁断の毒薬を手に入れた」的高揚があったのだと思います。それでも、あの頃の子供は「他人に絶対にやってはいけないこと」を理解していたのでしょう、大きな事故や事件につながったという話は、たしか無かったですよね。

『毒薬』といえば、
「埼玉保険金殺人事件」の八木被告の死刑が確定したそうですが、あんな裁判の判決を裁判員として下せるかどうか、ちと不安にも思いましたし、「毒殺の物証というのは現代でもなかなか難しいものなんだなぁ」とも感じました。
考えてみれば昔から『毒殺』というのは、謎の多い殺人でありましたし、それ故にいろんな嘘か誠か分からないような話も多くありましたよね。
そうそう、17世紀のヨーロッパには、「和歌山のヒ素入りカレー事件なんて目じゃないわ」ってな、ブランヴィリエ公爵夫人、マリー・マルグリット・ドーブレという恐ろしい毒殺魔がおりましたっけ、ご存じですか?

もともとかなりの好色だったというマリーは、夫ブランヴィリエ侯が外に女を作って滅多に家へ帰らなかったことを良いことに(外に女を作る旦那も旦那ですけど)、日ごと情事を繰り返していたそうで、そのうちそんな男の一人、騎兵隊将校のサント・クロワに熱を上げ、二人とも大好きな賭博にまで通うようになります。
当然の結果、借金は雪だるま式に増え、にっちもさっちもいかなくなりますわな。二人は悩みました、「なんとか金を作らにゃ、好きな博打も打てなくなるぜぇい」てんで、考えついたのが司法官である父の殺人、つまり遺産をせしめようというもの。
ただし、いかにこの時代でも、元気な人が突然倒れて死ねば怪しまれるのは必定。そこで毒物を徐々に与えて自然死に見せかけようと計画したわけです。(なんか、現代の事件とよく似てますけど)
ところが、何を、どの程度、何回に分けて与えたらよいものかがわからない。
いやはや、女性は怖いですねぇ
「ならば、あたしが研究するわ」てんで、マリーが行った研究が凄かった。

「具合はいかが?」
慈善病院に入院している貧しい病人をちょくちょく見舞う、心優しい高貴な婦人がおりました。
「このお菓子を食べて元気になってね」
いつも優しくいたわってくれるその女性こそ、マリーその人であります。
彼女の持ってくる見舞い品には、密かに『ヒ素』が(シャレじゃありませんよ)混じっていたのです。
マリーは、誰がどの程度の『ヒ素いり食品』を食べると、どうなって、いつ死んで、死後の状態はどうか・・・・・・幾人もの患者を利用して研究したんですねぇ
これで彼女は『ヒ素のスペシャリスト』となったわけです。

スペシャリストは、すぐに計画を実行へと移しました。
父の面倒を見るふりをして、少しずつ『ヒ素』を与えていく、案の定父は弱り、死んでいきました。周りの人達も老衰だろうと何の疑いも持ちません。
「やったわ!」
ところが、目的の遺産はほとんどが二人の弟のところへ
「へたこいたぁ~~~」
しかし、そこは『ヒ素のスペシャリスト』、こんどはサント・クロワの従事を弟たちの所へもぐり込ませ、二人とも毒殺してしまいます。
短期間に身内三人を亡くしたマリーは、哀しみを装い、
「今度こそ、間違いなくやったわ、またサント・クロワと、あれしたりこれしたり・・・ムフフ」てなもんですわな。

じつは、ここで終わっていれば、この毒殺事件は『完全犯罪』に終わったのであります。
ところが『ヒ素のスペシャリスト』は『ヒ素遊び』を覚えてしまったんですねぇ
気に入らない女中を殺し、頭が悪く器量も悪い長女も、誘惑ししておいて飽きが来た青年も、ついには夫ブランヴィリエ侯まで・・・・・
ところが、女の怖さにやっと気付いたんでしょうね、恋人のサント・クロワがブランヴィリエ侯に解毒剤を与えます。
ある日、マリーの『毒物実験室』の近くでサント・クロワが事故死してしまいます。ここから『ヒ素のスペシャリスト』の存在が徐々に明らかになっていくわけでして、

結局最後はマリーに疑いがかかり、取り調べ(というよりは、当時のヨーロッパですから拷問ですね。話によれば、裸にされ、足を開かされ、男達の目にさらされたり、水槽いっぱいの水を飲まされたりと凄いものだったらしいです。)に耐えかねたマリーが全てを自白、パリのグレーヴ広場で処刑されたのでありますが、処刑台で彼女は
「みんながしたい放題しているのに、どうして私だけが罪を受けなければならないの?」
と言ったとか言わなかったとか。

(この話を基に書かれたジョン・ディクスン・カーの『火刑法廷』なんていう小説がありましたよね。)


まっ、今も昔も、身勝手な考えが大きな罪を生むのだということでしょう。それにしても恐ろしい女性だぁ。

あらら、『昆虫採集セット』の話が、何故か『ブランヴィリエ公爵夫人物語』にまでなってしまって、長文になっちゃいました。(笑)
ともかく、ちょっと危ない『昆虫採集セット』も、『ダガーナイフ』も、『毒物』さえも、所持する人の良心こそが頼りであって、どんどん規制が増えるということは、その頼りが消えつつある証でもあるのでしょう。
毒だって使い方一つで薬になるっていうのにねぇ、あ~あ、いやだいやだ。

さて、今日の一枚は、どさくさにまぎれてドン・チェリーです。(笑)
べルリン・ジャズ・フェスティバルでのライブ盤です。
「前衛トランペットの雄、ドン・チェリーがヨーロッパを代表するフリー・ミュージシャンとニュー・ジャズ・サウンドに新たなパルスを生み出した歴史的名盤」
てな紹介を何かで読みましたが、よく分からん説明ですよね。
ともかく「いろんな民族音楽のリズムとジャズの融合」が一つのテーマであるのでしょう。
でもねぇ、さすがの私も「これがジャズか?」と訊かれると困るような感じもあります。いやいや「これがジャズ以外なら何なんだ?」と居直るかもしれませんけど(笑)
つまり、ジャズだの何だのと考える時点で、このアルバムのコンセプトからは外れているということなのかもしれません。

メンバーと使われている楽器の多さを見て「こりゃダメだ」と思われる方は、無理して聴かなくとも良いでしょう。
ただ「ジャズだの民族音楽だのそういったことにこだわらず、サラッと行ってみよう!」という方は、ぜひともお聴きになってみて下さい。怪しい魅力があるかも知れませんよ。
さて、この一枚は、あなたにとって『毒』か『薬』か

ちなみに「ガメランという楽器は何なんじゃいな」と思われた方。
インドネシアはバリの踊りの後ろで叩いている打楽器。でかくて豪華な「ガムラン」(インドネシア語の「ガムル=たたく」が語源)の兼価版として作られた楽器だそうで(他にも説はあるらしい)、ムチャクチャ音の良い竹琴のちっちゃいヤツ、もしくは、ともかくインドネシアで使われている小さめの打楽器だと思えばいいのかなぁ???

