平成25年12月14日の産経新聞報道によれば、13日金正恩第一書記の叔父で後見人とされた前国防副委員長の張成沢氏が処刑された。報道によれば、国の破局が拡大しているにもかかわらず、現政権が何も対策できないため、クーデターを計画していたことを本人が認めたとされる。指導者の金書記は若く経験もないため、就任後、核実験強行や朝鮮戦争の休戦を白紙にすると言ったり、常軌を逸した動きを繰り返している、という。今回の事件もあたかもその一環であるかのようにみているのだ。
小生にはこの筋書きがどうしても納得できない。そもそも、金書記本人が処刑や一連の動きを発想し指示する権力を持っていたとは思われないのだ。あの若さでいきなり権力中枢の頂点に立って行動できている、と考えるのが余りにも不自然である。結論から言うと、北朝鮮の政権は金書記を飾りにして、実質は張氏をトップとするグループが仕切っていたのである。張氏は経済立て直しのため、軍が持つ鉱山開発の「外貨利権」などを剥奪したり、中露に経済特区や港湾の使用権を売るなどした、とされている。
つまりこれらの張氏の「改革」に反対する者たちが集まって、張氏をトップとする政権中枢を排除した、クーデターであったのだ。いみじくも張氏が「クーデターを企てた」としているのがそのことを物語っている。政権の実質的トップである張グループにクーデター計画が洩れたら逆に粛清される。だから突然張氏を拘束し、特別軍事裁判をして翌日に処刑するという迅速な行動が必要であったのである。
金書記が飾り物でなく政策を仕切っていたとしたら、排除すべきは金書記本人であったはずである。そうでなかったからこそ、後見人の張氏グループが失脚しても金書記はトップでいられるし、「改革」は張氏グループの排除だけで阻止できるのである。要するに全体主義国家にありがちな権力闘争に張氏は負けたのである。