頭の中は魑魅魍魎

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『バックストリート』逢坂剛

2013-08-04 | books
小説に登場する探偵(もしくは探偵のようなことをする人)の中で、最も好きなキャラ。それは岡坂神策。

御茶ノ水の古いマンションの自宅兼事務所に現代調査研究所という怪しげな看板をかかげ、なんでも調査すると言いつつ、スペイン現代史特にスペイン内戦については、そこらの研究者よりよほど詳しい。「クリヴィツキー症候群」「十字路に立つ女」「斜影はるかな国」「ハポン追跡」「あでやかな落日」などに登場した。

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「クリヴィツキー症候群」は割と最近再読したけれど、やっぱり面白かった。私は小説としてのこのシリーズと、岡坂のキャラと御茶ノ水という土地が好きすぎて、余りにも疲れすぎて何もする気が湧き出てこないとき(年に2回ぐらい)に、自分が岡坂になったという設定の夢想をする。私の専門はスペイン現代史ではないので、そこは私の専門に置き換えて、あとは美女とXXして、神保町のボンディでカレーを食ってさぼうるでコーヒー飲んで、たまに仕事してという毒にも薬にもならない夢想に耽るのだ。我ながらキモイ。

前置きが長くなってしまった。本作は、シリーズではおなじみの同じマンションに事務所を構える桂本弁護士と、飲み食いしつつフラメンコが見られるタブラオに行くと、男女の二人組に尾行されていると気づいたところから始まる。二人が何者か岡坂の方が探ったり、タブラオでフラメンコダンサーと知り合ったり、今回も岡坂は忙しい。1811年に自殺したドイツの劇作家ハインリヒ・フォン・クライスト、ナチス信奉者…ネタは色々あって…

うーむ。やっぱりいい。(バイアスが入り込んでいるのは認める。ええそうです私はバイアス野郎です)

ミステリのようなガチガチの謎解きではなく(謎は提示されるし、それが解けるカタルシスは勿論味わえるけれど)、ハードボイルドなんだなとあらためて思った。

作者の逢坂剛自身が事務所を持つ神保町界隈の薀蓄が結構多いのに、それに辟易するどころか、「あーその店行きたいなー」と思わせるのは筆力なんだろう。(神保町界隈で彼の姿を何度も見かけたことがある。)フラメンコの薀蓄も同様。

また逢坂作品は、読むと「あーこういうことをテーマにした別の作家の小説を読みたいぞー」とか「興味を持ったのでそれについて深く調べてみたいぜ」度がすごく高い。一緒に会話していて横に話を広げてゆける人とは、話していて面白い。だから、そういう風に自分の興味を横に広げるチャンスになるような本も面白いと思うのかも知れない。

今日の一曲

この小説のタイトルだったらこれしかないでしょ。
Backstreet Boys
一番好きな曲、I Want I That Way



では、また。


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