ETERNAL RHYTHM / DON CHERRY
1968年11月11,12日録音
DON CHERRY(cor,fl,gamelan,perc) ALBERT MANGELSDORFF(tb) EJE THELIN(tb) BERNT ROSENGREN(ts,oboe,cl,fl) SONNY SHARROCK(g) KARL BERGER(vib,p,perc) JOACHIM KUHN(p) ARILD ANDERSEN(b) JACQUES THOLLOT(ds,gamelan,perc)

1.ETERNAL RHYTHM PART
2.ETERNAL RHYTHM PART

おまけ、
昨晩の『我が儀式』の記事に、同僚から「コルトレーンとセロリには何か関係があるの?」との質問を受けました。
まったく関係ありません。
この儀式を真面目に毎年行っていた高校時代、私は下宿生活の身でありまして、1.近くにあったお店が八百屋だった。2.お金がもったいなかった。以上の理由で、セロリになっただけであります。


準備OK! 何の?儀式の(笑)

2008年07月17日 | a-c

「今日は、晩飯はいらんよ」
「何?また飲んでくんの?」

まったく、何も分かっちゃおりません。
本日7月17日は、言わずと知れたジョン・コルトレーンの命日であります。
私にとっては年に一度の『我が儀式』その日なのでありまして、今日ばかりは寄り道も浮気(?)もせずに真っ直ぐ帰って来る日です。
それじゃあ何で晩飯がいらないか・・・・・・

いやね、今年の『我が儀式』は、かつて私がやっていたスタイルに戻してみようかと思いまして、先日申したとおり、酒は「サントリー・ホワイト」、つまみはセロリ一本に塩だけ、他は何も口にしないという・・・・・
「でも、歳も歳ですし、暑い一日でしたから・・・・やっぱそれはキビシーかな???」
「何を言っておる、自分で決めた事であろうが!」
心の中の私に戒められ、準備完了です。(ただし「ビールの一杯だけは許す」と心の中の私も言ってくれましたので、帰宅後すぐにビール一杯だけは飲みました。....笑)

まずは、鎮座ましますコルトレーン大明神に口開けの一杯を奉り、次に我がグラスへ一杯。深く祈りを捧げた後、クイッと一気に飲み干します。(笑)
ここで、レコードに針を落とし、あとはただただスジも気にせずにセロリを喰らいつつ、一人グラスを重ねるのであります。

「開始予定時間、午後8時半」

その前に更新しなければと、今こうしてPCに向かっているわけですが
「バブさん、コルトレーン好きは分かったけど、コルトレーンの中ではどの演奏が一番好きなの?」
「今日そんなことをやるんだよ」と話した同僚に訊かれました。
この質問は、私には最も難しい質問でありまして、
たとえて言うなら、フルーツ好きが「苺が好きなの?ミカンが好きなの?リンゴが好きなの?ブドウが好きなの?・・・・・????」って訊かれるみたいな。(笑)
そりぁフルーツ好きだって「ドリアンが嫌い」って人はいるかも知れませんよ。でも、そんなのフルーツ好きにしてみれば「ナンチャナイ問題」じゃないですか。
「ドリアン一つ嫌いだからって、フルーツ好きじゃないと言われるのは心外だなぁ」みたいな(笑)

あれ?何の話でしたっけ?そうそう、コルトレーンの最も好きな演奏でした。
それはありません。(キッパリ)
ほとんどが一番好きです。(これもキッパリ....笑)
それじゃあ、ドリアン的存在があるか?でありますが・・・・
「そうですねぇ、『ガレスピー時代』これはあんまり意識して聴きませんねぇ」
って、これじゃ答えになりませんよね。
前記マイルス、モンク、後期マイルス、プレスティッジ、アトランティック、インパルス・・・・・
やっぱりドリアンもありませんね。(笑)

おっと、イケンイケン、8時半が近づいてまいりました。
結局、その時代時代のコルトレーンが私に囁いてくれる精神は、私にとって他にはけして無い存在なんだと思います。(たぶん)
私にとって今夜は、そんなコルトレーンと二人きりで語り合う、そんな大切な夜なのでありますよ。

さて、今日の一枚は、当然ジョン・コルトレーンです。
1957年という年は、コルトレーンにとって最も重大で最も変化に富んだ年であったに違いありません。一度マイルスのグループをクビになり、モンクから多大な影響を受けた年、初リーダーアルバムも出して・・・・・・

この年の10月、住まいとしていたホテルからマンハッタンの西103丁目にあった貸しアパートへ家族とともに移り住みます。これは、彼の並々ならぬ決心を示すものでりました。
何故なら、そのアパートの角には居酒屋があり、帰宅時には必ずその前を通り過ぎなければいけません。これは、酒をキッパリ止めたことを自分自身に常に言いきかせるためだったそうです。
考えてみると、今日、コルトレーンにウイスキーを捧げるというのは、とんでもない事なのかもしれません。甘いお菓子の方が喜ぶでしょうけど、まっ年に一度ぐらいは良いじゃありませんか、なんてね。

今日のアルバムは、そんな大変革の年、折々のコルトレーンを聴けるアルバムです。
以前も言ったことですが「酒を飲むときには「BALLADS」が良い」という方がとても多いんですけど、私はこのアルバムがじつに良かったりします。

今日の予定はこのあたりから聴き始めて「GIANT STEPS」「OLE」「CRESCENT」「THE JOHN COLTRANE QUARTET PLAYS」「LIVE AT THE VILLAGE VANGURD AGAIN !」「THE OLATUNJI CONCERT」あたりを聴く予定でいます。

LUSH LIFE / JOHN COLTRANE
1957年5月31日, 8月16日, 1958年1月10日録音
JOHN COLTRANE(ts) DONALD BYRD(tp) RED GARLAND(p) EARL MAY, PAUL CHAMBERS(b) ART TAYLOR, LOUIS HAYS, AL HEATH(ds)

1.LIKE SOMEONE IN LOVE
2.I LOVE YOU
3.TRANE'S SLOW BLUES
4.LUSH LIFE
5.I HEAR A RHAPSODY


私のヒマとはヒマが違う

2008年07月15日 | s-u

母に「やっと梅雨入りか」と言わしめた天気も昨日一日だけ、今日は夏空が戻ってきました。ただ、日陰に入れば風は爽やかで、昨日より不快指数は低かったんじゃないでしょうか? 
えっ?こっちは暑くてたまらなかったって?
まぁ、まぁ、このあたりで唯一誇れるのは「冬暖かく夏涼しい」という季候ですので、充分うらやましがって下さい。(笑)

そんな夏空の今日、私は相変わらずの寝不足気味でありまして、いえね、体調不良で寝られなかったのでも、呑んでいて寝られなかったのでもなくて(お酒は飲んでいましたが)、昨晩はTVを見ていて寝られなかったという、私としてはじつに珍しい寝不足なのであります。

昨年の暮れだったでしょうかNHKで、鬼才、実相寺昭雄の追悼番組が放映されました。(亡くなったのは、2006年11月29日)
じつはこの時、私はこの番組を見逃しておりまして「見たかったなぁ」と思っていたら、昨晩『ハイビジョン特集』で放送されたのです。ラッキー!

