陽だまりの旅路イスキア

あ、slice of life…日向香を感じる日々の暮らし…

生家を訪ねて 澤村榮治を偲ぶ

2024年02月08日 | slow journey

近鉄・宇治山田駅の向う正面にふと目が留まった。古びた商店街の入口に掲げられた看板にはこう書かれていた。

「澤村榮治生誕の街 明倫商店街」

へえ、知らなかった。ここ宇治山田駅のすぐ近くが往年の大投手、沢村栄治氏の出身地であったということを。商店街を抜けてすぐの所に生家があったという。

明倫商店街へ入る。この商店街もご多聞に漏れず、シャッターが閉まっている店が多い。地方都市の駅前商店街の様相であるが、旧き良き昭和の面影が私にはたまらない。私の奥に内在する古(いにしえ)の遺伝子たちがぞくぞくと反応しているのが判る。

商店街を抜けてすぐ。件の生家跡の碑は見つかった。碑(いしぶみ)と説明の案内板が建てられていた。すでに生家は取り壊されていて、今は駐車場になっている。その一画にひそと佇んでいるという感じであった。商店街の中には澤村投手を顕彰するために設けられた展示コーナーがあった。

彼を顕彰するさまざまな新聞記事や往年の写真が、商店街の一画に設えたパネルに掲示されていた。まったくの手作りのコーナーであった。

ところでプロ野球界では今年一番活躍した投手には毎年「沢村栄治賞」が授与される。(該当なしの年もある)今年は三年連続でオリックスの山本由伸が受賞したのは周知の通りだ。テレビや新聞などのマスコミで大々的に取り上げられるから、この沢村という大投手の名前はほとんどの人が知っているだろう。

そんな誰もが知っている往年の大投手の生誕地であるのだけれど、この顕彰パネルはその名声に比してなんと地味で質素なんだろう。そのギャップにちょっと驚いたのは正直なところである。逆に言えば、そんなメジャーな人でも元を手繰ればしごく普通の民であったということだ。近所の栄ちゃんであったのだと思う。沢村投手の年表があった。

地方のシャッター通りのような様相の商店街にふと見つけた、名声を博した往年の大投手の痕跡。今回の伊勢の旅で一番心に残ったシーンであった。その後、しばしこの明倫商店街を歩いた。この昭和レトロ感を活かした飲み屋が一軒開いていた。

こんな店でちょっと一杯飲みながら、あの沢村投手を偲びたいなあと思ったのだが、帰りのしまかぜの時間まであと少ししかない。ちょっと後ろ髪をひかれながらこの明倫商店街を後にした。

これから私はあの沢村賞受賞のニュースに触れるたびに、きっとこの明倫商店街のことを思い出すことだろう。

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