JAZZを聴きながら ふたたび

恥も顧みないで再々開、よろしければお付き合いを

肴は気取り酌は髱

2008年04月18日 | a-c

春の嵐が今も雨戸を揺らしています。何とか粘っていた何本かの桜もこれで完全に終わりですね。それにしても昔から春ってこんな嵐を呼ぶ低気圧がバンバン来てましたっけ?これも温暖化の影響なのでしょうか。

酒で失敗した親子は互いに禁酒を誓い合います。
ところが、結局誘惑に負けてしまい。酔って帰った息子に父が
「馬鹿野郎、飲んできやがったなぁ、どうしてあれほど言ったのに、飲んでくるんだ。酒を飲むから、お前の顔が七つにも、八つにも見えるじゃねぇか。そんな化け物に財産が譲れるか」
「ヘンだいいらねぇよぉ。こんなぐるぐる回ってる家をもらったってしょうがないやい。」

全く酒飲みというやつはしかたのないものでありまして、親子共々救いようがないという、落語『親子酒』の落ちであります。

「あら、金曜日なのに帰って来ちゃったの?」
「帰って来ちゃったのって、あ~たね、この嵐の中、どこまわってくるってんだよ。」
「あららららら、飲んで帰ってくると思って今日はカレーにしたんだけど」
「カレー?!」
ちょっと寒くなってきたし、ビールをカッと飲んだらあとは日本酒かな・・・てなこと思いながら帰ってきたというに、カレーじゃねぇ。かといって嵐の中、いまさら飲みに出かけるのもなんですし。
「なんかねぇの?」
「なんかって?」
「だから、丸干しをちょっと炙ったやつとか、キャベツをサッと茹でて、かつぶしバッとかけたやつとか・・・・なんならか豆腐でも、塩で揉んだキュウリでもいいんだけど」
「自分でやれば!」
「・・・・・・・・・」

『親子酒』のような酒飲み噺には「肴は気取り酌は髱(たぼ)」てなことばがよく出てきます。気取りというのは、工夫を凝らすという意味で、けして豪華なという意味ではなく、量はいらないから気の利いた、心遣いがあるてな意味。髱は結髪の後ろの部分で、風情のある美女を「髱の映りがいい女」てなことをいうのでありまして、つまり「気の利いた肴をほんのちょっと、それに美人の酌がつけば、酒飲みは充分満足」とそういうことなのであります。

ねっ、世の奥様、酒飲み亭主を操るなんていとも簡単、亭主が惚れた奥様じゃござんせんか、ご自分の魅力に自信を持って、ササッと作った肴を横に「一杯どうぞ」不機嫌な顔をちょいと隠してそれだけでいいんですから、
それがどうして、旦那はおもてに飲みに出かけてしまうのか・・・・いいですか、「髱の映りがいい女」なんざぁ、そんじょそこらに居るもんじゃありませんよ。ほとんどが髱ならぬ、だぼはぜみたいなもんでありまして、ただね、ほんの少し気を利かせて飲ませてくれる、酔いも回ってくれば、だぼはぜだって立派に髱に見えてきちゃったりするもんなのでありますよぉ・・・・んんんんん
だから、そんな女より数段素敵な奥様が、そんな女なみの気遣いをしたら、あ~た、「何故に無駄金使いに出かけるものか」てぇことになるじゃありませんか。

え~~~~ん、自分で山芋を刻みました。もちろん手酌で飲んでまぁ~~す。
「嵐でもおもてで飲んでくりゃ良かったかなぁ」

さて、今日の一枚は、ジーン・アモンズです。
15年の刑期を半分の7年半で終え、塀の扉ならぬタラップからシャバへと降り立とうとするアモンズ。
ですから、このアルバムはジャケットに「ボス、ご苦労さんでございやした。」って声をかけてから聴かなくちゃいけないんですよ。(笑)

まずはシャバへお戻りになれば、何はなくとも何とかってやつで、「HERE'S THAT RAINY DAY」なんか聴きながら一杯飲んでると、「髱の映りがいい女」がそっと見つめていて、「なんだよ、ちょっとこっちこいや」なんちゃって・・・・・(まったくしょうもない)

ともかくアモンズの図太いテナーは、獄中生活をおくった後でも、全くブランクを感じさせない健在さでありましたとさ。

THE BOSS IS BACK ! / GENE AMMONS
GENE AMMONS(ts) JUNIOR MANCE(p) SONNY PHILLIPS(org)  BUSTER WILLIAMS(b) BOB BUSHNELL(el-b) FRANKIE JONES, BERNARD PURDIE(ds) CANDIDO(conga)
1969年11月10, 11日録音

1.TASTIN' THE JUG
2.I WONDER
3.HERE'S THAT RAINY DAY
4.MADAME QUEEN
5.THE JUNGLE BOSS
6.FEELING GOOD