神代植物園の鯉(左)と亀
6月に入り、我が散歩道では間もなくサツキ(皐月)が花盛りを迎え、追ってアジサイ(紫陽花)が梅雨明けまでの長い期間の主役を務めることになる。
神代植物園では今恒例の盆栽のサツキ展が催されていて、いずれ劣らぬ傑作が展示されていた。丹精込めて育てられたサツキは実に姿・形が美しく、まさに芸術品と言ってよい。
ただ、私はこうした鉢植えや温室などの”作品”には余り関心がない。大地に生え、人間の力を超えた日の光や雨・風のもとに育った草木の花に興味が湧くのだ。
前者のような人為的に育てたものを観るのは「観賞」、後者のような自然(に近い)ものを見るのを「観察」と言葉を分ければ、私の趣味は後者の「観察」派なのである。
しかし、かと言って全く人手を入れず自然任せにしていたのでは至るところが藪になってしまい、「観察」どころではなくなってしまう。 適当な人手を入れ、適度な埴生を保つことは必要であろう。
理屈っぽくなってしまったが、神代植物園はその名の通り植物園なのだから相当の人手を費やし、一年を通して来園者が楽しめるように公園管理をしているわけで、決して私の趣味とする「観察」対象ばかりでなく、人為的な「観賞」植物は当然多い。
そんな中で、よそでは余り見られない、植物園ならではの樹花を今回は取り上げてみたい。
煙のようなスモークツリー(左)と瓶を洗うブラシのようなブラシノキ(右)
スモークツリーは別名ハグマノキ。3ミリくらいの小さな花は開花しても目につかないが、花が終わったあと花柄が細長く伸びて全体がもやもやした煙のように見えるところからその名がついた。まことに言い得て妙の名前である。
別名をキンポウジュ(金宝樹)という右のブラシノキも花は小さく目立たないが、雄しべの真赤な花糸が密集して、まるで瓶や試験管を洗うブラシのように見える。これはズバリ名の通りの形をしていて面白い。
ホップノキとセンダン(栴檀)
ビール特有の苦みの原料となるホップは蔓性の多年生植物であるが、上左のホップノキはそれとは全く異なるミカン科の木本植物である。写真中央が花であり、左端に実が成っている。 この小さな団扇の形をした実がホップの代用になるというのでその名がつけられたという。
右のセンダン(栴檀)は薄紫色の5弁の花が今満開。「センダンは双葉より香し」という格言に使われている香木はビャクダン(白檀)のことで、このセンダンのことではない。
オオバオオヤマレンゲ(大葉大山蓮華)
オオヤマレンゲは別名ミヤマレンゲ(深山蓮華)という通り山地に咲き、蓮の花のようだと称えられるように本当に美しい花だ。
サラサウツギ(更紗空木)
最後にサラサウツギ(更紗空木)。すでに登場したウツギ(別名:卯の花)の仲間でウツギが5弁の真白な花なのに対して、こちらは八重咲きが特徴である。色も外側がうっすら紅紫色を帯びていてとてもきれいだ。