ただし、放送時間帯はMさんのお店のヘルプでしたので、後でゆっくり見ようと録画を予約していったのですが、ゆっくりとはいきませんでしたね。12時過ぎに帰宅してシャワーを浴び、プシュー、トクトクトク、グビー、カッー!とやったついでに見始めちゃったんです。これが寝不足の原因、文句は言えません。(笑)

実相寺昭雄というと、映画・ドラマの監督であり、作家であり、脚本家であり・・・・
じつをいうと、私はそれほど追っかけていた方ではないのです。
もちろん年代が年代ですから、ウルトラマンやウルトラセブン、怪奇大作戦といった番組での彼の監督作品はリアルタイムで見てはいたはずですし、かのウルトラセブンと宇宙人(メトロン星人というんだそうですが、あまり興味は無いもので)が、ちゃぶ台越しに話をする名場面も記憶にありますよ、でもそれが何ていう監督の作品だったかまでは感心ありませんでしたもんね。
それにほら、官能小説やエロ映画には全く興味のない人でしたから、あ・た・し(ほんとかぁ!?)
始めて実相寺昭雄という人を認識したのは、申し訳ない、映画『帝都物語』だったかもしれません。

それでもちょっと興味があって見た昨晩の『肉眼夢記~実相寺昭雄異界への招待~』は、なかなか面白い番組でした。
ナビゲーターは、京極堂シリーズの京極夏彦氏、(そうかぁ、『姑獲鳥の夏』の監督は実相寺昭雄だったもんなぁ)彼が実相寺昭雄の脳の中に迷い込み、脳の中にあるちゃぶ台の部屋、映像の部屋、蒐集物の部屋、エロスの部屋、音楽の部屋を巡っていくという構成。

なるほど「いかにもいかにも」といった番組でありました。
しいて難を言えば「真面目な優等生が、無理矢理、不真面目な天才劣等生の真意を探る」的な違和感は感じましたが、これもNHKらしさではありましょう。

内容を細かくお話ししていると、どんどん長くなってしまいますし、なにより、見ていない方に教えちゃったら、私が寝不足にまでなって見た苦労が報われませんから、教えて上げません。(笑)
いやらしく、気になった言葉を三つだけ上げておこうかな
「映像を放棄することから 作家内面の観光を取り払わねば、」
「歌詠みを 羨ましきと 野を駆ける 歌詠めぬ身の 冬の汗かな」
「所詮、人生ヒマつぶし」

私のような「いつもヒマばかり」とは、全く違う重い意味を含んでいそうで、見終わった私は、まだ未読の彼の著書『闇への憧れ』を何としても探して読んでみたいと思ったのでありました。

さて、今日の一枚は、トミー・タレンタインです。
スタンリー・タレンタインの実兄トミーが、おそらくは唯一残したリーダー・アルバムではないでしょうか?(私の知るかぎり)
とはいっても、実質はマックス・ローチ・クインテットのアルバムといっても良い内容です。
ブルーノートに残る弟との共演盤等々では、さほど「凄い」と感じるトランペッターとは思いませんし、弟とは逆にその後ジャズ・シーンから離れていったトミーですから、印象はじつに薄いトランペッターです。
でも、ここでの彼はじつにいい、よどみない美しい音、マイナー曲の「GUNGA DIN」など秀逸だと思いますよ。(この透明さが特徴の無さにつながっていったのかなぁ?)

一時は「幻の名盤」なんて呼ばれていましたけど、CDでもお目にかかったことがあるので今ではそうでもないのかも?
ともかく、マックス・ローチ・クインテットの代表作の一つだとも思います。

TOMMY TURRENTINE
1960年1月19日録音
TOMMY TURRENTINE(tp) STUNLEY TURRENTINE(ts) JULIAN PRIESTER(tb) HORACE PARLAN(p) BOB BOSWELL(b) MAX ROACH(ds)

1.GUNGA DIN
2.WEBB CITY
3.TIME'S UP
4.LONG AS YOU'S LIVING
5.TOO CLEAN
6.TWO,THREE,ONE,OH!
7.BLUES FOR J.P.

追伸、

先日、パーカッションニスト平子久江さんを招聘した我が友人が、こりもせずにこんどはソプラニスタ岡本知高さんを呼ぶんだそうで、さすがに前回の招聘に学んだことは多かったようで、昨日からチケットを販売しだしたそうです。(前回は販売開始が遅すぎたよ、ほんと)
さらに主催を地元テレビ局にするなど努力も多いに感じられますし、岡本さんが彼の後輩ということもあって、「かなり気合いの入った演奏を聴かせてくれるはず」と自信満々でおります。
お時間と興味がございましたら、ぜひともお聴きにいらしてみて下さい。
詳細は以下の通りです。

日時:2008年11月1日(土) 会場13:00 開演14:00
会場:いわき芸術文化交流館アリオス 大ホール
入場料:一般5,000円(ペア券9,000円)学生席2,500円
問い合わせ先:いわきアーツ 0246-88-6848
出演: 岡本 知高 
(オフィシャルHP:http://www.sopranista-okamoto.com/blog/archives/date/2008/05/
   ピアノ 榎本 潤
   その他、地元高校生選抜者との共演も予定


素直な心は油絵の具に染められて・・・

2008年07月14日 | d-f

今日は一日、雨が降ったり晴れたりとハッキリとしない天気でした。母などは
「やっと梅雨入りか」
なんて、言っておりましたが、この雨が多少は農家のお悩み解決になったのでしょうか?

昨晩は『至福の試聴会』で、なんやかやと午後から飲み通し。K君と仕入れてきたジャック・ダニエルも5分の1を残すのみとなってしまいました。
「今夜は営業してまっせ。ビールが旨いぜぃ!」
と、れいのバーのママからのメールが入ったものの、さすがにこれにお答えするわけにはいきませんでした。(笑)

飲み残しのジャック・ダニエルの瓶を見ていてふと思ったのですが、最近の洋酒の瓶ってミョーに安っぽくなったように感じませんか?
いやいや、もちろん私が安酒ばかり飲んでいるせいもありますけど、昔はもっと重みのある瓶だったような・・・・・・

あはははは、それは値段から受ける感覚が多いに関係しているんでしょうね。
例えば、テネシー・ウイスキーの代名詞のように言われるジャック・ダニエルを、私が始めて飲んだのは、大学2年生の時だったと思います。(どう考えてもこの時点で二十歳ですから、それ以前に飲んでることじたい、あり得ないはずなんでありますが・・・)
そうそう、神奈川県は大和市にあった『J.○』というお店、前にお話ししましたよね、フィル・ウッズの「ALIVE AND WELL IN PARIS」を、誰のアルバムかも、なんていう題名かも分からなかったE.Kさんというお客さん(私が、田舎のジャズ喫茶でアルバイトをしていた高校時代のこと)、イメージを言っただけでそれをかけてくれたといたく感動して、中央に出てきたら遊びに来るよう言われたというそのお店です。
あの頃のジャック・ダニエルといえば、1万円を下らない高級酒、私の口になど入るわけもないお酒でしたが、気前よくタダで飲ましてくれたE.Kさん、今はどうされているんでしょう・・・・・・

