頭の中は魑魅魍魎

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『ラブという薬』いとうせいこう、星野概念

2018-09-06 | books
いとうせいこうが、バンド「口口口」(クチロロ)で一緒にやっているのがギタリスト星野概念。星野の本職は精神科医。いとうが星野にカウンセリングを受けてみたら、思いのほか良いものだったので、カウンセリングとか精神科医とかについて対談したものを本にした。

精神科医として大切なことが、「共感」であるとか、精神科医としていつもトレーニングしているとか、「面白くて、ためになること」が沢山あった。

精神科医とは直接関係はないけれど、ツイッターやインスタグラムなどについて、

いとう 「星野くんが言うように、承認されることってほんと魅惑的だよね。俺は21世紀に最も人を狂わせるのは、承認欲求だと思ってる。もちろん昔の承認欲求はあったけど、そう簡単に満たせるもんじゃなかったんじゃないかな」
(中略)
いとう 「たとえばテロって、爆破一発で大きな変化が起こるわけだよ。それってテロリストにとっては、努力と関係なく承認欲求が満たされるってことでしょ。そして、テロを抑えようとする政治家たちも、すごく感情的になって、報復するんだとか、壁を作るんだとか言うけど、あれもテロ対策のように見えて、実際は彼ら自身の承認欲求から来るもんだんだよね」
(中略)
星野 「たとえばSNSとかで乱暴な人を見かけたときに「まあ別にいいじゃん、そのくらいは」と思って見過ごしちゃうと、やっぱり退行していくんですよね。どんどん子供返りしちゃって「だったら俺も言おう」って連鎖していって、全体的に精神年齢が下がっていく」
いとう 「暴力とか暴言が嵐のように吹き荒れている今の世の世界が、俺は怖くてしょうがないよ。たとえば電車に乗ってても、人の心の中はわかんないから「この人たちもヘイト側なのかな」って思ったりして、辛くなっちゃうんだよね」

という会話がとても印象的だった。

いとうせいこうの本はほとんど読んだことがなかったけれど、こういうことを言う人の書いた文章なら読んでみたいと思った。また星野概念も信頼できる人だと思ったので、何か書いたものがあれば読んでみようと思った。エッセイなどあるらしい。

上の、承認欲求みたいな話は一部だけで、精神科とはという話がメイン。

自分の心について悩んでいる人が読んだら何か参考になると思うし、精神科に行くというハードルの高さは随分下がるんじゃないだろうかなって気がする。


ラブという薬
いとうせいこう、星野概念
リトル・モア



今日の一曲

荒井由実で「雨の街を」



いつだったか、だいぶ前。毎日毎日肉体的にも精神的にも、ただひたすら疲弊しきる日が続いていた。日々何かを学んだり得たりするのではなく、日々何かを失っていたようだった。そんな時、聞いていたのは「荒井由実ベスト」 松任谷由実ではなく、もっと古い荒井由実時代のもの。暗い時に癒してくれるのは明るいものではなくて、むしろ暗いものだと初めて学んだ。暑い時には、冷たいものではなく、熱く煮えたぎるトムヤムクンなのだ。では、また。
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