頭の中は魑魅魍魎

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『山女日記』湊かなえ

2014-07-31 | books
イヤミス(いやな読後感をもたらすミステリ)の女王湊かなえっぽくない作品は、30代くらいの女性たちが山に憧れたり、あるいは山を通して変わる話が続く短編集。登場人物に関連が少しあるのでセミ連作短編集だろうか。各短編にはタイトルに山の名前。

・デパート勤務の三人の女性のうち、一人が来られなくなって二人だけで登る<妙高山> まじめとふまじめの、気が合わない二人が…

・バブルを引きずっている女だと見られている私は、お見合いパーティで出会った男と登<火打山> 私はそんな女じゃないのに…

・<妙高山>のときには行けなかった。でも経験のある私は、<槍ヶ岳>を一人で登る。途中で一緒に登ることになった中年の男性と女性。体力のない女性が…

・35歳定職のない私は、医者と結婚した姉に誘われて<利尻山>に登る。私の人生って…<利尻山>の姉が娘と妹と登る<白馬岳> 

・<妙高山>のまじめな方の女性が交際中の男性と登る<金時山> 様々なミッションを自分に課してきたけれど…

・ニュージーランドの<トンガリロ> 遠距離恋愛中の彼と行く…

という感じで全篇やまやま山。

湊かなえの独特の味は「人物をいまひとつ描ききれていないのだけれど、ラストに向けての強引なストーリー展開とひねりがユニーク」というものだった。それが今回外に出て来ない。別の人が書いたよう。人物は生き生きしている。

これがなかなか悪くない。むしろ、とても楽しませてもらった。

30代女性の希望と苦悩は、篠田節子とか江國香織とか、他にも色々な作家が書いているけれど、それを山と絡めるのはなかなか巧い。

山に登りたくなった。今年の夏は富士山に登る時間はなさそう。秋にどこかに登りたい。

山女日記

今日の一曲

生き生きした女性たち。上原ひろみのトリオ・プロジェクト、Hiromi The Trio ProjectでAlive


では、また。

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