ってその話じゃなくて、当時は自由化以前のお話ですので、洋酒はべらぼうに高かったのであります。
新婚旅行で海外なんかに行ったヤツのお土産といえば、ジョニー・ウォーカーの赤か良くても黒、もしくはブランデーのナポレオンと相場が決まっていましたっけ。今思うと可笑しくもありますねぇ。でも当時はそれを「ありがたやぁ、ありがたやぁ」とチビチビやったものです。
日本のウイスキーにしたって、私が飲んでいたのは、トリスかサントリー・ホワイトがせいぜいで、たまに髭ニッカを「旨めぇ~~」なんて飲んでたんですから、これが他人のおごりとなるとダルマか角、リザーブ、ローヤルなんて手も出ませんでした。

それが月日が流れ、いつの間にか、やれ「バーボンは何じゃなきゃいかん」とか、「スコッチは、島もんのシングルモルトだろ」とか、まぁ舌が贅沢になって、
いかに、洋酒の値段がとんでもなく安くなったとはいえ、あの頃の謙虚さは何処へ行ってしまったのでしょうねぇ・・・・

今こうしてジャック・ダニエルの瓶を「何だか安っぽくなった」と言っている自分は、ひょっとしたら逆に、「素直な水性絵の具のような感性を、贅沢という油絵の具で塗りつぶして、上っ面の贅沢に浸っているだけのちっぽけな人間なんじゃないか」なんても思うのであります。

もうすぐやって来るコルトレーンの命日には、高校時代を思い出してサントリー・ホワイトを一本、空けてみようかなぁ・・・・・・

さて、今日の一枚は、昨日に引き続きビル・エバンスとフルートの共演です。
昨日、すでにこのアルバムは紹介済みだろうと、リンクを張ろうとしたら、なんと紹介してなかったんですねぇ、ならばと今日に持ってきました。

話によるとこのアルバムはかなりピリピリした中で録音されたそうで、レコーディングは難航を極めたそうです。
原因は、聴いてわかるがごとく、エバンスとジェレミー・スタングの対決?
まぁ7曲を4日もかけて録音している事を思えば察しはつきます。

「ただし、その緊張感というか、ピリピリ感がこのアルバムの最大の魅力であり、もともと静かな二人が、対決しているから面白い。これぞインタープレイだ。」とおっしゃっていたのは、中山康樹氏であったでしょうか?

そんなことはともかく、私は「STRAIGHT NO CHASER」での、エバンス、ジェレミー、エディー・ゴメスからのエバンスのソロ、そしてジェレミー、ゴメスからのジェレミーのソロ、さらにエバンス、ジェレミーからのゴメスのソロ、そしてテーマと、この一連の流れにはググッと引き寄せられます。好きです。(笑)
正直、ハービー・マンよりジェレミーのフルートに魅力を感じるバブ君でありました。

WHAT'S NEW / BILL EVANS
1969年1月30日, 2月3,5日, 3月11日録音
BILL EVANS(p) JEREMY STEIG(fl) EDDIE GOMEZ(b) MARTY MORRELL(ds)

1.STRAIGHT NO CHASER
2.LOVER MAN
3.WHAT'S NEW
4.AUTUMN LEAVES
5.TIME OUT FOR CHRIS
6.SPRTACUS LOVE THEME FROM BRYNA PRODUCTIONS "SPARTACUS"
7.SO WHAT


至福の鑑賞会

2008年07月13日 | m-o

今日は早々に趣味部屋の掃除を済ませ、珈琲をたて、久しぶりにパイプなんぞを吹かしながら、♪ パーラッパ、パーラッパ・・・・・♪ 珍しくもマイルスの「死刑台のエレベーター」をBGMに、高橋正男著『物語 イスラエルの歴史』なんていうわけの分からない本を読み始めました。(ときおりこういった全く趣味趣向とはかけ離れた本を読んでみるのも面白かったりするんです。)
最近は晴れれば暑くてどうしようもない我が趣味部屋も、今日は不思議と爽やかな東北東の風が通り過ぎ、ちょっとした避暑地気分です。

「○○(私)、電話~~~!」
今どき、固定電話に私宛の電話が入るなんて、おおかた何処から仕入れたか分からない個人情報を基に、じつに美味しい投資話でも囁く、あの手の電話かと出てみれば、昨年10月に10年ぶりで再会したブルース狂K君からの電話でした。
「あれ?携帯の電話番号教えたはずだけどなぁ・・・」(まっ、そんなことはどうでもいいことなんですが)
「バブ、また古いレコード引っ張り出したんだけど、ビールでも飲みながらいっしょに聴かない?」とのありがたいお誘い、もちろん即お受けいたしました。

ということで、午後からは昼間っからビール飲みつつのレコード鑑賞会です。ある意味『至福の一時』でありますよね。
ただし出てくるレコード出てくるレコード、まあ、相変わらずのブルース、ブルース、ブルース。
もちろん、私が持っていないレコードばかりですし、嫌いじゃないから良いっちゃ良いんですけどね。
「ねぇ、たまにジャズなんてぇのも・・・・・・」
もちろん、ジャズのレコードもそこそこ持っているK君、
「いいよ、聴きたいのかければ」
「どれにしようかなぁ・・・・・おっと!」
驚きました。ハービー・マンとビル・エバンス・トリオの共演盤「NIRVANA」モノラル盤があるではないですか。

いえね、この「NIRVANA」のステレオ盤は私も所有しているのですが、
「モノ盤は、ノイズも少なくて良い音だよ」
てな話を以前聞いたことがありまして、一度聴いてみたいとは思っていたのですけど、今までその機会に巡り会えなかったアルバムなのであります。
「よし、これ、絶対にこれ!」

「どうだ?やっぱモノ盤の方が良い音してる?」とK君。
ところが、このアルバムは私もしばらく聴いてなかったアルバムでありまして
「うん、たぶん・・・・・・」
しょうもないですねぇ、所詮、私の記憶やジャズに対する愛情などこの程度のものなんですよ。(ガッカリ)
「よし!ならお前んとこ行って、聴き比べすんべぇ」
「なら、うちに晩飯でも食いに来る?」
話はまとまりました。早々に自宅へ電話を入れ、レコード一枚片手に、途中で買い出しも済ませ、我が家へと戻ってきました。

そこで、まずは『料理当番、本日の一品』であります。

ともかく、レコードを聴く時間が惜しかったので、簡単にできる「トマト・リゾット風、簡単おじや」です。
ニンニク、トマトをオリーブオイルで炒めて、水、固形コンソメ、ホールトマトを潰したものを突っ込んで一煮立ち、塩胡椒で味を調えて、こんどは適量のご飯をぶっ込み一煮立ち、枝豆とアスパラを混ぜ込んで粉チーズをかければ出来上がりです。
付け合わせは、素揚げした茄子と鶏肉のフリッター、それにスクランブル・エッグを少々添えました。
写真はK君用、ちょっと盛りすぎですが、大食漢の彼にはちょうど良かったようですよ。

