JAZZを聴きながら ふたたび

恥も顧みないで再々開、よろしければお付き合いを

頑張ってやりなさいよ

2007年04月02日 | s-u

何だか暑くなったり寒くなったり、落ち着かない気温です。体調を崩さないよう、夜更かしや飲み過ぎには注意しなくては・・・・・と言いつつ、昨晩も遅くまでいつものバーで飲んでいた私では、まったく説得力もありませんけどね。(笑)

昨日の夕刻、我が家の近くにある学生アパートの前から、
「頑張ってやりなさいよ」との声が聞こえてきました。
きっと、はじめて親元を離れ、一人暮らしを始めるお嬢さんなのでしょう、お母さんらしき方が帰られるところでした。お父さんの姿は見えませんでしたが、心配のあまり寝込んでしまったわけではないでしょうねぇ、父親にとっては、寂しいやら悲しいやら心配やらで大変でありましょう。

皆さんは、はじめて親元を離れ、生活し始めたのはお幾つの時だったでしょうか?
私は、高校2年生になる春でした。
父の仕事の関係で、転校することの多かった私は「高校だけは転校しない!」とわがままを通したのです。今から思えば、両親はどれほど心配したことでしょう。父など亡くなる前に
「○○(私です)、とうちゃんが未だに失敗したと思うことは、お前を下宿させたことだ。」
と言っていましたので、私のとんでもない素行(私は父にはばれていないと思っていましたけど、お見通しみたいなところもあったのでしょうね。)に呆れたり、怒ったり、心落ち着くときが無かったのかもしれません。ある意味、親不孝でありました。

その年の夏休み、5日ほど親元に帰ったのですが、父は最も仕事が忙しい時期で、朝は早く出かけるから会えない、夜は夜で私が遊びに出かけたり(ジャズ喫茶まわりなどしていました。)父が遅くまで仕事だったりして会えないという日が続いたのです。
翌日帰るという晩、父が電話をかけてきました。

「○○、今晩は出かけないのか?」
「うん」
「それなら、これからタクシーを家に向かわせるから、それに乗って出てこい」

とあるスナックで父は飲めない酒を飲んでおりました。父とめんとむかって話をするなどということが無い年頃でしたので、何を話すというわけでもありませんでしたが、その晩、父はクラブ、料亭(といっても田舎のですから、銀座や赤坂をイメージしないでくださいね)と私を連れ回し、最後に「勉強、頑張れよ」と言ったのでありました。
もっといろんな事を私と話したかったのかもしれません。というより、私のことをとても心配していたんだろうと思います。父親というのは、愛情表現がへたくそなんですよね。今、自分が父親となってつくづくそう感じるのです。

あははは、つまらぬ思い出話でした。ただ、昨日の「頑張ってやりなさいよ」との言葉を聞いて、ふと思い出してしまったのです。

新たなスタートをきった若者達よ、みなさんのご両親は離れていても、貴方たちの最大の味方として、常にエールを送っていてくれるのだよ。
ほんの少しそんなことも思いながら、自分の目標に向かって頑張って下さいね。
そして、

希望とは、輝く陽の光を受けながら出かけて、雨にぬれながら帰ることがある。(ルナール)

そんな時は、どうぞご両親にあまえて上げてください。

さて、今日の一枚は、録音はトランジション、発売はブルーノートという、ルイ・スミスのアルバムです。
ブッカー・リトルのいとこでもあるスミスの本職は音楽教師。そんなこともあって、活動期間はじつに短かいトランペッターでした。

ハーバード大出の黒人名プロデューサー、トム・ウィルソン(後にコロンビアで、ボブ・デュランやサイモン&ガーファンクルのプロデュースを手がけました。)は、大学在学中の1954年に、マイナー・レーベル、トランジション・レコードを興しました。ところが三年後にあえなく倒産、この時に最もガッカリしたのはルイ・スミスその人だったかもしれません。
何故なら、すでに録音も終わり、タイトル、レコード番号も決定していたこのアルバムが、発売されずに倒産してしまったからです。
これを救ったのがブルーノートのアルフレッド・ライオンです。テープを聴いてすぐにこれを買い取り、ブルーノート1584番として発売したのです。

ですから、このアルバムのプロデューサーはトム、ライオンではありません。そのせいでしょうかブルーノートのアルバムとしては、整っていないというか、ある意味大ざっぱさを感じるアルバムです。(逆にそこが魅力だったりするんですけどね)

スミスはいとことは違い(笑)、まさにハードバップ向けというか、明るく力強い音の中に歌心が溢れたトランペットを聴かせてくれます。
もし倒産が原因で世に出なかったとしたら、じつにもったいない一枚だったと思いますよ。

HERE COMES / LOUIS SMITH
1958年2月4日[1,2,5],9日[3,4,6]録音
LOUIS SMITH(tp) "BUCKSHOT LA FUNKE"(as) DOUG WATKINS(b) ART TAYLOR(ds)
DUKE JORDAN[1,2,5], TOMMY FLANAGAN[3,4,6](p)

1.TRIBUTE TO BROWNIE
2.BRILL'S BLUES
3.ANDE
4.STAR DUST
5.SOUTH SIDE
6.VAL'S BLUES

追伸、
御存じかとは思いますが、"BUCKSHOT LA FUNKE"とは、スミスと同じ音楽教師でもあった、キャノンボール・アダレイのことであります。

また、トランジション・レコードは、ジャズ、フォーク、クラシックとかなり手を広げすぎたきらいがあります。ただ、ことジャズに関して言えば、貴重なアルバムも多く、CDで再発された盤も多いので、ぜひともお聴きになってみて下さい。