毎日のできごとの反省

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Me262の後退翼の不思議

2014-05-10 15:18:48 | 軍事技術

 Me262は世界初の実用ジェット機でありながら、既に後退翼である。その理由は、当初の設計が直線翼であったのに、装備するエンジンの重量が予定をはるかに超えたために、重心を調節するために後退翼とした、というのが定説である。そうではない、という記事を読んだ記憶はあるが、誰の記事か思い出せない。

 それにしてもこの定説は実に奇妙である。日本でも九七重爆が後ろに行き過ぎた重心による縦安定改善のために僅かながら後退角を増加した、という例はある。Me262の場合も主翼の取り付け位置を変更するより後退角を増加する方が設計変更が軽微で済む、という説明である。確かに主翼の取付け位置を変更するのは大幅な設計変更になるが、エンジンの主翼への取り付け位置を変更するのは簡単である。

通常、飛行機の重心は25%翼弦長の位置に置く。本機の場合、エンジンは主翼下にある。従って、エンジンの重量が大幅に増えたところで、重心位置は大きく変化するようには思われない。つまりエンジン重量の増加のために、18度もの後退角をつけて重心より後方の翼面積を増大させる必要があるように思われない。更に奇妙なのは最初はエンジン外翼の部分だけ後退角をつけていたのだが、すぐに内翼の前方に翼面積を増やしている。

これだとせっかく後退翼で主翼を後方に移動したのに、その効果が幾分かでもキャンセルされてしまうはずである。もし後退角が大きすぎたために調整するのなら、後退角を減らせばいいだけである。この矛盾についての説明をした記事を見たことがない。確かに設計者自身が後退翼としたことは僥倖であった、と語っている(世界の傑作機・No.2・文林堂、P20)のだそうだから、定説は間違いだとも断言できない。

しかし前述のような理由で釈然とはしない。18度程度の後退角では効果は少ない、とも言われる。しかし最近の亜音速機では、この程度の後退角の設計も稀ではないのである。また、僥倖だ、と言ったのは結果的に後退角の効果があったと判断したから言ったのである。当時ドイツ航空界では、後退翼の効果はよく知られていた。しかし、後退翼が大きいと、当時では、予測不明な色々なリスクの可能性を伴う。

初のジェット機を実用化するためには、リスクの少ない、比較的浅い後退翼で試してみたのではなかろうか、と思うのである。勝手な想像だが、エンジンの重心調整云々は、後退翼を採用してみたいために、別な言い訳を発注者に言ってみたのかもしれない。

 


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1 コメント

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後退角を付けた理由 (Haru)
2017-11-29 05:58:39
後退角を付けたのは搭載燃料の増加に対応するためではないでしょうか
燃料の量が変わっても重心が変わらないように燃料タンクの重心は通常主翼の浮力中心と一致させます。エンジンの重量増加で燃費が悪化したため操縦席後方のタンクを大型化し、後退したタンクの重心に主翼の浮力中心を合わせるために後退角を付けたとは考えられないでしょうか
(エンジンを移動しても浮力中心は変えられないので)
もちろん翼端にタンクを付けるなど他の選択肢もあった訳で、その中で翼端失速などの大きなリスクも知られていた後退翼を選んだのは後退翼を試したいという動機があったはずです。偶然の産物とは思えません
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