夕食を挟んで、聴き比べも含め数枚のレコードを聴いたK君、
「また、鑑賞会やろうぜ」
と言い残し、先ほど帰って行きました。

さて、今日の一枚は、もちろんそのハービー・マンとビル・エバンス・トリオの共演盤を、聴き比べの感想とともに紹介します。

このアルバムはハービー・マン名義になっていますが、内容的にはビル・エバンス・トリオにマンがゲスト出演した、といった様相。
ただ、当時のネーム・バリュームを考えるとエバンズが全面に立つことは難しかったのでしょう。げんに、1961年の暮れに第一回目の録音が終わっていたにもかかわらず、約半年もほったらかしされた後、二回目の録音が行われています。
これは、「途中、マンの「COMIN' HOME BABY」がヒットしたから、新しいアルバムは必要なかったから」てな説もありますが、どうでしょうか?
そもそも、マンとエバンスの組み合わせそのものが、ちょっと不思議っちゃ不思議な気がしますし、最初からヒットさせようという意志はあまり感じないようにも思いますよね。

いずれにしても「COMIN' HOME BABY」が収録されている「VILLAGE GATE」のマンのイメージとはチト違う印象をこのアルバムの演奏からは受けます。それはまぎれもなくエバンス・トリオが演奏の主導権を握っているからでしょう。

全体を通して、若干暗めではありますが、同じフルート、ジェレミー・スタイグとエバンスの共演「WHAT'S NEW」とはまた違った魅力を、私はこのアルバムに感じます。

え~~、ステレオ盤とモノ盤の聴き比べですが、我が安物オーディオで聴き比べても、あきらかに違いがありました。私のイカレタ耳ばかりでなく、K君もそう感じたと言っていましたので間違いないでしょう。(笑)
特にマンを聴きたいと思われたら、モノ盤をだんぜんお勧めします。
「I LOVE YOU」なんて、私が耳元で囁いたのと、玉木宏が耳元で囁いた位の違いがあるかもしれませんよ。(どういう例えじゃ)

NIRVANA / HERBIE MANN
1961年12月8日, 1962年5月4日録音
HERBIE MANN(fl) BILL EVANS(p) CHUCK ISRAELS(b) PAUL MOTIAN(ds)

1.NIRVANA
2.GYMNOPEDIE
3.I LOVE YOU
4.WILLOW WEEP FOR ME
5.LOVER MAN
6.CASHMERE


地獄に看板を持つ男

2008年07月12日 | m-o

う~~~~~~暑い、午前中に降った余計な雨がさらなる不快指数を生み出しています。

今日は土曜日、Mさんのお店の手伝いがありますのでこの時間の更新です。

「もし、えらい顔ぶれでっせ、芥川龍之介、有島武郎、太宰治、三島由紀夫に川端康成で、なになにテーマが『自殺について』かぁ、聞いてみたいなぁ。こらなかなか地獄もたのしめそうでんな。」

上方落語をさほど聞かない私でも、この上方落語屈指の大ネタ『地獄八景(じごくばっけい)』は知っています。
幽霊のラインダンスや骸骨のストリップが見られるキャバレー、芝居小屋には初代から十代目までの市川團十郎が総出演する『忠臣蔵』がかかっています。寄席なんざぁ、東西の名人のそろい踏み「トリをいったい誰が取るんだぁ?」みたいな。

「おいおい、米朝も出てるのかい?」
「米朝という名で死んだ噺家はおまへんが、あらまだ生きてんのと違いますか?」
「あんじょう見てみいな、肩のところに近日来演と書いてある」

趣味部屋の暑さを我慢しながら、コルトレーンの「LUSH LIFE」なんぞ聴きながら、いつものように朝日新聞を読んでいると、「ニッポン 人・脈・記 笑う門には福でっせ」という、桂米朝に関する記事を発見、じつに面白い記事でした。

幼少時に神主だった父に連れられ寄席へ出掛け、落語にはまり、17歳で東京は大東文化学院に進学、それでも寄席通いは続き、小沢昭一らと同じく、正岡容(まさおか いるる)門下として学生時代を送っていたそうで、そんな時、正岡に噺家になることを勧められるものの時は戦時下、米朝もまた軍隊へ、戦後も落語好きは変わらず、地元愛媛に大阪の噺家を呼んで落語会を始め、そこへやってきた四代目桂米団治を師匠と決め、母親の反対を押し切って弟子入りしたそうで、人間国宝、桂米朝の噺家としての出発はけして早いものではなかったんですねぇ。

その後、上方では大看板が次々と世を去り「上方落語は死んだ」とまで言われるように、そんななか米朝は断片しか残っていなかったり、廃れてしまった古典を、整理肉付けして復活させたのであります。
凄いお方ですねぇ、今の上方落語は米朝無くしてあり得ないのでありますから。

そんな米朝はかつて「55歳であの世行き」と公言されていたそうで、それで十八番『地獄八景』には自分の看板が出ているてな自虐ネタも織り込んだんであります。

熱湯地獄も針の山ももろともしない主人公4人を、「しかたない」と人呑鬼(じんどんき)が呑み込むのですが、腹の中で大暴れ、「こりゃたまらん」と便所へ駆け込むものの、中で井桁を組んで四人が耐えるものだから、出てきやしません。
「閻魔大王様、もう辛抱たまりません、大王様を呑み込ませてください。」
「わしを呑んでどうするのじゃ」
「大王(つまり、大黄という下剤に掛けている)呑んで、下ってしまう。」

これが『地獄八景』のオチでありますが、
今日の記事は
今年3月に神戸で開かれた「よもやま噺」の会で、
「米朝さん、次に行かれるのは天国ですか、地獄ですか」との客の質問に、会場は一瞬静まりかえったものの、すぐに米朝が
「楽屋やな、次行くのはな」
と答えたという、じつに良いオチで終わっておりました。
いつまでもお元気に、楽しい落語を続けていただきたい、地獄に看板を持つ男、桂米朝師匠の記事でありました。

さて、今日の一枚は、フィニアス・ニューボーンJr.です。

(いかん、時間が無くなってきたぁ~~~!!!!)

