JAZZを聴きながら ふたたび

恥も顧みないで再々開、よろしければお付き合いを

邯鄲の夢

2007年08月31日 | g-i

ふと気づけば暑かった8月も今日で終わり、虫の声と澄んだ空の季節へと移り進んでいくのですね。あの暑かった日々をもう少し楽しみたかった・・(嘘ですよ、うそ)
一週間前は、夜鳴く虫は蝉だったのが、今晩あたりはきちんと秋の虫が鳴いているのですから、季節の移ろいというものは不思議にも思えてきます。

「便所コオロギだって、ゴキブリだって、ゲジゲジだって、綺麗な声で鳴けば嫌われ者にはならなかったのかなぁ?」
さて?虫籠で鳴くゴキブリやゲジゲジを、私は見たくはありませんが(笑)

虫売りのむなしく帰るにぎやかさ

昔、お江戸じゃ夏場に虫売りが歩いていたそうですけど、帰る頃には売り残りの虫の声で、うるさいくらいだったとか、虫の声も数いりゃいいというものでもないのでしょうね。

これから夜長になれば、早く寝りゃいいものを、ついつい遅くまで本を読んだり、レコードを聴いたりして遅寝になってしまうのは何故なんでしょう。えっ「おまえの場合は酒を飲んで遅くなんだろう」ってですか?「そうそう酒も肴も美味しい季節になりますから」って、そうじゃなくて。
夜遅くなると、人は少しずつ寝静まっていくのに、虫たちはどんどん盛んに鳴き続けます。全員(全虫?)一定のリズムを刻んでいたかと思えば、突然一斉に静かになったり、そしてまた鳴き始めたり・・・・・・
鈴虫やコオロギの声を肴に、澄んだ風を受けながら飲む酒は、これまたたまらないのですよね。(ほら、やっぱりそれじゃん)
だから、そうじゃなくて、

虫の声は、一人でじっと聴き入っていると、いつの間にか夢の世界に誘ってくれます。これぞまさしく『邯鄲(かんたん)の夢』なのでありまして、

『邯鄲の夢』とは、「貧乏で立身出世を望んでいた盧生という青年が、趙の都、邯鄲で呂翁という仙人から、栄華が意のままになるという枕を借り、うたた寝をしたところ、富貴を窮(きわ)めた50余年の夢を見たが、覚めてみると炊き掛けていた粟がまだ煮えないほどの短い間であった。」という中国の故事に基づく言葉で「人の世の栄枯盛衰は儚いものだ」という意味です。

それが、何故秋の虫音なのか?
コオロギの仲間で、ル・ル・ル・ルと聞こえる「鳴く虫の女王(鳴くのは雄なんですけど)」カンタンという虫がいることをご存じでしょうか?


これがカンタン

このカンタンの美しい鳴き声を聞いていると夢見る思いがして、幽玄のおもむきさえ漂わせるということで、この名が付いたのだそうで、秋の虫の声を愛でるいかにも日本人らしいネーミングではござんせんか。

だからね、秋の夜長はうまい酒飲んで、虫の声を聴きながら『邯鄲の夢』に浸ろうという・・・・・・・いやぁいい季節だぁ。(笑)

さて、今日の一枚は、チコ・ハミルトンです。
映画『真夏の夜のジャズ』でハミルトン・クインテットがやっていたのが、このタイトル曲でしたよね。
真夏の夜を終えて、エリック・ドルフィーがハディ・コレットに代わってはいるものの
同曲をじっくりと聴くというのもよろしいんじゃござんせんかねぇ。
ウエスト・コーストで、室内楽的サウンドで、なのに黒人ぽい、この味はハミルトンにしか無いものだと思います。

ピアノレス、チェロ有りというこの編成が、私はけっこう好きで、しょっちゅう聴きたくなる一枚ではないのですが、「IN HI HI」「THE ORIGINAL ELLINGTON SUITE」とこのアルバムあたりは、たま~~に引っ張り出して聴いています。
秋の夜長にはちょっといいアルバムではないでしょうか。

CHICO HAMILTON QUINTET FEATURING BUDDY COLLETTE
1955年8月4, 5, 23日録音
CHICO HAMILTON(ds) BUDDY COLLETE(fl,cl,ts,as) JIM HALL(g) FRED KATZ(cell) CARSON SMITH(b)

1 A NICE DAY
2 MY FUNNY VALLENTINE
3 BLUE SUNS
4 THE SAGE
5 THE MORNING AFTER
6 I WANT TO BE HAPPY
7 SPECTACULAR
8 FREE FORM
9 WALKING CARSON BLUES
10 BUDDY BOO