頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『月まで三キロ』伊与原新

2021-01-13 | books
本の雑誌の「作家の読書道」で紹介されていた作家。面白そうなので読んでみた。

どうやら富士の樹海で死にたいらしい客を乗せてしまったタクシー運転手・・・<月まで三キロ>

恋愛を避けて生きてきた女性が出逢った男性は気象オタクだった。彼に好かれるように・・・<星六花>

受験のストレスから逃避して母の実家で過ごすことにした少年が見たのは、川原で化石を探す人だった・・・<アンモナイトの探し方>

元ギタリストの叔父は仕事もせず飲んだくれている。つくばの研究室に勤める兄が金を貸したらしい・・・<天王寺ハイエイタス>

食堂に毎晩やってくる女性は日替わり定食を頼まない。小学生の娘鈴花は怪しんで、宇宙人だと思う・・・<エイリアンの食堂>

家庭で大切にされない主婦が、山に登ると、火山の研究者がいて話を聞いているうちに・・・<山を刻む>

ちょっとした理系のネタを巧妙にストーリーに織り交ぜる素晴らしい短編集。何というか、こういうの読みたかった!

「つまり僕たちは、自分の遺伝子を効率よく残すのに有利な対象を、美しいと感じてるに過ぎない」


「何の意図も意味もなく、ただの偶然によって、あの完璧な立体や幾何学模様が形成されている。性とも欲望とも、関係ありません。なのに雪結晶は、誰が見たって、掛け値なしに、ただ美しい」


「わかるための鍵は常にわからないことの中にある。その鍵を見つけるためには、まず、何がわからないかを知らなければならない。つまり、わかるとわからないを、きちんとわけるんだ」


「実はわたし、138億年前に生まれたんだ」



 

今日の一曲

長谷川白紙で、「あなただけ」


では、また。


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