このアルバムは、ブロードウェイ・ミュージカル「JAMAICA」のナンバー集といった一枚。
そのせいでしょうか、アドリブ云々というよりメロディ重視の一枚に仕上がっています。

ラテンリズムの中でも、ニューボーンのピアノは目立ちます。
彼のアルバムで特にお勧めといった一枚ではありませんが、ニューボーン好きの私としては、外せない一枚でもあります。

JAMAICA / PHINEAS NEWBORN Jr.
1957年9月録音
PHINEAS NEWBORN Jr.(p) ERNIE ROYAL,NICK FERRANTE(tp) JIMMY CLEVELAND(tb) JEROME RICHARDSON(fl,ts) SAHIB SHIHAB(cl,bcl,as,bs) LES SPANN Jr.(g) GEORGE DUVIVIER(b) OSIE JOHNSON(ds) WILLIE RODRIGUEZ(conga,timbales) FRANCISCO POZO(bongos)

1.SAVANNA
2.LITTLE BISCUIT
3.COCONUT SWEET
4.PUSH DE BUTTON
5.NAPOLEON
6.HOORAY FOR DE YANKEE DOLLAR
7.FOR EVERY FISH
8.TAKE IT SLOW, JOE
9.PITY DE SUNSET
10.PRETTY TO WALK WITH


一所懸命生きるだけ

2008年07月11日 | a-c

梅雨終盤だというのにあいかわらずの空梅雨と思ったら、3時過ぎから雷さんが連れてきた雨が「えっ!大雨洪水警報!?」。まったく、梅雨らしくシトシトと降ってりゃ良いものを・・・・今のところは大雨警報といった降り方じゃありませんけどね。

昨今巷を賑わしているのは、食品偽装に教育界の汚職問題ですか?
怒られるかもしれませんが、以前大騒ぎした談合事件もそうでしたけど「始めて知ったような顔をして、キャスターは今更な~に驚いてんだか?!」といった、冷めた目で見てしまうところがあります。
地方においての先生はもちろん公務員は、じつに安定した最優良就職先ですから、どんな手を使ってもそこにもぐり込む、こんなことはあたりまえのようにやっているのではないか、てなこと誰もが思っていることで、ヘタをすれば「大分は不味いことになった、おかげでこっちにまで飛び火しなけりゃいいが」なんて人もきっと山ほどいるよ、みたいな。

だって「コネか、金でも無けりゃ、地方公務員は難しいから」とか「おまえ、ダメ元で○○先生(学校の先生じゃありませんよ....笑)に頼みに行ってみれば」なんて、しょっちゃう耳にする話なんですから。(実際はそれが有効かどうかは知りませんが)
もちろん、そんなことが横行することが良いことだとは思いませんし、腹も立ちます。ただ、最大の問題は、地方にはそんな安定就職先が他にほとんど無いという現状であると思います。
前にも言いましたけど、子供たちを中央の大学に行かせた時点で、もう戻っては来ないだろうとあきらめるのが実際なのですよ。
「そのへんを改善しないかぎり、こんな事件は無くならないだろうなぁ」
そう思うのは、私だけではないと思いますけど・・・・

コネもツテも持たない我々は、何処でもいいから子供たちが安定した生活をおくってくれればと願い、将来面倒を見てもらうなどという幻想はとうに捨てて、まさに『一所懸命』に生きていくだけ・・・これが地方の疲弊を生んでるんでしょうね。

おっと、また話がいらぬ方向へ行ってしまいました。
そうそう、『一所懸命』(いっしょけんめい)といえば、『一生懸命』(いっしょうけんめい)とはどう違うんだろう?なんてくだらないことを考えたこと・・・・ありませんよね。(笑)

もともとは『一所懸命』が基にあったようで、「一つ所を命をかけて守る」つまり「ご先祖様や自分が苦労して手に入れた領土を、命をかけて守っていく」といった意味の四字熟語だったんだそうで、それが、庶民にとっては領土もへったくれも無いわけですから、頑張れ、頑張ろう、頑張らなくちゃ、と「一生を懸命に生きる」『一生懸命』に変化していったのだとか。
でも、不便な田舎でもその地に愛着を持ち離れようとしない、そんなお年寄りにとっては『一所懸命』という四字熟語の方が、逆に今はピッタリとくるようにも思えます。
地震や台風といった自然災害で『一所懸命』を断念しなければいけないとしたら、それは仕方のないことかもしれませんが、人災で『一所懸命』を断念させるような、そんなことだけは避けてもらいたいなぁ・・・・なんてね。

さて、今日の一枚は、ジーン・アモンズ、ソニー・ステットによる洞爺湖サミットならぬソウルのサミットであります。
アモンズとステットのテナー・バトルは以前にも「BOSS TENORS」,「BOSS TENORS IN ORBIT !」なんかを紹介しましたよね。

この二人のテナー・バトルは、どれもこれも火花散らすというより、「ひょっとして酔っぱらってる?」ってくらいリラックスした演奏ばかり、今日のこのアルバムもサミットというわりには緊張感はありません。(先日の洞爺湖サミットがどれほどの緊張感だったかは知りませんけど...笑)
いや、それが悪いと言っているのではなく、それがこの二人のテナー・バトルの魅力だと思います。
そりゃあ、ディズニーのピノキオも白雪姫も、まさかこんなバオバオと自分たちの曲を演奏されるとは思ってもいなかったでしょうけど、以前私はあまり好きとは言えなかったアモンズのブローブローには「こんくらいやられれば、文句言いません。」って言ってるかもしれません。

おまけのように付け加えると怒られちゃいますけど、ジャック・マクダフのオルガンも光るものがあります。「BOSS TENORS IN ORBIT !」でのドン・パターソンと比べてどうのこうのではありませんが、この二人に合っているオルガンはどちらかと訊かれれば、私はマクダフと即答してしまうかもしれません。

ともかく、二人のテナー・バトルは、あまり難しく考えず「やっぱ楽しいわ」って気軽に聴くにかぎります。ぜひお試しあれ。

SOUL SUMMIT
1962年2月19日録音
GENE AMMONS(ts) SONNY STITT(ts) JACK McDUFF(org) CHARLIE PERSHIP(ds)

1.TUBBY
2.DUMPLIN'
3.WHEN I WISH UPON A STAR
4.SHUFFLE TWIST
5.SLEEPING SUSAN
6.OUT IN THE COLD AGAIN

おまけ、
やっぱり、バーのママに写真を載せたことを怒られてしまいました。今日メールが届いて
「ったく、無断で載せるとは・・・次回楽しみにしておいでネ!」
ですって・・・・・・・コワ~~~~(笑)


登場!・・・させちゃったぁ

2008年07月10日 | m-o

どうも最近水曜日に飲みに行く傾向にありますねぇ、翌日の仕事に全く影響がないと言ったら嘘になります。だって、必ず深酒のすえグダグダになって帰ってくるパターンが続いてるんですから(笑)

昨晩もいつものバーでガブガブと飲み続け、ママと私ともう一人の常連のお客で
「なんか食べ行くぞう!」
って、たしか先週もこんな・・・・・・
でも、先週とは完璧に違う点が。何処のお店もすでに営業を終了しています。
「水曜日だから、休みのお店が多いのかな?」
って、違うから、時計を見なさい時計を
結局、小さな町中を一周して店に戻り、代行タクシーで帰ってまいりました。

え~ここでの出演をひたすらに拒んでいる噂のママ(ここだけで噂の)の写真をド~~~ンと・・・・

こりゃ怒られるかな?でもこの写真なら顔も写ってないし、シャレだと思って許してちょうだい。
ちなみに、ボーイッシュな美人ママでいらっしゃいますよ(ゴホ、ゴホ、ゴホ)

てなわけで、本日の私は思考能力ゼロ(えっ?それは普段からだろうって・・・笑)
先ほど帰宅してビールを一本飲んだら、恐ろしいほどの睡魔に襲われています。
さっさとアルバム紹介して寝よっと(手抜きかい!)

