南米初の開催で史上最多の国・地域が参加して熱戦が繰り広げられていたリオデジャネイロ・オリンピックが日本時間の今日閉幕した。施設の完工遅れや政情不安、治安の悪さや蚊によるジカ熱伝染病など幾つもの不安が交差する中での開催であったが、開会式から各競技、そして先ほど行われた閉会式に至るまで盛況裡に執り行われた。・・とまあ、オリンピックのメダル数が史上最多の41個を獲得できた日本からはそう見えたのかもしれない。
でも今大会は私にとっても1964年の東京オリンピックと並ぶほど印象の強い五輪となった。それらの中で、順位はつけ難いが感動ベスト10を挙げてみたい。(選手名は呼び捨て)
1位:競泳男子個人400mメドレーで萩野公介が金、瀬戸大也が銅
この種目は競泳の王者とも言うべきもので、ワンツーフィニッシュが期待された両選手の快挙により大会幕開け早々の暗雲を一気に吹き払い、その後の日本選手の活躍に弾みをつけたと言ってよい。
2位:柔道男子全6階級でメダル
かつてはお家芸と言われた柔道も国際化が浸透した近年ではメダル獲得が簡単ではなくなった。日本柔道の立て直しを託された井上康生監督により、柔道本来の「組んで投げる」基本に立ち返り、見事世界にその姿を見せつけた。女子も5階級でメダルを取って「柔道ニッポン」の名を高めてくれた。
3位:体操男子団体及び個人総合で金
個人では「絶対王者」とも称される内村航平を中心に新しいひねり技では世界一級にのし上がった新進白井健三、堅実な演技の加藤凌平などの5人が見事なチームワークで3大会ぶりに金メダルに輝き、内村の悲願を果たした。内村は既に体調的には限界に達していたがその後の個人総合では文字通りの死力を振り絞って逆転の金メダルを獲得した。
4位:女子レスリングの快進撃
女子レスリングは日本期待の種目ではあったが48キロー58キロー69キロと一日で金メダル3連取は圧巻であり、強烈なインパクトであった。しかも3者とも終了寸前での逆転勝ちで、見ている方も胃がキリキリする展開であった。中で伊調馨が女子としては初めての五輪4連覇を達成。同じく4連覇を目指した吉田沙保里は惜しくも決勝戦で敗れ大泣きに泣いたが、長い間日本の女子レスリングを牽引して来た功績は絶大である。その後も金を一つ追加し、4つの金と銀1つでメダルを量産した。
5位:陸上男子400mリレーで銀メダル
大会も終盤、世界最速の男たちがバトンを繋ぐ400mリレーで勝ち取った銀メダルは凄いの一言だ。日本の4選手に100m9秒台やファイナリスト(決勝戦進出者)の選手は一人もいない。単純に4人のベストタイムを足し合わせればメダルは絶対にあり得ない。それを日本独特のバトントスを完成させてスピードと距離を稼ぎ、陸上王国のアメリカを抜き、ウサイン・ボルトのジャマイカに迫った堂々のレース。4人のコンビネーションとバトン技術は世界の目を見開かせたのである。
6位:女子バドミントンのダブルス金とシングルスの銅
女子バドミントンは高橋礼華・松友美佐記のダブルスが前回ロンドンで獲った銀を上回って初めて世界の頂点に。特にファイナルゲームで5ポイント連取して逆転勝ちしたシーンはしびれた。またシングルスでは奥原希望が日本人初のメダル(銅)を獲った。ずっと中国勢に後れを取っていたが、日本バドミントンを世界レベルに引き上げてくれた。
7位:卓球男子の快挙と女子の健闘
卓球も中国が世界を牛耳る競技だが、男子団体で中国に次ぐ銀メダル。それに先立ち日本のエース水谷隼がシングルスで銅メダルを獲得した。
女子はシングルスではメダルに手が届かなかったものの、団体では福原愛、石川佳純それに15歳の伊藤美誠で銅メダルを手にした。苦戦の原因となった愛ちゃんが責任を感じて涙に暮れていたが、3人揃っての祝福のインタビューでやっと愛ちゃんらしい笑顔を見せたことにほっとした。
8位:シンクロナイズド・スイミングの復活
井村雅代コーチによってメダルの常連国になっていたシンクロ。同コーチが去るとともに低迷に陥っていたが、2年前に再度コーチに復帰して立て直しが始まった。そして迎えたリオ大会で乾友起子・三井梨沙子のデュエットとチームでそれぞれ銅メダルを獲得、早速井村効果を出してくれた。「地獄の練習」と選手が口々に語るように生半可な指導ではないようだが、如何にしたらメダルを獲って選手が喜ぶかに徹したコーチである。
9位:男子テニスで錦織圭が初の銅メダル
世界のトーナメントで活躍している錦織圭が、オリンピックで初めてのメダルを獲得した。テニスはアマチュアスポーツの祭典であるオリンピックの中では数少ないプロ選手に出場権がある競技だが、錦織はプロ・アマを越えた日本の人気選手でテレビ前で感動したファンも多かったと思う。
10位:その他
「その他」で括ってしまうのは申し訳ないが、複数に亘るので許されたい。先ずは女子重量挙げの三宅宏実。体調的にも年齢的にも余り大きな期待はされなかったが、勝負どころで銅メダルという結果を出した。少し幼な顔でインタビューなどがとても可愛らしかった。続いてカヌー・スラロームの羽根田卓也。日本では競技人口が少なく練習場所や競技会など海外へ自力で求めて実力を養って来たという。マイナー競技でのメダル(銅)に目を覚まされた。50キロ競歩の荒井広宙は大会前から期待が持たれていたが、オリンピックならではの中継放映で目の前の銅メダルはやはり感動ものであった。
以上メダリストばかりだが、メダリスト以外でも高校1年生の池江璃佳子のように泳ぐ度に日本記録を更新して感動を呼んだ選手もいた。