JAZZを聴きながら ふたたび

恥も顧みないで再々開、よろしければお付き合いを

親心の矛盾

2008年04月08日 | j-l

今日はひどい天気でした。「爆弾低気圧なみ」という「爆弾低気圧」とはどの程度の違いがあるのかも分からない低気圧が、ちょっとそのへんを通っているものですから、傘をさしても濡れるような横殴りの雨が窓を叩いて、間もなく満開の桜もさぞかしうなだれていることでしょう。

先週の土曜日に「明日はDVDで引き籠もり」みたいなことを書いたくせに、何のDVDを見たのか報告していませんでしたよね。(べつに報告を待っていた人もいないでしょうが。笑)
鑑賞したのは『夕凪の街 桜の国』でした。

原作は、こうの史代さんの漫画なんだそうで、数々の賞を受賞され、海外での出版も進んでおるのだとか、ここ十数年ほとんど新しい漫画を読んでいない私は、恥ずかしながら全く知らないお話でした。

広島に暮らす、原爆で父と幼い妹を亡くし、自らもそして母親も被爆をした女性、皆実(みなみ)の、被爆から13年後の物語と、現代に生きるその皆実の姪、七波(ななみ)の物語、という二部構成のもので、いわゆる原爆投下後間もなくの悲惨な様子を描くといったありがちの原爆映画とは一線を画すものでした。

内容を詳しく話してはこれからご覧になる方へ失礼でしょうから、感想だけ言わせていただきますと、
原爆がモチーフではあるものの、原爆に関係なく、人の心の中に誰しもが持っている差別感を改めて考えさせられた・・・意味が分からないですよね。

こんなシーンがありました。
皆実の母が、皆実が好意を寄せている打越という男性が、家に訪ねてきた後
「母さん(は)皆実がええと思う人だったらええよ。」
娘の将来を思う母としては、好きな人といっしょになって欲しいという想いがことばに出たシーンでありましたが
後に被爆していない息子(水戸の叔父伯母のところへ疎開をしていて養子になっていた)が、母とも親しく信頼もしている女性被爆者といっしょに暮らそうとしたとき、
「あんた 被爆者と結婚する気ね?何のために疎開させて養子に出したのか、石川(叔父の姓)のご両親にどう言うたらええ?」
(けっきょく、息子はその女性と結婚し、七波が生まれるんですけど)
そして、喘息の持病を持つ七波の弟が、その原因は母親の被爆にあるのではないかと心配する恋人の両親に交際を許してもらえない・・・・・

全て差別だの何だのという問題ではなしに普通に想う親心に相違ありません。だけど、「他人事なら声高に不当を訴えられても、いざ我が身ならそれもままならない。」そんな人間の根底を映し出しているようで、私は考えさせられたのです。
だって「何事にも差別などすべきでない」と私も思うし、そうありたいとも思いますが、例えば我が娘が、原爆症の親を持つ男性を連れてきて、何らかの障害を背負う男性を連れてきて、あるいは肌の色の違う外国人男性を連れてきて「結婚したい」と言い出したらどうするのだろう・・・なんてね。

この映画の本来の主旨とはかなりかけ離れた見方かもしれませんが、そんなことを思わされた一本でありました。

さて、今日の一枚は、リー・コニッツです。
タイトルのごとく、いろんな楽器、いろんなミュージシャンとのディオ集といったアルバム。一時けっこうはまって回数を聴いた一枚で、リッチー・カミューカとのテナー・ディオ「TICKLE TOE」なんか惚れちゃっていました。(笑)
でも、今聴いてみるとあの頃の感動は若干薄れているように思えるのは、完全に歳のせいですね。

ともかく「トリスターノ派リー・コニッツとのイメージがあるとすれば、これはもうすでにコニッツ派(そんな派は無いけど)とでもいうべきだ!」と勝手に思うほど、バリエーション豊かなコニッツの表現力と、たしかにマイルスやコルトレーンとは違った形でのモードの追求をも感じ取れる、そんなアルバムだと思います。

DUETS / LEE KONITZ
1967年9月25日録音
LEE KONITS(as,ts,bs)
JOE HENDERSON, RICHIE KAMUCA(ts) MARSHALL BROWN(vtb)  JIM HALL(g) KARL BERGER(vib) DICK KATZ(p) EDDIE GOMES(b)  ELVIN JONES(ds)  RAY NANCE(violin)

1.STRUTTIN' WITH SOME BARBECUE
2.YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS
3.ALONE TOGETHER
4.CHECKERBOARD
5..ERB
6.TICKLE TOE
7.DUPLEXITY
8.ALPHANUMERIC