さて、今日の一枚は、ミンガスのベース・トリオです。
麻薬で金を使い果たしたハンプトン・ホーズ、宿泊していたワシントンのホテルに荷物を置いたまま逃げ出してしまいました。たどり着いたのはニューヨークはセントラル・パーク・ウエストのホテル・ルーム、ソニー・クラークの部屋でした。
「わりぃ、着る服もないし、金も50セントしか持ってねぇんよ。助けてちょ」
てなもんですね。
ちゃっかりクラークのところにもぐり込んだホーズは、ある日45丁目ボーッと立ってたんだそうで(何のために立っていたのかは知りませんけど)そこへミンガスがやってきて
「よっ、馬野郎、レコーディングの仕事があるから週末出てこいやぁ」
まっ、そんな言い方はしなかったでしょうが、レコーディングに誘ったのでありました。

そして、録音されたのがこのアルバムということになります。
町中でピアニストを拾ってくるっていうのも凄い話ですが、ハンプトン・ホーズを拾える当時のニューヨークっていったい何なんでしょう?(笑)

しかもこのレコーディングにはもう一つ裏話がありまして、
このレコーディングにホーズはソニー・クラークを連れて行きます。
まさに録音の真っ最中、ホーズは「ボクちゃんちょっとトイレ」と個室にしけ込み、お薬をちょっと・・・(まったくしょうもない)
なんと、その間にピアノの椅子に座ったのがソニー・クラークだったというのです。
ただし、クラークが実際にピアノを弾いたのは2つのコードだけだったそうで、3曲目「I CAN'T GET STARTED」のエンディング部分だというんですが、私にはよく分かりません。(笑)
みなさんもご自分の耳でお確かめ下さい。

ミンガスのアルバムの中ではあまり取り上げられない一枚かもしれません。
でも私はけっこう好きな一枚です。「SUMMERTIME」なんて、いかにもミンガスらしい一曲になっていると思いますよ。

MINGUS THREE / CHARLIE MINGUS
1957年7月9日録音
CHARLIE MINGUS(b) HAMPTON HAWES(p) DANNY RICHMOND(ds)

1.YESTERDAYS
2.BACK HOME BLUES
3.I CAN'T GET STARTED
4.HAMP'S NEW BLUES
5.SUMMERTIME
6.DIZZY MOODS
7.LAURA


早く出てこい物忘れの素

2008年07月08日 | m-o

今日の昼飯は、たまたま近くにいたもので自宅で済まそうかとまわってみると、
「あれ?何できたの?えっ?ご飯?ご飯なんか無いよ」
「え~~~!!!!!」
たしかに、突然帰って「めし」というほうも悪いんですが、そこはそれ「なんかはあるだろう」と思うじゃないですか。
「あっ、素麺ならあるわ、自分で茹でて食べてけば」
「・・・・・・」

まっ、昨日は七夕、一日遅れの『七夕素麺』も良いかと、仰せの通りお湯を沸かし、キュウリ、鶏肉、卵に蟹足・・・そんな具なんかあるわきゃない、それでも
「薬味薬味・・・・お~い、ネギもねぇの?」
「庭から大葉でも採ってくれば」
結局は、大葉とおろし生姜を薬味に『素・素麺』を食べるハメになりました。
せめて、我が家に細々と生えている茗荷でも顔を出てれば良かったんですけどねぇ。

とある宿場の大きな宿屋の婿養子、先代が生きているうちはよく働いてましたが、亡くなった後は放蕩三昧、ついには宿屋を手放すハメになりました。
今ならすぐにでも嫁が「離婚よ!」ってところでしょうが、何故かこの夫婦、仲だけはいい。
そんな夫婦が、わずかに残ったお金を元手に宿場からずいぶん離れた場所で、小さな宿屋『茗荷宿』を始めます。婿も心を入れ替えて働きましたが、そこは宿外れの宿、客も少なきゃ宿代も安い、貧乏暮らしは仕方がありませんな。

そんなある日、『茗荷宿』には似つかわしくない上等な身なりの客がやってまいりました。客から預かったずしっと重い荷物、女将は思わず中を確かめてしまいます。
絹の反物と三百両もの小判の入った財布を目にした女将は
「おまえさん、大変だよぉ、いゃ違った、大金だよぉ。・・・・いっそのこと猫ばばして逃げちゃおうか」
「いやいや、それで捕まっちゃぁもともこもねぇや、よし、名案がある。」
てんで、その客に
「今日は先代の命日でございまして、毎年この日には屋号にちなんだ茗荷づくしの料理でおもてなしすると決まっておりますが、よろしいでございましょうか?」

『茗荷を食べると物忘れがひどくなる』てなことを昔から言いまして、茗荷をたんと食わせれば、預けた荷物を忘れていくだろうという算段であります。
「お客様、料理の味はいかがでございましたでしょう」
「おお、ご亭主、じつに美味かった。全部食べてしまったぞ」

翌朝、よほど先を急いでいたのでしょう、お客はわらじも履かずに宿を飛び出します。
「しめた!」
ところが、客はわらじを履き忘れたことに気が付き戻ってきました。こんどはわらじをしっかり履いて出ていきます。
「思い出したかと冷や冷やしたけど、上手くいったなぁ」
ホッとしていると、またまた客は戻ってきて
「街道を歩き始めて、皆が荷を持っていることに気付きまして・・・危なく忘れ物をするところでした。」
渋々、荷を渡して、客を送ると
「おまえさん、残念だったねぇ、上手くいったと思ったのに・・・ところでおまえさんも旨い旨いって茗荷をたらふく食べてたけど、物忘れは大丈夫かい?」
「・・・・あっ、いけね!宿賃もらうの忘れてた。」

落語『茗荷宿』でございまして、

「茗荷を食べると物忘れがひどくなる」という言い伝えは、お釈迦様の弟子であった、麻迦槃特(まかはんどく)周梨槃特(しゅりはんどく)という兄弟の伝説からきたそうでありますな。
兄の麻迦はじつに物覚えも良く優秀だったそうですが、弟の周梨の方はどうにも物覚えが悪く、自分の名前さえも忘れてしまう始末、しまいには首から名札(茗荷)を掛けさせられるほどだったそうです。
そんな周梨も後に悟りを開き高僧となるのですが、死後、彼の墓のまわりには山のように茗荷が生えてきたそうで、ここから「茗荷を食べると物忘れがひどくなる」という話が生まれたのだとか。

何処かで、素麺や冷や奴の薬味に茗荷が付いていたり、刺身にそぎ茗荷が付いてきたときなんか、ちょっとした話の種に使っていただければと・・・・
えっ?そんな話しをしたら、「おやじはこれだから・・・・」ってさらに嫌われるって?
う~~~~ん、じゃあ、この話は無かったことに、茗荷をたらふく食べて忘れてやって下さい。(笑)

ともかく、
「我が家の庭の隅に根付いた茗荷、いずれ我が口に入るまでになるかなぁ?早く出てこい物忘れの素!
大葉と生姜を薬味に『素・素麺』をすすりながら、そんなことを思った今日の昼食でした。

さて、今日の一枚は、ジャッキー・マクリーンです。

ジャズメンに停滞は許されない、これはどのプレーヤーを見てもうなずけますよね。ただその変貌が吉と出るか凶と出るかはそれぞれですし、「○○以降の××はどうも」との嘆きも良く聞きます。(昨日のアート・ペッパーもですし、マイルス、コルトレーンにしてもそうでしょ)

