陽だまりの旅路イスキア

あ、slice of life…日向香を感じる日々の暮らし…

My screen 大いなる不在

2024年07月25日 | slow culture

あまりにも暑い。家に居てクーラーの効いた部屋に籠るのもいいのだがそれもつまらない。なら、ということで三ノ宮へ映画を観に行く。

鑑賞した映画は「大いなる不在」。平たく言えば、認知症になってしまった父と子の邂逅の物語である。認知症の元大学教授の父、陽二を演じるのは藤竜也、その子(仕事は役者)を演じるのは森山未來。永年疎遠だった父を施設に入所させるために会った息子は、認知症になっている父の姿、言動に出逢う。そこから空白だった父の人生を追う。主に再婚の妻(原日出子)との関係が繙かれてゆくというようなストーリーである。

何と言っても認知症の父を演じる藤竜也の演技が素晴らしい。真実味のあるリアルさなのである。そこに森山未來演じる息子のどことなく茫洋とした雰囲気が重なりあってゆくところが見応えがある。

やや筋立ての必然が弱いようには感じた。なんで?という部分も多い。例えば再婚の妻が夫を放り出して何故出奔したのか?そこが示唆されていないのでも鑑賞者としてはどこかもやもやが残る。認知症の夫についていけないので出奔したのか?それなら薄情ではないのか?そうでないのなら何故?この夫婦関係は破綻していたのか?全体の流れとしてはそうではないはず。だからややもどかしいのだ。唐突なエンディングも余韻があるというより放り出された感も。

森山未來さんは神戸市出身のダンサーであり俳優である。彼の演技もどこか印象深い。今風の若い人はきっとあんな感じなのだろうか?なんて妙な納得感がある。

この暑さのせいもあるのか映画館は観客もまばらだ。それにこの映画、やはりシニアがほとんどであった。まあ若い人が見たい映画ではないのかもしれない笑 認知症の親を看取った経験のあるシニアにとっては他人事ではないストーリーである。それは何年か先の己の姿かもしれないのである。

◇大いなる不在 監督・脚本・編集:近浦啓 キャスト:藤竜也、森山未來、原日出子、真木よう子 133分   シネリーブル神戸 

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