この時期のマクリーンまた、アバンギャルドな世界への試みを続けていたまっただ中といって良いように思います。
サイドを先日紹介した17才のトニー・ウイリアムスはじめ若手で固め、意欲満々のマクリーンを聴くことが出来るアルバムだと思います。

それにしても、少しでもフリー傾向に走るとそれだけで毛嫌いしてしまう方もいらっしゃいますが、このマクリーンのようにバランスの取れた演奏を耳にすると、考え方が少し変わってくるのではないか、てなことを思ったりします。
ピアノレスのクインテットが作り出す世界は、刺激的なアルトと、ほんとに17才かぁ?というドラム、ボビー・ハッチャーソンのチョット不思議なバイブ、もちろん他のメンバーも含め、それらが織りなす、一つの物語のようにも聴こえてきます。

ONE STEP BEYOND / JACKIE McLEAN
1963年4月30日録音
JACKIE McLEAN(as) GRACHAN MONCAR Ⅲ(tb) BOBBY HUTCHERSON(vib) EDDIE KHAN(b) ANTHONY WILLIAMS(ds)
1963.4.30
1.SATURDAY AND SUNDAY
2.FRANKENSTEIN
3.BLUE RONDO
4.GOHST TOWN


疑心に満ちた社会はヤダね

2008年07月07日 | p-r

  君が舟今漕ぎ来らし天の川霧立ちわたるこの川の瀬に

七夕の今日はどんよりとした曇り空。今年このあたりでは牽牛と織姫の再会は難しそうでありますが、幸いにも旧暦(厳密には違いますけど)で祝うのがこのあたりの通例、来月の七日が晴れることを期待しましょう。

そんな七夕に我が家に届いたのは、昨年もいただいた『鰻の蒲焼きセット』です。
昨年は大喜びしたこの贈り物も、今年いただくと何とも複雑な気持ちになるのは、じつに失礼なおはなしで
「これ、中国産鰻かなぁ?」
「あれ?たしか詳しくは書いてなかったけど『国産』っては書いてあったよ」
私などは、べつに美味しく食べられれば何処産であろうとかまいやしないんですけどね。
「三越の贈答だし、この時期に贈ってくるって事は逆に安心なんじゃね」

ちょっと前に「三菱自動車のリコール隠しの問題から、同社の売り上げが落ちた」なんてことありましたよね。あの時も言ったんですが
「バカだねぇ、三菱の自動車買うんだったら、絶対今だと思うよ。安いし、細心の注意はしてくれるし、保証も充実してるだろうし・・・」
いわゆる逆の発想ってヤツですか。

「だけどさ、今の世の中、裏の裏の裏まで読んで、儲けることばっか考えて商売する悪いヤツがいっぱいいるでしょ、まして鰻は今や『国産』って表示が一番疑わしいんだよ」

あははは、まさに「それを言っちゃあ、お終めぇよ」であります。でも、「全てを疑ってかかれ」そんな世の中になったことも事実ですよね。あ~いやだいやだ。

先日、『グッド・シェパート』という映画をDVDで鑑賞しました。3時間という長い映画だったので何日かに分けて見てしまいましたけど(笑)
いやね、私、けっこうマッド・デイモンって役者が好きなんですよねぇ、もちろんロバート・デニーロもいいし、アンジェリーナ・ジョリーの唇には・・・・って、それはどうでもいいんですが
ある意味ホラー映画より怖い映画でした。

ここでの『グッド・シェパード』とは、新約聖書『ヨハネ福音書』でキリスト自身が語る「わたしは『善き羊飼い』である・・・・わたしは羊のために命を捨てる。」から来ているといいますが、この主人公が『善き羊飼い』であろうとしたものは何だったのか?身を捧げたものは何だったのか?
ともかくまわりに信ずる者など誰もいない世界を自ら作り上げていく、それは何のため?誰のため?
ふつう「誰も信じちゃいけない、時には家族までも」みたいにまわりの全てを疑って生きていたら、というかそんなんで人間は生きていけませんよねぇ?
ところが生きてましたねぇ、この主人公。
CIAの誕生がどうだとか、スパイがどうだとかというより
全てを疑ってかからなければいけなくなっている現代を思うと、さらに怖さが増す映画でしたし、
正義とは誰が決めるのか?正義とは何か?国家が正義ならそれに逆らう者は全て不正義者か?国家が正義なら何故国と国が争うのか?
いろんな事を考えさせられる映画だったように思います。

まわり全てが、あの主人公みたいな人間だらけになったら、あたしゃ生きていけませんねぇ、というか生きたくありませんね。

あれ?何の話でしたっけ?
まったく、いつもこれですよ私の話は・・・・・・
つまり、食品偽装事件が起きようと、通り魔事件が起きようと、国に裏切られようと、一部の馬鹿な公僕気取りに支配されようと、私は人を信じて生きていきたい、信じられる人は必ずいると思いたい、牽牛のように、織姫のように、一年に一度の出会いを信じ、相手を信じ、そうやって生きていきたいんだと、まっそういう話です。(笑)

さて、今日の一枚は、アート・ペッパーです。
いかに再会とはいえ、男同士のキスはいかがなものかと思いますが、コルトレーンに陶酔していたペッパーにとって、この再会は何を意味したのでしょう?

やっぱり当時は「ペッパーはコルトレーンかぶれして欲しくない」と思っていた日本人が多かったんでしょうかねぇ?少なくともこのアルバムをプロデュースした日本人は、そう思っていたに違いありません。
そしてもう一人、ローリー夫人もそう思っていたのかも
「このアルバムはアートのカムバック後のベスト・アルバムになるわよ」
と言ったらしいですから。
いずれにしろ、復帰後始めて「前期のペッパーが好き」という人に温かく迎えられた一枚だったと思います。当時私も誰かに「ほら、これがペッパーだよ」と聴かされた覚えがありますから。

ともかく、その後こういったフォーマットでの演奏は二度と行われなかったことからしても、ユニークなアルバムであることは確かです。
アルバムはユニークでも、中身はいたってシンプル、というか安心のペッパーを楽しめますよ。

まぁ、前期がどうの、後期がどうのなんてぇのはどうでもいいはなしで、獄中生活で容姿も、ジャズへ対する考え方も多いに変化したペッパーではありましたが、旧友と再会してセッションを行えば、以前からのペッパー・ファンをもうなずかせるプレーができた「腕はなんも衰えてねぇよ」てな感じでしょうかね。

AMONG FRIENDS / ART PEPPER
1978年9月2日録音
ART PEPPER(as) RUSS FREEMAN(p) BOB MAGNUSSEN(b) FRANK BUTLER(ds)

1.AMONG FRIENDS
2.ROUND ABOUT MIDNIGHT
3.I'M GETTING SENTIMENTAL
4.BLUE BOSSA
5.WHAT IS THIS THING CALLED LOVE
6.WHAT'S NEW
7.BESAME MUCHO
8.I'LL REMEMBER APRIL